居場所がない家庭と学校からのシナリオ:『貧困世代』から(5)
「下流老人」「中流崩壊
」「最貧困女子
」「シングルマザーの貧困
」。
貧困問題が、全世代に共通の問題とされる社会的状況にあります。
若者世代の貧困問題を『下流老人』筆者である藤田孝典氏が著した
『貧困世代ー 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(2016/3/16刊)
本書を紹介しながら、若者世代の生き方・あり方を考えるシリーズを
始めました。
【はじめに】
第1回:貧困世代(プア・ジェネレーション)の定義と問題化の視点
第2回:社会責任・企業責任で片づける前に考えるべき、働くというコト
第3回:監獄の囚人と呼ばれる若者はどんな罪を犯したのか?
【第1章 社会から傷つけられている若者=弱者】
第4回:自分を守り、生かしていく最低限のセイフティ・ガードを持つ
今回は、第5回です。
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じゃくしゃ
第1章 社会から傷つけられている若者=弱者(2)
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【事例2】<生活保護を受けている加藤さん(34歳女性)>①
加藤さん(仮名)は、埼玉県内で暮らしており、生活保護を3年ほど受給している。
生活保護費は、月額約11万円。そこから4万4000円のアパート家賃を支払い、6万5千
円程度で月々の生活を送っている。
近くのスーパーマーケットに夕方以降に向かい、安い食材がさらに割り引きになるタ
イミングで買い込み、自炊しながら暮らしている。
ある日の食生活を見ると、わずかな食費で何とか食事らしい食事をとろうと工夫して、
やりくりしている様子がわかる。
(1食100円、75円、80円などで済ませている献立とその写真がありますが省略します)
食費1日260円ほどの生活が毎日続くことを、あなたは想像できるだろうか。
趣味の本や雑誌を購入することや映画を観ることもできていない。
しかし、「やれる範囲でやるしかないし、生活保護を受けることで自分らしく生きる
ことができていると実感しています」と明るく話してくれた。
加藤さんは、過去につらいことがたくさんあっただろうに、そんなことを感じさせな
い優しい笑顔を振りまきながら語る。
街中の量販店や古着屋で購入した安価な服を何年も着続けている。基本的に洋服は、
よほど汚れたり破れたりしない限りは購入しない。というよりも購入できないと言う。
100円ショップなどで買った化粧品などを使用し、工夫しながら化粧をしている。
もちろん、体調不良だということもあるが、とても痩せている。
しかし、服装や身なりを見ても困窮ぶりを感じさせない佇まいである。
彼女に街中で会っても、生活保護を受給しているとは誰も想像がつかないはずだ。
ではなぜ加藤さんが、生活保護を受けなくてはいけないのだろうか。
「10代のころから親子関係が悪くて、中学校でいじめを受けてしまい、その時から
不安障害を発症したからです」
と彼女は語る。特に父親との関係が悪く、ケンカや口論になることが多かったそうだ。
家には安心できる場所がなかった。学校の悩みを両親に打ち明けられる環境ではな
かった。自分自身の居場所のなさをずっと感じていたそうだ。
無条件で愛してもらえる環境に乏しかった。
加藤さんは、いわゆる不登校の状態を経験し、中学校の途中からフリースクールに
居場所を求めた。そこで友人や仲間に巡り合えたそうだ。同じような境遇に身を置き
居場所を喪失して出会う仲間とは意気投合することもあり、楽しい経験も多かったと
いう。
「家に居場所がない、理解者がいないと思い、居場所を求めてさまよっていました。
今なら笑えるけど、本当にフラフラとしていましたね」
自分勝手で、放蕩をしてきたように思う人がいるかもしれない。しかし、その当時
のことを聞いてみると、「好きでフラフラしていたわけじゃない。とてもつらかった。
自分の状況を理解してくれる人は本当に少なかった」と言う。
発症してしまった不安障害と付き合い、現在も加藤さんは都内の病院に通って治療
を受けている。現在でこそ、不登校を前向きに評価す観点が広がってきたが、当時は
学校に通わないことへの無理解のほうが多かったように記憶している。
学校のような強固にできあがった教育システムに対して、「逃げられること」「つ
らいと言えること」は加藤さんの強みである。
若者が一定の規範から「逸脱」することを前向きに評価する観点を、よりいっそう
広げていく必要があるのではないだろうか。
わたしは加藤さんの話を聞きながら、生き方の多様性を尊重することについて具体
的な取り組みを進める必要があることに気づかされた。
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小学生時代に、ひとり、本当に恵まれない家庭環境にあった女の子がいました。
本当に親の愛情に接する機会がなかったことが、学校での態度・ふるまい・言動に
もろに現れていました。
可哀想と思われるほど、余計に荒れていた・・・。
居場所がなかった・・・。
担任女性教師にも、どうしようもなかったと記憶しています。
その状態が、中学で、読書などを通じて自分からいろいろ学ぶ姿勢・機会をもつよ
うになれば、と思うのですが・・・。
彼女は、少しは大人しくなったと思うのですが、中学校卒業後のことは何も知りま
せん。
小学校高学年くらいから中学校の間、個人に寄り添い、耳を傾ける機会や環境が、
学校と教師により作られれば、と思うのですが、不登校になってしまい、連絡が取れ
なくなると、ある意味どうしようもない・・・、と判断せざるをえないでしょうか。
そうした児童のためのフリースクールで、多くが救われればいいのですが、本当は
それらの支援なしで、小学校・中学校でなんとかできるのが望ましい・・・。
生活保護。
言葉では知ってはいても、実際の運用・運用基準や諸手続きなどについては、知ら
ない、わからない・・・。
次回、見ていくことになります。
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※次回は、【事例2】<生活保護を受けている加藤さん(34歳女性)>② です。
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【『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』構成】
はじめに
第1章 社会から傷付けられている若者=弱者(じゃくしゃ)
第2章 大人が貧困をわからない悲劇
第3章 学べない悲劇=ブラックバイトと奨学金問題
第4章 住めない悲劇---貧困世代の抱える住宅問題
第5章 社会構造を変えなければ、貧困世代は決して救われない
おわりに