継母・継父とその子どもとの関係の難しさと自我形成、自立のあり方:『母という病』から(7)

母という病(岡田尊司氏著・2014/1/8刊)を紹介しながら、家族・
親子・夫婦などを考えるシリーズを始めています。


「序章 母親という十字架に苦しんでいる人へ」
第1回:世代を継承する「母」という女性への感謝と願いから
第2回:子と母の関係を推し測ることができる性格・言動
第3回:「母という病」と「子という病」、両面を認識したい
第4回:人格形成に影響を及ぼす、子ども期の母親との関係

「第1章「母という病」に苦しむ人たち」
第5回:親子・家族・夫婦関係を考える人間形成のプロセスの在り方
第6回:「気」の「病」を防ぐための「気」の交流は可能か

今回は第1章の
第3回(通算第7回)です。

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 第1章「母という病」に苦しむ人たち(3)
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孝行息子の心の中にある支配

親孝行は、美徳とされる。
しかし、人間の心はそんなに単純ではない。
あなたの身近にもこんな人がいるはずだ。
虐げられ支配されてきた親に頭が上がらず、尽くし続ける子どもが。

健夫(仮名)の両親は、彼が物心もつかないうちに離婚した。
二年後父が再婚、新しい母親がやってきた。
だが、新しい母親が、健夫のことをちやほやしてくれたのは、最初の頃
だけだった。
下に弟と妹があいついで生まれると、両親の関心も、そちらに奪われて
しまう。
健夫は、小さい頃から落ち着きがなく、イタズラがひどかった。
ところが、新しい母親は、潔癖な性格で、まがったことは決まり事を守
らないことが許せない。
厳しく言い書かせようとした。
いくら言っても、幼い健夫がちっとも言うことを聞かないことが、継母
にはまったく理解できなかった。

小学校に上がると、健夫はますます問題児となった。
母親は学校から呼び出されるたびに、恥をかかされたと腹を立て、父親
にそのことを言いつけた。
そのつど、健夫は父親からこっぴどく叱られた。

健夫の素行は一向に落ち着かず、知能検査では優秀であるにもかかわら
ず、学校の成績はさっぱりだった。
下の弟妹は学業優秀で、大学まで進んだが、健夫は高校を出ると、就職
して働きだした。
そこで面倒見のいい上司に巡り合い、また高校から交際していた女性に
支えられ、健夫の行状は次第に修まっていく。

仕事でも頑張りを見せるようになった。
高卒としては異例の昇進をして、今では管理職としてリーダーシップを
発揮し、部下の信頼も厚い。

父親が亡くなった後も、一人になった母親を大切にするのは、三人の子
どものうち健夫だった。
弟妹は、血がつながっているにもかかわらず、母親の面倒を見る気など
まったくない。
健夫は新築したマイホームに母親の部屋を作り、引き取って生活してい
る。

表面だけ見れば、これは美談と言えるかもしれない。
しかし、一歩立ち入ってみると、やるせないような悲劇、それも二重の
悲劇だということが見えてくる。

健夫は、なぜ小さい頃、落ち着きのない問題児だったのか。
今日的な診断で言えば、ADHD(注意欠陥/多動性障害)が疑われるだ
ろう。
ADHDは遺伝的要因の関与が7~8割とされ、生まれもった要因が強い
と考えられてきた。

健夫は、生まれつき、ADHDになるべくしてなったのだろうか。
最近の研究では、ADHDの発症にかかわる遺伝子は、養育環境によって、
働き方が百八十度変わることがわかってきた

気持ちを汲んで愛情深く育てられると、何ら問題がないどころか、むし
ろ優れた面を発揮する。
だが、逆に押さえつけられて育てられると、行動の問題が激しくなる。
ADHDは、生まれもったものだけではは発症せず、その子に合わない育
て方や環境が重なったときに初めて症状となる。

幼い頃、健夫が生みの母親と別れ、育てる人が変わったことも、ADHD
を悪化させる要因となっただろう。
新しい母親が、潔癖で、まがったことの嫌いな性格だったことも、健夫
にとっては不幸だった。
潔癖で厳格な養育は、こうしたタイプの子どもを余計反抗的にしてしま
いやすい。

幼くして母親を失った健夫に必要だったのは、もっとたっぷりの愛情や
優しさ、関心だった。
だが、現実の健夫が手にしたものは、それとは正反対のものばかりだっ
た。

この項、次回に続きます。

母子6

※続きます

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両親が離婚。
どちらかに引き取られるが、その片親が再婚して、異母兄弟・異父兄弟が
できたことから、継母・継父との関係が、悪くなる・・・。

愛情対象が、自分から外れ、他に移行してしまう。
そこから、人格形成への負の影響が及び始める・・・。

よくある事象と言えるでしょうか・・・。
そうした大人の態度の変化は、本来自覚し、望ましい親子関係を維持でき
るよう、配慮するのが大人の責任なのですが、そううまくはいかない・・・。

子どもが小さければ小さいだけ、影響が及び、行動面や性格面での問題が
起きそうなことは、大人ならば予想できるはずですが、感情が理性を上回
ってしまう・・・。

この文の健夫については、ハッピーな経過をたどることになるのですが、
真逆の結果になるリスクもあったはずです。

その辺りの事情、状況を次回、見ることができるのでは、と思います。

男の子

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いまちょうど『ルポ 母子家庭』(小林美希さん著・2015/5/10刊)を読み終
えたところです。
その内容も紹介するシリーズを近々始める予定ですが、その書のなかでも、
「母という病」を抱えた親子関係が、母子家庭に多く反映されている事例が
見られます。

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子どもを宿し、子どもを産むことができる唯一の性である女性が母となる。
そこから、子というひとりの人間の人生が始まります。
種の起源は卵子と精子、双方にありますが、ひとりの人間の生の起源は、
女性の出産行為にあります。

その女性は母となります。
男性は、関与不能です。
生まれてきた子どもに、父の存在は絶対的なものではありません。
父であろう、父かもしれない、父として認めよう・・・。
そんな程度、かも・・・。

母としての新しい人生が始まります。

世のすべてのお母さんの幸せと、
かけがえのないすべての子たちの健やかな成長を願って・・・。

ゲーム

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-『母という病』構成-
序章  母親という十字架に苦しんでいる人へ
第1章 「母という病」に苦しむ人たち
第2章 生きづらさの根っこには
第3章 残された傷跡
第4章 不安定な母親に振り回されて 
第5章 自分しか愛せない母親とその人形たち
第6章 生真面目な母親の落とし穴
第7章 「母という病」を克服する

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-<岡田尊司氏・プロフィール>-
1960年生まれ。
精神科医、作家。医学博士。
東京大学哲学科中退、京都大学医学部卒。同大学院医学研究科修了。
長年、京都医療少年院に勤務した後、岡田クリニック開業。同院長。
パーソナリティ障害、発達障害治療の最前線に立ち、臨床医として
人々の心の問題に向かい合っている。
主な著書:『パーソナリティ障害』『悲しみの子どもたち』
『脳内汚染』『アスペルガー症候群』『発達障害と呼ばないで』
『愛着障害』『回避性愛着障害』など。

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