名古屋市、保育所新設計画時10m以内住民に説明義務課す
保育所新設計画が、地域住民の反対で撤回され、開設ができなくなる。
各地で起きている問題ですが、本質的に公的社会福祉・教育事業であるはずの保育所開設計画が、
いとも簡単に覆される。
企業サイドの職務怠慢、やり方・進め方の不備を理由に付け加えられて・・・。
そうした状況・実態について、以前
◆保育所開設中止に追い込む周辺住民の反対。その責任は行政に:日経「保育の課題」(中)から (2016/11/12)
で、疑問を呈しました。
そのような行政の自覚不足を示す以下の記事が、2017/1/9 付中日新聞に掲載されました。
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保育所新設に説明義務 名古屋市、10メートル以内の住民に
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名古屋市が待機児童の解消に向けた保育所の新設で、整備・運営事業者に建設予定地から10m
以内の全ての住民への事前説明を義務付けたことが分かった。
全国で保育所を巡る近隣住民とのトラブルが相次いでいるための措置。
厚生労働省によると「近隣住民」の範囲の明確化は珍しく、合意形成を円滑に進める狙いがある。
「近隣」の範囲を明確化
保育所開設を巡るトラブルは、昨年4月に開園予定だった千葉県市川市の保育所が近隣住民らの
反対を受けて断念したのをはじめ、東京都杉並区や武蔵野市、神奈川県茅ケ崎市などで相次ぐ。
名古屋市でも昨年9月、今年4月の開園を目指していた中川区の保育所が、騒音や交通トラブルを
懸念する近隣住民の反対に遭い断念。ほかにも複数の区で反対運動が起きている。
これまで、事業者を募集する市の要項は「応募前に近隣住民に適切に説明し、理解を得るように
努めること」と規定。
しかし「近隣」の範囲が曖昧なうえ、「努力義務」にとどまっていたため、住民から「事前に聞
いていなかった」といった反発があり、ボタンの掛け違いの一因となっていた。
事業者からは「どこまで説明すればいいのか分かりにくい」との声があった。
こうした指摘を受け、市は中高層建築物を新築する際の市条例にならい、要項を改正。
保育所予定地の敷地から10m以内の世帯を「近隣住民」と定義した。
集合住宅がある場合は、その全世帯を対象とし、事業者に記録書類の提出を求めることにした。
説明は対面が原則だが、2日間訪問しても会えなければ資料を置くことでも可能とした。
昨年まで3年連続待機児童ゼロ(4月時点)を続ける名古屋市は需要の高まりに応え、今年4月に
2180人分の保育所の新設を目指していた。
その6割にあたる23カ所を「賃貸型保育所」という手法で計画したが、中川区の事例など12カ所
でめどが立たなかった。
賃貸型は用地購入の必要がなく、1年以内に開設できるメリットがある半面、短期間に近隣との
合意形成が求められるためだ。
市は昨年12月から新たな要項を適用して再公募を開始。
担当者は「地域の人たちが納得できる形で保育所開設を進めていきたい」と話してい
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<保育問題に詳しい千葉大大学院の木下勇教授(まちづくり学)の話>
基準の明確化は珍しく、思い切った取り組みといえる。半面、10mを超える範囲の住民から強
い反対の声が上がったら、どう対処するのかなど課題も残り、保育所開設が進まなかった場合、
これまで以上に行政は責任を問われることにもなる。(住民の合意形成など)事業者に任せるので
はなく、行政も地域に保育所の必要性を説明することに深くかかわっていくことが求められる。
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本来、保育所の開設の認可は自治体が行うのですから、その候補地自体の適否は、自治体の
責任で評価し、決定すべきものです。
冒頭紹介したブログの中でも書きましたが、保育は自治体の住民サービス事業の性格を持つ
もの。私立の保育所には、その事業を委託するという関係が基本です。
従い、地域住民の理解を得ることは本来自治体の仕事。
河村名古屋市長も、意外に、そうした常識的な感覚がない?
加えて、その基準自体、これまでは、10メートル以上離れた家に居住する住民も反対した
中にいたはず。果たして、そうした実態をどこまで調査しての基準設定だったか、これも疑問
です。
それとも10mという範囲を外れる住民の理解は不要。反対しても無視してもよい、という
判断基準がこの中に含まれているのでしょうか。
後々、これも問題になりそうなのですが・・・。
待機児童解消のためには、保育所開設は必須。
でもそれは私立保育所運営の企業に、おんぶに抱っこ・・・。
自治体の甘えというか、わがままというか・・・。
幼児性を抱えた自治体。
本来、保育は義務化・無償化すべき、という基本方針を持つ覚悟と熱意、使命感が必要なはず。
未来志向の大人の自治体・首長であって欲しいものです。
もちろん、地域住民も、世代を引き継いでいく使命感を持って・・・。