「女性が活躍する会社」資生堂1位:女性社員比率が高い企業の上位は当然。公平性を欠く審査

恒例となった日経ウーマンが選ぶ 【「女性が活躍する会社」ベスト100】
2016/5/7付日経で、
[資生堂3年連続1位 日経ウーマン「女性が活躍する会社」 男性含め、働き方見直す動き]
として、今年2016年度の審査結果を掲載していました。

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日本経済新聞社グループの日経ウーマノミクス・プロジェクトと働く女性
向け月刊誌日経ウーマン企業の女性活用度調査を実施し、2016年版
「女性が活躍する会社ベスト100」をまとめた。

1位は3年連続で資生堂、
2位は2年続けてセブン&アイ・ホールディングスだった。
3位には前回5位の第一生命保険が入った。

上位には女性の管理職への登用や人材育成に積極的な企業が並んだ。
例えば、資生堂は14年から育児のために短時間勤務を利用する美容部員の働き
方改革に取り組んでいる。
セブン&アイHDは20年までに女性管理職の比率を30%にする目標を掲げる。

 今回の調査では、全回答企業の1人あたり総労働時間が平均で年1987時間と、
昨年比で3.1時間減少した。
女性活用が進む企業では、残業時間を抑制するなど男性社員も含めて働き方を
見直す動きも目立った。

 調査は1988年から不定期で実施しており、今回が14回目。
2016年1月から2月中旬に国内の有力企業4305社を対象に実施し534社が回答。
◆女性の管理職登用度
◆ワークライフバランス(仕事と生活の調和)度
◆女性活躍推進度
◆ダイバーシティ浸透度  の4項目で採点し、総合点を算出した。

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同記事では、3年連続で1位となった資生堂を、以下のように取り上げています。

[子育てもキャリアも 両方とも手に
「女性が活躍する会社」ベスト100、資生堂3年連続1位 トップダウン改革、結実]
 子どもの有無など生活状況にかかわらず活躍できる職場環境が高く評価された。
 女性管理職比率も30%が間近に迫り、女性が働きがいを持てる会社へと今も進化
を続けている。

資生堂2

 「中国は重要な市場。早く混乱を収めて成長軌道に再び乗せたい」。
 資生堂経営戦略部マネージャーの長谷直子さん(39歳)は表情を引き締める。

 資生堂は中国で高いブランド力を持っている。
 だが昨年思わぬトラブルに見舞われた。
 現地法人が実施した人事・報酬制度の改定に代理店が反発し、店頭への商品補充が滞った。
 通年8%の成長を見込んでいた中国事業は同3%へと下方修正した。
 事業立て直しのためにプロジェクト室が昨秋に立ち上がり、そのメンバーに選ばれた。

 会社では重責を担う管理職だが、自宅に帰れば1歳の息子を育てる母親。
「残業ができないなど時間的な制約はあっても、責任が伴う仕事を任せてもらえる。働く
女性は子育てかキャリアの二者択一で悩みがち。でも資生堂は両方を手にできる」と話す。

 国全体の女性管理職比率はようやく2桁に乗った程度。
 一方、資生堂は15年4月時点で27.2%に上り、30%の大台突破も間近だ。
 子どもの有無などにかかわらず、様々な部署で当たり前のように女性社員が活躍する。

 女性活躍推進の歴史は古い。
 1990年代は仕事と子育てを両立できる環境づくりに力を注ぎ、
 2000年代に入ると女性登用に取り組んだ。
 福原義春氏や前田新造氏ら歴代の社長がトップダウンで組織改革を指揮した。
 今それが結実している。

資生堂3
※2つの資料は、記事掲載のものをそのまま転載させて頂きました。


昨年ネット上などで「資生堂ショック」が騒がれた。

 短時間勤務を利用し、主に早番に入っていた子育て中の美容部員に遅番や休日勤務に入る 
ように会社が14年春に要請した。
 この働き方改革が1年遅れでメディアで報じられ、「子育て社員に厳しい措置」と批判に
さらされた。
 ただ、この要請は美容部員の活躍の場を広げる狙いもあり、実際成果も上げている。

 JR名古屋駅ビル中央通路に面したドラッグストアで美容部員を務める女性(41歳)は
14年7月にチーフに昇格した。
 5人の同僚を束ねて資生堂化粧品の販売を担う。
 9歳と6歳の2人の娘を育てるワーキングマザーだ。
 子どもが生まれてから、ずっと育児短時間勤務を続けている。
 14年4月までは早番しかしていなかったが、今は夫の協力を得て、月2~3回遅番もこなす。
 担当業務が広がり、チーフ昇格につながった。

 チーフになって接客手法を見直した。
 勤務先はドラッグストアなので化粧品目当ての客ばかりではない。
 従来は来店者が関心を示すまで声を掛けなかったが、店内を回り、積極的に話しかけるよう
にした。
「ペットボトルの水がほしい」「頭痛薬はどこ?」。
 ほとんどは資生堂と無関係の用件だ。
 それでも丁寧に売り場に案内する。

 決して押し売りはしない。
 時間に余裕がありそうだったら、初めて自社商品をPRする。
 遠回りに思える戦略が予想以上に効果を上げた。
 売上高は前年同月比2~3割増を続けている。
「早番だけの方が両立はしやすかったけど、今の方がやりがいをもって働けている」

 美容部員の働き方改革から2年。
 チーフのほか、同僚の指導役を果たす「担任」にも育児短時間勤務中の女性が就くようにな
った。
 全国約400人の「担任」のおよそ1割を育児短時間勤務中の社員が占める。
 松本聖子美容統括部長は「彼女たちが遅番や休日勤務にも入るようになって管理職の意識も
変わった。能力とやる気を客観的に判断し、活躍機会を与えるようになっている」と指摘する。

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[美容部員の働き方改革導入 売り場の顧客対応強く 「職場の不平等感が解消」]

女性が活躍しやすい制度推進の狙いを資生堂の魚谷雅彦社長に聞いた。

<Q/1> 昨年は美容部員(ビューティーコンサルタント=BC)の働き方改革が
「資生堂ショック」と呼ばれ、一部から批判を浴びた。

 「実際の取り組みが正確に伝わっていない部分もある。遅番や休日勤務も会社側が
一方的に強いてはいない。仕事の都合で夫の協力が得られなかったり、子育てだけで
なく親の介護があったりしたら無理はできない。一人ひとり個別に面接して本人のキ
ャリア育成を考えて勤務シフトの変更を促した」

 「改革後、売り場の顧客対応は強くなった。職場の不平等感も解消され、一体感が
高まっている。それは業績にも表れている。2015年度の国内売上高は2969億円で前年
比11%の伸び、営業利益は305億円で同52%増。『エリクシール』や『マキアージュ』
といったBCが販売を担う化粧品ブランドが特に好調だ。応対の質も向上し、多くの
お客様からお褒めの言葉をいただいている」

<Q/2>女性管理職比率は30%に迫る。この先の戦略は?

 「30%はゴールではない。執行役員の女性は3人しかいない。役員らが参加する経営
会議の意思決定の場にもっと女性を増やすことも考えなければいけない。時期は断言で
きないが、女性管理職比率は世の中の男女比と同じくらいにすることが自然だと考えて
いる」

 「女性の成長にも期待している。『家庭があるから』『そこまで責任は負いたくない
から』と尻込みする女性はまだ多いだろう。でも会社の経営のためだけでなく、本人の
人生が充実することにもつながるのだから、意識を変えてチャレンジしてほしい。私自
身がダイバーシティ推進リーダーとして経営に必要な能力アップ、リーダーシップ育成
を支援していく」

 「20年以上も前から子育て支援策を整えてきた。それは女性をただ優遇するためのも
のではない。個々人の活躍を期待してのものだ。企業なのだから会社の成長にどれだけ
貢献してくれるかも当然評価する。男女を超えた個人の力を最大限発揮できる環境を整
えたい」

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資生堂の<働き方改革>については、昨年2015年7月3日のブログで
資生堂の働き方改革は、脱「優しい会社」ではなく新しい優しさを創る取組み:女性活用企業のあり方(1)
と題して、触れたことがあります。

このプロジェクト。
女性社員・従業員構成比が高い企業の方が、女性管理職比率も高いことが当然、
という認識で調査・評価されているのかどうか不明なのが気になります。

もし、資生堂が、女性社員(パートタイマー、契約社員含む)構成比が、50%
を超えていれば、女性管理職比率が30%程度というのは、決して評価されるレ
ベルのものではない。
むしろ、遅れている企業、と見るべきと思うのです。
現実に、執行役員が3人だけというのですから・・・。
また、社長の「女性管理職比率は世の中の男女比と同じくらいにすることが自然
という認識も、「男女社員構成比と同じ」とあるべきでしょう。

こうした調査では、(前のブログでの書きましたが)男女別社員数と構成比を
調査回答項目として集計・公開し、その上で、女性管理職比率実績を示すべき
です。

当然、パートタイマーなどフルタイム勤務ではない非正規社員も正社員に換算
して人数を集計して、データ化すべきなのです。

日経ウーマン誌を購読していないので、同誌にはそうした詳しいデータも掲載
されているのかもしれませんが、重要な事項ですから、日経紙でも示すべきです。

4305社を対象に実施したアンケート調査に回答したのが534社止まり。
恐らく女性社員比率が低い多くの業種・企業は、回答したくないでしょう。

本来、女性社員構成比率をグルーピングして、その構成比区分単位で評価するか、
業種(グループ)区分ごとに評価するなどで、より多くの企業がアンケートに
協力してもらえるようにすべきでしょう。

公平性を欠くマスコミの姿勢、いかがなものか・・・・。

「資生堂ショック」も、行った政策は、公平性を考えれば当然のこと。
ショックと捉える方がおかしいのです。
資生堂ショックについては、先の
資生堂の働き方改革は、脱「優しい会社」ではなく新しい優しさを創る取組み:女性活用企業のあり方(1)
で触れていますので確認頂けます。

女性の敵は女性。
女性活躍を阻害する。
そう思える節が、いろいろの場面・状況であると、私は思っていますが、資生堂
ショック問題の背景にもその要素を感じたのです。

美容7

 

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