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「生まれ」でなく、「育ち方」に影響を与える「育て方」「乳幼児教育」の大切さ:『保育園義務教育化』から(27)

保育園義務教育化』(古市憲寿氏著・2015/7/6刊)を紹介しながら
保育・子育て政策の転換とそのシステムの構造改革を考えるシリーズです。

第2章 人生の成功は6歳までにかかっている」に入ります。
第1回:お母さん保育か、保育園保育か。まだある母性神話保育説
第2回:データに基づく教育経済学 vs 教育再生会議の「私の経験」論
第3回:めちゃくちゃ大事な、乳幼児期教育。その原資をどうするか
第4回:1960年代米国、ペリー幼稚園プログラムが示すこと。非認知能力と認知機能?
第5回:乳幼児教育の重要性を証明した実験結果の最大の活用法とは?

今回は第6回(通算第27回)です。

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 第2章 人生の成功は6歳までにかかっている(6)
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「生まれ」は「育ち」で変わる

 「生まれ」か「育ち」かという議論がある。
マシュマロ・テストのように、4歳から5歳の段階でその子の将来がある程度予測できて
しまうなら、結局のところ「遺伝」ですべてが決まるということなのだろうか。
このあたりは専門家の間でも意見は分かれるところなのだが、最近の研究では遺伝子が
すべてを決めるという考え方は否定されつつある。

なぜなら、どんな素晴らしい遺伝子を持っていても、その遺伝子が効果を発揮するかど
うかは、その人の生活習慣や環境次第だということがわかってきたからだ。
 だから最近流行している遺伝子検査も、実は相当怪しいものだと言われている。

 僕の友人(男性)は唾液を送る個人用遺伝子検査を受けたところ「エコノミー症候群と
子宮筋腫に注意」という結果が返ってきたという。まったく役に立たない検査結果だ。
 しかし、同じ唾液を送っても、調査会社ごとに検査結果が違うことも多い。遺伝子検査
は、科学の装いをした占い(もしくは「呪い」)くらいに思っておくのがいいだろう。

 環境が遺伝子にまで影響を与えるのなら、結局は「生まれ」とか「育ち」をきれいに切
り分けることができない。だからこそ、子どもの育つ社会的環境を整えることが大切なの
だ。

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<夏休みの宿題ができなかった子どもは大人になっても太っている>

しかしこうした研究は主にアメリカで行われたものだ。しかもペリー幼稚園プログラム
などは、いくら大規模実験といってもサンプル数は100程度だ。 
 限られたサンプルに対して行われた研究を、どれくらい一般化することができるものな
のだろうか。
 中室さんによると、アメリカではペリー幼稚園プログラムに限らず、アベセダリアン・
プロジェクトなど類似の実験が行われてきた。
 興味深いことに、それぞれの実験は、異なる時期に、異なる場所で行われた研究にもか
かわらず、その結果は基本的に、ペリー幼稚園プログラムと同様の結果を示している。
「乳幼児期の教育が重要だ」というのは、多くの研究で裏付けられているのだ。

 またアメリカほど大規模な実験ではないが、実は日本でも似たような研究が発表されて
いる。
 行動経済学者の池田新介さんの研究によれば、子どもの頃、夏休みの宿題をギリギリま
でやらず、休みの最後にしていた人ほど、借金が多く、喫煙傾向にあり、肥満者になる確
率が高いのだという。
子どもの頃に自制心のない人は、大人になってからもダメなのだ。「なかなかダイエッ
トに成功しない」と嘆いている人は、実は子どもの頃から身についてしまった習慣がそう
させているのかも知れない(救いがないけど納得できる)。

子どもの頃に受けたしつけが、その人の年収に影響を及ぼしているという研究もある。
京都大学の西村和雄さんたちの調査によれば、子どもの頃「うそをついてはいけない」
「他人に親切にする」「ルールを守る」「勉強をする」という4つのことを教えられた
人は、大人になってから、そうでない人と比べて平均年収が約57万円高かったのだとい
う。
この調査は、「子どもの頃に周りの大人からよく言われたこと」を聞いたものだが、
右の4つのことが、他のしつけよりも効果があったことが証明されたという。
ちなみに高学歴の人と、そうでない人を比べた場合、「ルールを守る」などは「高学
歴の人が多く言われていた。一方で「ありがとうと言う」「大きな声を出す」などのし
つけは、学歴には関係がなかった。
このような研究からわかるのは、子どもが小さい時の教育が、「人生の成功」におい
て、いかに大事かということだ。
こういった研究結果を見て、「すごくわかる!」という人も多いのではないだろうか。

(以下、略)

※次回、<家庭環境で決まる「努力」できる才能> に続きます。 

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遺伝子云々よりも、脳細胞の成長段階における教育やしつけが及ぼす影響の大きさ、
重要性は、それなりにイメージできます。
プリンティングでもあります。
宗教のプリンティングの効果の絶大性、絶対性が、乳幼児期の教育の重要性、大切
さ、その効果を物語っています。

種々の狙い・目的を同じくする調査・研究をまたなくともわかること・・・。
不遜な言い方になりますが、そうでしょう・・・。
全体的な傾向としては、確かにそうである、と・・・。

ただ、そうした早期の教育だけが、生涯を決めることになるか・・・。
その結論も、尚早というべきなのは当然です。

人間には、後天的に、経験的に学び、判断し、行動する能力と知性のみならず理性
もある。
そこには、厳然とした「個人差」があります。
成人してからは、相当の部分で、自己責任の領域に入ってくると言えます。
言うべき、とすべきでしょうか・・・。

しかし、乳幼児期の教育がもたらす、プラスの影響・効果。
これは、ないよりもあった方がよいこと、あるべきことの方がよいことは、明らか。
「育ち」「育て方」が「育ち方」に相当の影響を与える。

ならば、望ましい、好ましい「乳幼児期」からの「教育」の機会を、親の経済性や
遺伝子、親の環境などの違いにかかわりなく、極力平等に、公平に提供したい、すべ
き。
そう思うのも自然、当然でしょう。

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<<『保育園義務教育化』シリーズ・ブログリスト>>
【はじめに】
第1回:絶望の国の「お母さん」にしない、ならないために
第2回:待機すれば入園できるのか?お母さんを虐待する待機児童問題
第3回:「一人っ子政策」を進めているかのような日本の少子化対策の怪
第4回:少子化を克服したフランスの経済学者ピケティも不安視する日本の育児と少子化
第5回:子どもの数よりも猫と犬の数が多い現実
第6回:義務教育の早期化は世界的な潮流
第7回:共に教育を提供する保育所と幼稚園から導く、義務教育化保育園
第8回:保育園義務教育化は「未来への投資」。社会福祉の世代間格差も考える
第1章「お母さん」を大事にしない国で赤ちゃんが増えるわけない
第9回:母親と子どもとの個体分離。片手落ちのお母さん擁護論の幼児性
第10回:炎上させる人間自身の親や子としての在り方を問い返すべき
第11回:家族資源が希薄な時代の「お母さん」の産後ケアのあり方
第12回:子どもを産み育てる親の覚悟と、それを支える社会の覚悟
第13回:養子縁組の少なさよりも人工妊娠中絶の多さが大問題
第14回:母乳であろうと粉ミルクであろうと、母子共に健康であれば良し
第15回:粉ミルクならできるイクメン哺乳瓶授乳体験
第16回:両論併記は選択の自由の証。母乳派・粉ミルク派・折衷派みんなそれぞれお母さん
第17回:イクメン、イクボスの広がりは、男性の育児時間を劇的に増やす?2016年社会生活基本調査10月20日
第18回:子育てに悩むお母さんを支える公的支援システムを!
第19回:少子化対策・保育制度・子育て支援・教育制度。一気通貫で子どものための社会改革を
第20回:児童虐待・育児放棄・児童遺棄。社会がその撲滅に責任を
第21回:子育て神話は、子の健やかな成長を願ってのもの。社会が現実で支える。

24

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このブログサイト<世代通信.net>のカテゴリーのひとつが【保活・保育】
折々の関連する話題・ニュースなどを交え、保活や待機児童問題や施設・
保育士問題などを軸にして取り上げてきています。

まず手掛けたのが『「子育て」という政治』。
昨年2015年10月に、『「子育て」という政治』からとして9回投稿

次が『ルポ 保育崩壊』。
以下の通算21回目で小休止中です。
待機児童問題解決に必要な子育て・保育行政の改革:『ルポ 保育崩壊』<共働き時代の保育>から(8)

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<「保育園義務教育化」3部作>の残り2つの書と、そのブログリストが、以下です。

◆『フランスはどう少子化を克服したか』(高崎順子氏著・2016/10/20刊)シリーズ
「はじめに」
第1回:衝撃の実態・制度を、仏在住日本人ママが体験調査レポート
第2回:日仏の保育政策・制度の違いは、子育てに対する認識の違いにあり
第3回:親だけで子供を守り育てることはできないと考える仏社会
「第1章 男を2週間で父親にする」
第4回:イクメンなど足元にも及ばぬフランスの「男を父親にする」産休プログラム
第5回:男の産休=出産有給休暇3日間+11日連続「子供の受け入れ及び父親休暇」=有給
第6回:日本にもフランス風に、イクメン養成初級プログラムを育児有給休暇制度で!
第7回:フランスのパパは、育児を手伝うのではなく、分担する!
第8回:出産ファースト、育児ファースト。父親産休は当たり前のフランス文化
第9回:家族政策の大転換に成功したフランス。家族制度を払しょくできない日本の少子化政策
第10回:10年余で実現・定着したフランスの「父親育児」システムの要諦
第11回:フランス人男性の、妊娠・出産、父親になることへの意識レベルは?
第12回:夫と妻の育児方針と家事分担をめぐる課題
第13回:子育て責任を強要されるかのような過剰父親育休制度の違和感
第14回:父親の育休取得推進策の前に、父親の産休制度の導入を
「第3章 保育園には、連絡帳も運動会もない」

第15回:日仏、保育園の持ち物比較
第16回:保育事業・運営は、保護者負担を最小限にすることも含むべき
第17回:格差ゼロ化のための保育事業の義務化・無償化は国・行政の最重要課題に

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◆『世界一子どもを育てやすい国にしよう』(出口治明・駒崎弘樹氏著・2016/8/20刊)シリーズ。

「第2章 社会の仕掛け、仕組みを変えよう」
第1回:「シラク3原則」。政治がフランスの少子化を克服した
第2回:出産が先、結婚は後。「できちゃった婚」の方が正しい?
第3回:子育て・保育の暮らしをイメージできない公務員は人でなし?
第4回:選挙権のない子どもたちを守ることも高齢者の務め。障害児保育ファースト!
第5回:やる気がない保育園義務教育化は、政治の未成熟、民心の未熟に因
第6回:少子化と民主主義との深~い関係?

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保育園義務教育化』を含む上の3冊を並行して用い、少子化対策・保育制度・子育
て支援・教育問題をつなぎ合わせ、日常において報道される関連記事と擦り合わせつ
つ、社会の在り方、世代継承の在り方も考え、より望ましい社会改革に結びつけてい
くことができたら・・・。
そして、その主体の一つが政治の場に移されることを願って、粘り強く自分なりに問
題提起と提案をしていきたいと考えています。

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