生活困窮者支援活動の賛否と社会システムのあり方:『下流老人』の今と明日(23)

下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー『下流老人』藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら考える、<『下流老人』の今と明日>シリーズ。

今回から「第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日」に入ります。
の第1回、通算第16回です。

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第4章 「「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日」(1)
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<放置される下流老人>

 日本では高齢者の下流化が進んでいる。そして、これからも増え続けることは明らかだ。
 それにもかかわらず、なぜ何の対策も講じられないのか。
 その背景には、わたしたちの「無自覚」の問題がある。

 たとえば、「自立していないこと」「他者や地域に依存すること」を ”悪” だとみなす
意識はないだろうか。そしてすべての人に下流老人のリスクがあるなかで、「自分は大丈
夫だ」と思っていないだろうか。
 このようなわたしたちの意識が下流老人の問題を悪化させ、より先の見えない状態へと
追い込んでいく。
 
 本章の結論を先に述べれば、下流老人の問題を改善するには、わたしたち自身の考えや
価値観を変える必要がある。わたしたちの言動が、無意識に下流老人を社会の隅へと追い
やっていることに自覚的でなければならない。

<努力できない出来損ないは、死ぬべきなのか>

生活困窮者の支援活動を行うなかで、わたしのもとには日々さまざまな意見や反響が寄
せられる。
 「生活困窮者を減らすための画期的で素晴らしい活動である」という賞賛や「本来は政
府や自治体が行うべき事業を民間で行っていて感心する」などの励ましの声にはとても勇
気づけられ、日々感謝している。
 また、相談支援に関わった当事者の方たちから直接感謝の言葉をいただいたときは、支
援活動をしてきたことの喜びや醍醐味を感じる瞬間である。

 しかし、残念ながら、「生活困窮者を救うべきなのか」「そのような支援活動は必要な
のか」といった否定的な意見、あるいはもっと直接的に支援活動をやめるように促す意見
をいただくこともある。
 むしろ反対意見、否定的意見の方が圧倒的に多い。それが生活困窮者支援の現状だ。

 たとえば、否定的な意見のなかで一番多いのが「生活困窮に至った理由は、本人の責任
なのだから救済する必要などない。税金のムダ使いである」というものだ。
 この意見は活動を始めたときからずっと、聞かなかった年はない。
 さらにひどい場合は、「こういう人間は安楽死させたらよい」「収容所へ押し込めて強
制労働に従事させればいい」というような基本的人権や生命を無視した暴言もある。
 こうした意見を言う人は、相当な努力をし、高い年収を勝ち得た人だけかと思いきや、
決してそうではない。
 あきらかに ”明日は我が身” な人も多いのだ。

 はじめに強調しておくが、いかなる理由があれ「死んでいい人間など一人もいない」。
 貧困が理由で社会に命を奪われるいわれはないし、強制労働に従事させる正当性もない、
 当たり前だが、貧困は罪ではないのだ。

孤立2

※次回に続きます。

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 努力が報われないこと、人。
 どちらかというと、比率を考えると、報われること、報われる人よりも多いかもしれな
い。そのたびに自己責任で結論付けられたら、人間、やってられませんね。
 
 かと言って、端から努力しないこと、人。
 その結果が望ましくないモノ、コトとなった時、それは、みな運であったり、社会が悪
い、他の誰かが悪い、と評価結論付けることは、果たしてどうなのでしょう・・・。

 肝心なのは、うまくいかないことがあっても、失敗しても、またチャレンジする機会が
あること。
その前提として、当人に、再チャレンジする意志・気持ちがあること。
その有無が、とても大切と私は思います。

 当然、再チャレンジするための、社会的な支援や機会・システムが用意されていること
もその条件の一要素にもなります。

 そして、その社会システムは、国・行政・自治体が、整備し、必要な人に、必要な方法
で提示・提供されるべきです。
 筆者が尽力されているNPO法人が、行政からの委託を受けて、その役割を担うことも
ひとつの方法です。 

 そうあるべきと、事に批判的な人々は、認識し、自分にもそうした(下流化)リスクが
あること、万一そうなったときに、その社会システムの存在と利用方法を知っており、必
要な行動を取ることができるかどうか、肝に銘じておくべきとしておきたいと思います。

alo14

 

※次回は、<イギリス、恐怖の「貧困者収容所」法> です。

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<本書の構成>
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
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【『下流老人』の今と明日:ブログ一覧】
「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク
第6回:尊敬される高齢者とは?
第7回:若者が抱く老後不安の社会構造を変革する道は?

第3章「誰もがなり得る下流老人」
第1回:高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり
第2回:だれもがなり得る、介護が必要な高齢者、下流化の現実
第3回:公・民の役割と機能の再構築が必要な介護制度・政策と介護事業モデル
第4回:親子共倒れリスクを抱えた下流老人化社会は、一億総モラトリアム社会の断面
第5回:団塊世代とシングル団塊ジュニアとの実家同居が招く下流老人世帯化
第6回:増える熟年離婚。老後を考えると、結婚・夫婦を再考する必要が
第7回:中高齢男性は生活能力を今からでも身に付けよう!
第8回:夫婦関係のリセットで新しい役割分担・関係を作るべき高齢者夫婦
第9回:高齢者に不足する確認・相談先を判断し行動できる社会性。認知症と特殊詐欺被害問題から
第10回:認知症高齢者が被害に合いやすい特殊詐欺。これからの高齢者のあり方
第11回:年金だけで暮らせる老後は夢。自衛を考えるべき現実
第12回:高齢者の下流老人化に留まらない、格差社会が招く全世代貧困化
第13回:貯蓄・年金収入の目減り、健康不安・介護不安。長寿化が招く下流化リスクの連鎖
第14回:全世代共通の非正規雇用者の下流化リスク
第15回:増加する中高齢未婚者が、独居老人下流化予備軍に

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【藤田孝典氏プロフィール】
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。
聖学院大学人間福祉学部客員教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。
ブラック企業対策プロジェクト共同代表。
厚生労働省社会福祉審議会特別部会委員。
ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活
困窮者支援のあり方に関する提言を行う。
著書:『ひとりも殺させない』貧困世代

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このブログで、これまで「結婚、してみませんか」と題して、私の過去の
Ameblo投稿ブログを再掲して、メモを追加したものがあります。
お時間がありましたら、チェックしてみてください。
⇒ ◆「結婚、してみませんか」シリーズ

cp9

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