高齢者単独世帯・夫婦世帯の増加が葬儀からの解放を進める:『0葬-あっさり死ぬ』から(7)
『0葬 ――あっさり死ぬ』。
(島田裕已氏著・2014/1/29刊。文庫版2016/1/20刊 )
何とも変わったタイトルの書。
このブログサイトのカテゴリーのひとつ、<終活>について、じっくり掘り下げて
考えてみるとすると、やはり、葬儀・葬式に行き着くと思います。
そこで『0葬』を参考にして、種々の観点から、自由に考えてみることにしました。
「はじめに」
第1回:究極の終活を考えてみます。ご存知ですか「0葬」
第2回:お盆の帰省とお墓参りの見慣れた景色の背景
第3回:葬送・お墓、生者と死者との関係。お盆に考えてみますか
「第1章 人を葬ることは相当に面倒である」
第4回:お盆、帰省、墓参りの文化の起源としての埋葬・葬儀
第5回:明治時代から見られた葬式無用論。夏目漱石も
第6回:孤独死や尊厳死。どう見るかで変わる意味
今回は、通算第7回です。
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第1章 人を葬ることは相当に面倒である(4)
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<時代は「家族葬で当たり前。直葬でもかまわない」という方向に>①
このように、近代に入ってから、さまざまな人間から繰り返し葬儀無用論が
唱えられてきたわけだが、葬儀はなくなっていない。むしろ、1980年代後半の
バブルの時代などには、派手で豪華な葬儀が営まれ、社会的な話題になったり
もした。
私の『葬式は、要らない』でも、本の帯には「平均費用231万円は、ダント
ツの世界一!」と書かれていた。
残念ながら、世界の葬儀費用を比較した資料はほとんどない。
少し古いものだが、葬祭業者のサン・ライフが1990年代前半に行った調査で
は、アメリカが44万4000円、イギリスが12万3000円、ドイツが19万8000円で、
韓国が37万3000円という結果が出ていた。
「日本の葬儀費用、231万円」というのは、2007年に財団法人日本消費者協
会が行った調査のもので、そこには葬儀社への支払いの他、飲食の経費や寺へ
の布施、香典返しの費用が含まれている。
また、正確には遺族がこの費用を全額負担するわけではない。
参列者が香典を持ってくるからだ。
日本消費者協会では2013年の調査結果も発表していて、それでは葬儀費用の
平均は199万8861円、つまりほぼ200万円だった。この3年で約31万円下がった
わけである。
葬祭業者の「くらしの友」が首都圏で行なった調査もある。
それは2009年8月から2010年7月までのあいだに喪主として葬儀を出した40
代以上の男女400人を対象としたものだが、葬儀費用の総額は242万3000円と
いう結果が出ている。
こうした調査はサンプル数も決して多くはない。葬儀費用は幅が大きく、ど
ういったサンプルが含まれるかで金額がかなり変わってくる。
その点では実態がわかりにくいが、一般的には200万円前後の金がかかって
いると考えて、それほど現実から遊離してはいないだろう。
次回に続きます。
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葬儀事業のチェーン展開がかなり進み、掛かる費用のオープン化もかなり進み
ました。
それでも、葬儀屋は葬儀屋。
葬儀をなくしましょう、しなくてもいいですよ、と訴えるわけではなく、種々
合理化し、利益をきちんと確保する方法を考えての事業展開です。
この8月、私は右脚大腿骨警部骨折のリハビリ入院中だったのですが、自宅の
お隣とお向かい、二つの家でお葬式が出されました。
お隣の葬儀では、私が不在だったので、妻がお通夜と葬儀の受付を担当。
お向かいは、ご家族・ご親戚だけで葬儀を行われたようで、近所・町内会への
正式な連絡はされなかったようです。
私は、お向かいの葬儀の方式で十分ではないかと思っています。
100万も200万も掛けることにどれほどの意味があるでしょう・・・。
まあ、葬儀にかかる費用の内訳を見れば、本当に無駄で無意味と思われるもの
ばかりなのですが、未だに世間体と慣習という呪縛から解き放つことは無理な
方、家が大半。
でも、家族構成の変化、高齢者の単独世帯、夫婦のみの世帯の著しい増加は、
葬儀からの解放を進めていくことは止めようもないのではと思います。
年数はそれなりに掛かるでしょうが・・・。
そのプロセスにおける葬儀の簡略化。
次回、<時代は「家族葬で当たり前。直葬でもかまわない」という方向に>②
でみることになります。
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【『0葬 ――あっさり死ぬ』構成】
はじめに
第1章 人を葬ることは相当に面倒である
第2章 なぜ葬儀や墓はこんなにもは厄介になったのか
第3章 生老病死につけこむ資本の論理
第4章 死者が増えるから葬儀で儲けようとする人々が次々とあらわれる
第5章 世間体を気にするがゆえに資本の論理につけこまれる
第6章 仏教式の葬儀は本当に必要なのか
第7章 マイ自然葬、そして究極の0葬へ
第8章 人は死ねばゴミになる
おわりに
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どちらをシリーズ化しようかと迷った、同じ島田裕已氏著の
『葬式は、要らない』(2010/1/28刊)
もできればお読み頂きたいと思います。
また、同氏の新刊
『もう親を捨てるしかない 介護・葬式・遺産は、要らない』(2016/5/28刊)
は、別にブログサイト<介護相談.net>の方で、シリーズ化して用いて
います。