認知症高齢者が被害に合いやすい特殊詐欺。これからの高齢者のあり方:『下流老人』の今と明日(17)

「20万部超のベストセラー『下流老人は序章だった!」という
キャッチフレーズで、藤田孝典氏の新刊
貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』が発売されました。
いずれそのシリーズも、と考えています。

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下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー(藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら考える、<『下流老人』の今と明日>シリーズ。

第3章「誰もがなり得る下流老人」
第1回:高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり
第2回:だれもがなり得る、介護が必要な高齢者、下流化の現実
第3回:公・民の役割と機能の再構築が必要な介護制度・政策と介護事業モデル
第4回:親子共倒れリスクを抱えた下流老人化社会は、一億総モラトリアム社会の断面
第5回:団塊世代とシングル団塊ジュニアとの実家同居が招く下流老人世帯化
第6回:増える熟年離婚。老後を考えると、結婚・夫婦を再考する必要が
第7回:中高齢男性は生活能力を今からでも身に付けよう!
第8回:夫婦関係のリセットで新しい役割分担・関係を作るべき高齢者夫婦
第9回:高齢者に不足する確認・相談先を判断し行動できる社会性。認知症と特殊詐欺被害問題から

今回は、第10回です。

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第3章 誰もがなり得る下流老人
-「普通」から「下流」への典型パターン-:現状編(10)
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<パターン5 認知症でも周りに頼れる家族がいない>②

--認知症+一人暮らし+悪徳業者=下流老人

 わたしが実際に見たなかで、一面ゴミだらけの部屋のなかに新品の羽毛
布団が3枚も4枚もうずたかく積まれていた高齢者の家があった。
 明らかに認知症の独居高齢者をターゲットとした悪徳業者のしわざだ。

認知症高齢者への詐欺事件が悪質なのは、理解力の低下だけでなく、高
齢者の寂しさや自尊心を狡猾に利用していることだ。
たとえ営業だろうと、孤独な生活のなかで話しかけてくれる人がいたら、
それだけで嬉しいだろう。
 日中誰とも話さずテレビを見ている高齢者も多い。
 親族が訪ねてくるのは年に数回という家も珍しくない。
 悪質な訪問販売は、そのような心の隙間につけこみ、必要のない、とき
にはまったく同じ商品をいくつも高齢者に買わせていく。

販売員も部屋の状況を見たり、高齢者と話せば、認知症であることはあ
る程度わかるはずだ。
 それにもかかわらず、金がなくなるまで商品を売りつけ資産を吸い尽く
そうとする者が後をたたない。
 このような業者は必ず「本人が良かれと思って買ったのだからいいだろ
う」と言うが、本人に正常な理解力がないコトは明白だし、それが見てわ
からないなどということはありえない。

さらに事態を複雑化しているのは、高齢者自身が「(たとえ騙す目的だ
ったとしても)話を聞いてくれる人がいただけで嬉しいから」と、被害が
あっても許してしまい、被害届や権利救済を申し立てない事例もあること
だ。

ドラマみたいな話だと思われるかもしれないが、福祉現場からすれば、
これはごくありふれた話であり、これが現実である。

このように認知症が恐ろしいのは、単に記憶があやふやになるという症
状だけでなく、「認知症+一人暮らし」だったり、「認知症+悪徳業者」
のようなコンポで、予想外の事態がいくらでも起こりうる点にある。

当然だが、加齢とともに脳機能は誰でも低下していく。
認知症の有病率を年代別に見ると、74歳までは10%以下だが、85歳以上
で40%超になるという調査結果まで出ている。

つまり、長生きすれば、遅かれ早かれみんな認知症になり得る。
そのため資産をちゃんと分割しておいたり、容易に契約を結んでしまわ
ないようなシステムをあらかじめつくっておくなどの対策が必要になる。

「誰もが認知症になる」ことを想定したうえで、高齢期の準備をしな
ければならない。
 このように、自分では気をつけているつもりでも、犯罪や消費者被害
に巻き込まれて下流化してしまうパターンもあるのだ。

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今回で -「普通」から「下流」への典型パターン-:現状編
を終わります。

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よく新聞報道で見る、高齢者が受ける特殊詐欺被害。
信じられないような金額とコトの経緯に、いつも「あり得ない」と思うの
ですが、ある意味それは、家族の絆、家族への過去の思い出の重さを示すこ
となのかもしれません。

それだけに、普段の家族とのコミュニケーションがその絆レベルでできて
いれば、取れていれば、犯行者の話に疑問を持つのでは、と思うのですが、
認知症ではムリということでおしまい、なのでしょうか・・・。

訪問販売等消費者被害も含め、立証可能な犯罪には、厳罰が適用される法
改正が必要と考えます。
現状、抑止力として非常に重い刑事罰を適用するしか方策がないと思われ
るからです。
もちろん、当事者が被害にあわないように環境や状況を整備し、備えてお
くことに加えてのことです。

お金持ち老人は、持っている金の価値をあまり認識していないのかもしれ
ない・・・。
お金が潤沢にあった環境を当たり前としていると、要求される金額の大き
さが、常識的には、いわゆる「はんぱない」ことに思いがいかない・・・。
ふとそんな風に考えたりもします。
想像でしかないですが・・・。

わが家にも、カモを探しているかのような、不思議な電話がよくかかって
きます。
日常生活で、そうした犯罪にあうリスクが、普通にある現代社会。
認知症も当たり前の社会。

防御も普通に、当たり前に、確実に行われる社会にしなければなりません
が、まずは、個々のレベルでプロテクトするしかない。

ただ、その中でも安全性が高いのが、サ高住や有料老人ホームなどの施設
に入居して生活する場合ですね。
もちろん何かしらの不自由さはありますが、自身を守り切れない、あるい
は高齢家族を自宅で守れない家族にとって、それが自衛手段であることは、
知っておくべきと思います。
安全を買うことになっているわけですから。

もう一つの、話し相手がいない、孤独であることからの事犯。

これも、わたしが提起している「社会性」のあり方の問題の一つです。
一人でいること、孤独であることに堪えられない。
だれかと繋がっていたい、話し相手が欲しい、という願い・思いは、社会
性があることを意味しているのですが、それを自分から積極的に形成できる
社会性があることとしっかり繋がっているわけではありません。

望ましい社会性とは、一人でいることにも耐えられることも含むというの
がわたしの考えです。
直接だれかと面と向かっていなくても、話し相手がいなくても、社会との
繋がりを意識できる。
社会に対する興味関心を持ち続けることで、一人でいても、孤独を感じな
い、孤独と感じない、寂しくない・・・。

そういう人間であることが望ましい・・・。
そういう柔軟な社会性を持ち、孤独にも耐えられ、孤独や一人で居ること
を楽しむことができる。

絆とか、友人作り・友人関係とか、地域交流などの必要性や価値・大切さ
が強調され、そうした場作りに尽力頂いている多くの人びとがいる社会。
それは素晴らしい、望ましいことと思います。

しかし、そこにたどり着けない人も多くいますし、それが苦手な人も多く
居ます。
時にそれを望まない人、嫌いな人も・・・。

そうした人々が、ネットや新聞やテレビを通じて、社会とのつながりや
関係も意識することができる。
時に、自らSNSやブログなどで、情報発信することもできる意欲やスキル・
環境も維持できる。
老いつつもそういう人間で少しでも長くあり続けることができるように・・・。
少なくとも、あるいはできることなら、団塊の世代やそれに続く世代の人
々には、そうあって頂きたいと思います。

 

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次回は、-「普通」から「下流」への典型パターン-:近い未来編
に入ります。

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このブログで、これまで「結婚、してみませんか」と題して、私の過去の
Ameblo投稿ブログを再掲して、メモを追加したものがあります。
お時間がありましたら、チェックしてみてください。
⇒ ◆「結婚、してみませんか」シリーズ

cp9

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<本書の構成>
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
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「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク
第6回:尊敬される高齢者とは?
第7回:若者が抱く老後不安の社会構造を変革する道は?

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【藤田孝典氏プロフィール】
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。
聖学院大学人間福祉学部客員教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。
ブラック企業対策プロジェクト共同代表。
厚生労働省社会福祉審議会特別部会委員。
ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活
困窮者支援のあり方に関する提言を行う。
著書:『ひとりも殺させない』他

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