高齢者に不足する確認・相談先を判断し行動できる社会性。認知症と特殊詐欺被害問題か:『下流老人』の今と明日(16)

「20万部超のベストセラー『下流老人は序章だった!」という
キャッチフレーズで、藤田孝典氏の新刊
貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たちが発売されました。
いずれそのシリーズも、と考えています。

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下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー(藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら考える、<『下流老人』の今と明日>シリーズ。

第3章「誰もがなり得る下流老人」
第1回:高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり
第2回:だれもがなり得る、介護が必要な高齢者、下流化の現実
第3回:公・民の役割と機能の再構築が必要な介護制度・政策と介護事業モデル
第4回:親子共倒れリスクを抱えた下流老人化社会は、一億総モラトリアム社会の断面
第5回:団塊世代とシングル団塊ジュニアとの実家同居が招く下流老人世帯化
第6回:増える熟年離婚。老後を考えると、結婚・夫婦を再考する必要が
第7回:中高齢男性は生活能力を今からでも身に付けよう!
第8回:夫婦関係のリセットで新しい役割分担・関係を作るべき高齢者夫婦

今回は、第9回です。

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第3章 誰もがなり得る下流老人
-「普通」から「下流」への典型パターン-:現状編(9)
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<パターン5 認知症でも周りに頼れる家族がいない>

 現状編の最後は、認知症の問題である。
現在は高齢期が長くなっているため、認知症にかかるリスクも相対的に高く
なってきている。
認知症と聞くと、家族など ”介護する側” の負担がはじめに思い浮かぶかも
しれない。
もちろんそれも大きいが、認知症の高齢者が一人暮らしを余儀なくされた場
合、まったく別次元の脅威にさらされることになる。
いわゆる「オレオレ(振り込め)詐欺」である。

 警察庁によれば、2014年の特殊詐欺被害の総額は約559億円であり、2013年
比で約14%増加している。
5年連続で増加しており、その被害金額は過去最悪の水準を更新している。
特殊詐欺防止のための対策を各地で講じ、犯行グループなどの検挙が進んで
いるにもかかわらず、一向に歯止めが効かない。

振り込め詐欺データ
※警察庁資料から

振り込め詐欺の被害が減らないどころか年々増加しているのは、詐欺の手口
が巧妙化しているだけでなく、背景に認知症高齢者の増加があることを見過ご
してはならない。

 厚労省の発表によれば「誰かの見守りや支援が必要な認知症高齢者数」は、
平成22年(2010)時点で、約280万人。
 まだ気づかれていない軽度の認知障害の方も含めればさらに数は増える。
今後も、2020年は約410万人、2025年には約470万人まで膨れ上がることが
予想されている。

 高齢者の認知症でとくに問題なのは、自分では症状に気づきにくいこと。
 初期の認知症高齢者は、医師や社会福祉の専門家が見ればすぐに判別でき
るが、物忘れがちょっと多い程度では、症状に気づけないこともある。
 だから、一人暮らしともなればなおのこと自体は深刻である。

 実際、相談に来られた認知症の方のほとんどが、病院で検査し医師から結
果を示されても、「認知症なんてとんでもない。わたしはしっかりしている」
と言い張る。

 そこにつけこんでくるのが、振り込め詐欺などの犯罪グループだ。
 巧みな理由をつけて、息子が困っていると信じさせ、高齢者はいとも簡単
に資産の一部、あるいはすべてを奪われてしまう。
 「振り込む前に本人確認を」などとよく言われるが、その注意自体を忘れ
てしまったり、そもそもそのような発想すら持てないのが認知症なのだ。

 とくに高齢者自身が金銭管理をしている場合は注意が必要になる。
 振り込め詐欺以外にも宗教の勧誘や、高額な布団や化粧品などの訪問販売、
リフォームなど、さまざまな方法で高齢者から搾取しようとする企業や犯行
グループは山ほどある。

気づいたときには、もう資産がほとんどないという事例もよくあることだ。

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次回に続きます。

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特殊詐欺事件・被害では、被害者が認知症であるという報道は、意外に?
少ないのではないでしょうか・・・。
被害者の人権に配慮してのことかどうかわかりませんが・・・。

もし実際に認知症高齢者が被害を受けるケースが多いのなら、警察を含め
マスコミなどがもっとその事実・実態・事例を公開し、高齢者とその家族
に対して注意を促し、対策・対応方法をPRすべきと思います。

それにしても、こうした事犯が未だに数多く発生することとその被害額の
大きさに驚かされます。
その原因の一つは、高齢者の社会性の欠如にあると私は考えています。
地域や家族との人間関係をしっかり持つことが、特に介護を必要とする高
齢者や、独居高齢者にとって大切、と言われます。

それも確かに社会性の要素とは思いますが、わたしの言う社会性とは、普
通に考えてあり得ないことをおかしいと感じること、疑問・疑念を抱くこ
と、そしてそう感じたときに、誰かに相談したり、聞いたり、確認すると
いうつながりや適切な相手を見つけ出し、設定し、行動を起こすこと、な
どを言います。

自分という個人と、自分の身の周りに発生する事柄と社会とを結び付け、
必要な行動を選択し、実行できる社会性です。

オレオレ詐欺を含む、種々の詐欺事件の多くは、こうした、人に欠落する
社会性に起因するのでは、と思うのです。
課題から逸れると、問題の本質とは違う、と指摘されるかもしれませんが、
いじめを苦にした自殺なども、そうした被害を受けた時、いじめをしつこ
く受けたときに、どう対処すればよいか、だれに相談するのがよいか、と
いう判断・選択がなかなかできずに抱え込んでしまう・・・。
そういう社会性の欠如に一因があるのではないかと思うところがあります。

そういう点で、じつはそれが日本人に共通の特性のひとつであるかのよう
にも思えるのですが、穿った見方・考え方でしょうか・・・。
毎度述べている、一億総モラトリアム社会の一現象であると・・・。

いずれにしても、認知症高齢者が、詐欺行為を何とも思っていない犯罪者
から無防備状態にあるとするなら、まずは、高齢者個人と家族が自ら守る
ことを考える必要があります。

特に家族は、高齢者家族との電話などでの日頃のコミュニケーションを直
接行っておくことから始める必要があります。
そして持っている資産・財産の保管・保全方法をしっかり決めておくこと。

どうも下流老人というテーマとは違和感がある話になりました。
しかし、お金がある高齢者、結構いるということですね。

財産があることも大変なことなんですね・・・。
無縁な者は、そういう心配がないので気楽です。

crime6

次回は、<パターン5 認知症でも周りに頼れる家族がいない>②
--認知症+一人暮らし+悪徳業者=下流老人
です。

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このブログで、これまで「結婚、してみませんか」と題して、私の過去の
Ameblo投稿ブログを再掲して、メモを追加したものがあります。
お時間がありましたら、チェックしてみてください。
⇒ ◆「結婚、してみませんか」シリーズ

cp9

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<本書の構成>
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
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「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク
第6回:尊敬される高齢者とは?
第7回:若者が抱く老後不安の社会構造を変革する道は?

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【藤田孝典氏プロフィール】
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。
聖学院大学人間福祉学部客員教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。
ブラック企業対策プロジェクト共同代表。
厚生労働省社会福祉審議会特別部会委員。
ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活
困窮者支援のあり方に関する提言を行う。
著書:『ひとりも殺させない』他

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