育児・教育のあり方に関する良識や正論を政治・行政に反映させるべき世代責任:『世界一子どもを育てやすい国にしよう』から(8)

世界一子どもを育てやすい国にしよう』(出口治明・駒崎弘樹氏対談・2016/8/5刊)
を世代論として読み、紹介し、考えてみるシリーズです。

「第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう」から始めています。
第1回:「シラク3原則」。政治がフランスの少子化を克服した
第2回:出産が先、結婚は後。「できちゃった婚」の方が正しい?
第3回:子育て・保育の暮らしをイメージできない公務員は人でなし?
第4回:選挙権のない子どもたちを守ることも高齢者の務め。障害児保育ファースト!
第5回:やる気がない保育園義務教育化は、政治の未成熟、民心の未熟に因
第6回:少子化と民主主義との深~い関係?
第7回:保育・教育行政を変えるために不可欠な政治力

今回は、第8回です。

「第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう」
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 フェアな社会をつくる
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(出口)
選挙の問題で僕が気になるのは、日本の世襲議員の多さです。
誰かが言っていましたが、世襲議員のウエイトが10%を超えている国は、世界に2ヶ国しかない。
1位は日本が30~40%でダントツです。次はフィリピン。こちらはマルコス一家やアキノ一家な
どが有名ですね。アメリカはクリントン一家やブッシュ一家が有名ですが、議員全体レベルで見れ
ば、数%しかいないそうです。
ロンドンに住んでいたとき、友人に何人かMP(国会議員)がいたので、聞いてみたことがある
んです。
「子どもが国会議員になりたいと言ったらどうしますか?」
「本人の自由だよ。でも、もしそう言ったら、スコットランドかウェールズに行って立候補して
おいでと言うだろう」と、ある議員は答えました。
「ロンドンの自分の選挙区では、みんなが自分の名前を知っている。同じ名前の子どもが立候補
したら、アンフェアだ。政治家になりたいのなら、誰も自分の名前を知らないスコットランドかウ
ェールズの選挙区から立候補して、自分の力だけで議員になってみなさいと言うだろう。反対はし
ないよ」
これがおそらく世界の選良の常識でしょう。自分の選挙区から自分の子どもを出すようなアンフ
ェアなことを考える選良は、普通はいないのです。しかし日本では、こうした世界でごく当たり前
の考え方がむしろほとんど見られないというのが、驚きです。

(駒崎)
ないですねぇ。日本の選挙は、地盤を引き継ぐもの。政治家は大名みたいなものですよね。いま
も貴族制が続いているのではないかと思うくらい、血縁によって支配階層が占められている。この
現状を、のちの歴史家はどう判断するのでしょう。

(出口)
でも、市民の多くがこういう事実を知っていれば、世襲議員には投票しなくなると思います。世
界的に見てもおかしな現状だということを、知らなさすぎるんですよ。そういう世界の常識をきち
んと報道しないマスメディアのあり方にも、大きな問題があります。

(駒崎)
たしかにみんな、知らないですね。世襲議員の割合の高さも、当たり前だと思っている。

(出口)
社会は何よりもまず、フェアであるべきです。競争は自由だけれど、競争の自由というのはフェ
アな土壌があって初めて成り立つわけで、はじめからハンディがあったらそもそも競争ではありま
せん。「スコットランドに行って自力で戦っておいで」というのは、とても真っ当な話ですよね。
僕は、同一選挙区では血縁者の立候補を禁止してもいいくらいに思っています。政治家は家業で
はない。新規参入がない社会は、必ずよどんでいくというのが、歴史の教えるところです。

(駒崎)
大事な感覚ですね。日本はすでに男女間でのフェアネスが欠落しています。それをなんとかわれ
われの世代で是正したいんですよ。

(出口)
 僕は、クォータ制(割り当て制)は、とてもフェアな仕組みだと思っています。駒崎さんがおっ
しゃったように、日本は女性の地位がものすごく低く、世界的に見ても遅れている。これを是正し
ようとすると、多少の無理をしなければフェアにはなりません。
そこでクォータ制を入れる。例えばフランスで法定したように、国政選挙については男女の候補
者を同数にしないと政党交付金を減額する、というようにすればいいのです。どの政党もお金には
弱いので、すぐに候補者を立てるでしょう。
中には「女性は意識が低い」と言うおじさんがしたりしますが、民主主義本来の理念は、意識が
高いか低いかは関係ないんです。そもそもそれ以前に「意識の高い低い」は個人的な問題であって、
性差ではくくれない話です。
民主主義というのは、普通の市民がプロの官僚の意見などを聞きながら、常識で判断すればいい
という仕組みです。市民の感覚を持ち、市民の意見を汲める人であれば、それで十分だと思うんで
すよ。極論すれば、政党が用意した名簿の中から抽選で選んでもいいくらいだと思っています。

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育児・教育など、これからの世代を形成し、担っていく子どもたちのための社会のあり方を根本
的に変えていく必要があると、多くの人が考えていると思われます。
しかし、その場合でも、多くは、今どうすべきか、どうして欲しいかという視点・問題意識・対
策としてしかなかなか問題にされることはありません。

とすると、短期的な改善・解決対策に加えて、長期的な視点でこれからのあるべき仕組み・制度
などを考え、提起し、息長く取り組む人、組織、カタチが欠かせません。
そのための活動基盤は、どうしても政治と行政の場に置かなければ話は進みません。
形にもなりません。

問題提言の図書や論述がいかに多くあっても、それを政治・行政と繋がるかたちに持ち込めない
限りは、何ら意味をなさないことと同じ。
そのために、どんな手立てを講ずるのか、戦略と戦術を描くか・・・。
それはだれが担うか・・・。

具体的に、現実的に、現役世代と、現役世代に一歩譲った形で生きている先行OB世代の責任と
自覚して、知恵を絞り、活動を形にしていく必要があります。

いま注目されている「ポピュリズム」の括りのなかで、これらの問題・課題を政策軸の一つに組み
入れたポピュリズム政党とリーダーが出てこないものか・・・。
ふとそんな妄想を抱くのですが・・・。

米国トランプ政治等現状のグローバル社会を照らし合わせながら読む『ポピュリズムとは何か』:『ポピュリズムとは何か』から(1)
ポピュリズムとその定義の多様性・柔軟性:『ポピュリズムとは何か』から(2)

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第2章の残りの項は、<日本の政治にクオータ制を><現場を知る人を政治家に>
<これからは草の根ロビイング> 
の3項です

今回、前回と、育児や障害児などの現状の問題を解決していく上で、政治のあり方を変える
必要があることからの、対談の展開となりました。
この3項を省略し、今回の<フェアな社会をつくる> で第2章を終えることにしました。

次回から、本書が最も強く主張する、第4章と第5章に移ることにしたいと思います。

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【『世界一子どもを育てやすい国にしよう』構成】
はじめに

第1章 ヒトが生きてきた歴史に学ぼう
第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう
第3章 働き方を変えていこう
第4章 教育こそが人間形成につながる
第5章 年齢フリーのチャイルドファースト社会へ
おわりに

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なお、この第2章でテーマとなってきた政治・行政に関する共通する問題や見方・考え方は、
別のブログサイト<大野晴夫.com>の中で『地方議員の逆襲』(佐々木信夫氏著)を
参考図書としてブログ化している
 「『地方議員の逆襲』から」シリーズ で取り上げています。
お時間がありましたら、チェックして頂けると嬉しいです。

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(参考)

【『フランスはどう少子化を克服したか 』からシリーズ】

「はじめに」
第1回:衝撃の実態・制度を、仏在住日本人ママが体験調査レポート
第2回:日仏の保育政策・制度の違いは、子育てに対する認識の違いにあり
第3回:親だけで子供を守り育てることはできないと考える仏社会
「第1章 男を2週間で父親にする」
第4回:イクメンなど足元にも及ばぬフランスの「男を父親にする」産休プログラム
第5回:男の産休=出産有給休暇3日間+11日連続「子供の受け入れ及び父親休暇」=有給
第6回:日本にもフランス風に、イクメン養成初級プログラムを育児有給休暇制度で!
第7回:フランスのパパは、育児を手伝うのではなく、分担する!
第8回:出産ファースト、育児ファースト。父親産休は当たり前のフランス文化
第9回:家族政策の大転換に成功したフランス。家族制度を払しょくできない日本の少子化政策
第10回:10年余で実現・定着したフランスの「父親育児」システムの要諦
第11回:フランス人男性の、妊娠・出産、父親になることへの意識レベルは?
第12回:夫と妻の育児方針と家事分担をめぐる課題
第13回:子育て責任を強要されるかのような過剰父親育休制度の違和感
第14回:父親の育休取得推進策の前に、父親の産休制度の導入を

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【『保育園義務教育化』からシリーズ】

【はじめに】
第1回:絶望の国の「お母さん」にしない、ならないために
第2回:待機すれば入園できるのか?お母さんを虐待する待機児童問題
第3回:「一人っ子政策」を進めているかのような日本の少子化対策の怪
第4回:少子化を克服したフランスの経済学者ピケティも不安視する日本の育児と少子化
第5回:子どもの数よりも猫と犬の数が多い現実
第6回:義務教育の早期化は世界的な潮流
第7回:共に教育を提供する保育所と幼稚園から導く、義務教育化保育園
第8回:保育園義務教育化は「未来への投資」。社会福祉の世代間格差も考える
第1章「お母さん」を大事にしない国で赤ちゃんが増えるわけない
第9回:母親と子どもとの個体分離。片手落ちのお母さん擁護論の幼児性
第10回:炎上させる人間自身の親や子としての在り方を問い返すべき
第11回:家族資源が希薄な時代の「お母さん」の産後ケアのあり方
第12回:子どもを産み育てる親の覚悟と、それを支える社会の覚悟
第13回:養子縁組の少なさよりも人工妊娠中絶の多さが大問題
第14回:母乳であろうと粉ミルクであろうと、母子共に健康であれば良し
第15回:粉ミルクならできるイクメン哺乳瓶授乳体験
第16回:両論併記は選択の自由の証。母乳派・粉ミルク派・折衷派みんなそれぞれお母さん
第17回:イクメン、イクボスの広がりは、男性の育児時間を劇的に増やす?2016年社会生活基本調査10月20日
第18回:子育てに悩むお母さんを支える公的支援システムを!
第19回:少子化対策・保育制度・子育て支援・教育制度。一気通貫で子どものための社会改革を
第20回:児童虐待・育児放棄・児童遺棄。社会がその撲滅に責任を

第21回:子育て神話は、子の健やかな成長を願ってのもの。社会が現実で支える。

 

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