2014 年日本の出生率9年ぶり低下は想定内。晩婚・晩産化が招く「第2子の壁」も明らかに。
昨日は、持ちたくても持てない、持たない・産まない「第2子の壁」について
「第2子の壁」は、家計・子育て・年齢・仕事上の壁:多子化を可能にする社会の役割・責任と個人意識
として一般財団法人「1more Baby応援団」の調査結果を取り上げました。
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それに先立って、
今月6月5日に厚生労働省が発表した2014年の人口動態統計。
◆1人の女性が生涯に何人の子どもを産むかを推計した、
合計特殊出生率は1.42に。
2005年の1.26を底に13年まで緩やかな上昇傾向にあったものが
9年ぶりに低下し、前年を0.01ポイント下回ったことが明らかになりました。
年代別出生率をみると、20~24歳、25~29歳が4年連続で低下。
20歳代が一段と子どもを産まなくなる傾向が強く、
30歳代前半の9年連続上昇にも拘らず、全体で前年を下回りました。
◆毎回注目されるのですが
女性が第1子を産む平均年齢は30.6歳となり、晩婚・晩産が一段と進んでいます。
これが、やはり「第2子の壁」に繋がっている大きな理由と考えられます。
平均で30.6歳なのですから
30歳代後半に第1子を産むケースが非常に増えていることも想像できます。
◆実際、平均初婚年齢は14年には男性が31.1歳、女性が29.4歳まで上昇。
1994年に男性28.5歳、女性26.2歳であり、20年間で男女とも2~3歳上がりました。
女性が第1子を産む平均年齢は1985年には26.7歳、1995年に27.5歳だったものが
過去最高だった前年の30.4歳を更新し30.6歳に上昇、です。
第1子の出産年齢が上がり、それに伴って第2子の出生率は5年ぶりに低下しました。
◆出生率が14年まで3年連続で1.4を超えたのは780万人いる「団塊ジュニア」の出産に
拠るもので、ゆるやかな低下傾向をたどる可能性が元々想定されたわけです。
第2次ベビーブームの1971~74年に生まれの団塊ジュニア世代が
30歳代後半から40歳代にさしかかり出産が増加傾向だったが、
14年には、前年の約7万人から5万人未満に減少。
出生数は100万3532人で2.6%減となり、15年は出生数が100万人を割り込むことも
当然予想されます。
比べてもあまり意味がありませんが、1974年に比べ、40年間でほぼ半減です。
◆出生率は長期的には1.35程度で推移し、
2060年の日本の人口は8674万人と今より4000万人近く減ると想定されています。
14年は、出生数から死亡数を引いた人口の自然減は26万9488人と過去最大の減少幅
を記録し、これからも人口減少は続きます。
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先の財団の調査結果が示すように、
子どもを欲しいと考えている人は実際にはもっと多いのですが、
晩婚化・晩産化が、出生率の低下、第2子の壁化に繋がっている実態があります。
その対応として、政府は
仕事と子育ての両立や所得面の不安など若年層が
出産に踏み切れない理由を取り除けば、出生率は大きく上がる可能性がある
とみているのですが・・・。
果たしてそれが決め手になるかどうか・・・。
6月6日の日経が出生率低下に関して種々述べていましたが
その中から、2人の学識経験者と同紙社説を転用しました。
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<正社員増が大切> :熊野英生・第一生命経済研究所首席エコノミスト
少子化に歯止めをかけるには、若い世代の正社員を増やすことが大切だ。
収入が安定すれば結婚したい人は早く結婚できるようになる。
その結果、第1子の出産年齢が下がり、
これに連動して2人目、3人目の子どもも産みやすくなる。
非正規雇用の若者が正社員になりやすいよう官民を挙げて教育訓練に力を入れるほか、
転職を通じて収入を増やせるよう転職市場を活性化する必要がある。
<働き方改革必要>: 山本勲・慶大教授
日本が経済成長を続けるには、働く人が減るのをできるだけ抑える必要がある。
そのためには働く女性と高齢者を増やすことが必要だ。
家事が忙しかったり健康に不安があったりする人でも働けるよう
限られた時間で集中して仕事をする働き方を広げるべきだ。
長時間にわたり働く人を評価するのでなく、
短い時間で成果を上げる人を評価する意識の改革が必要だ。
<日本経済新聞 2015/6/6 社説>
9年ぶりの出生率低下に危機感を持とう
そこに合計特殊出生率の低下が重なれば、子どもの数は大きく減る。
実効性ある対策で、若者の結婚や出産への希望がかなうようにしなければならない。
少子化の大きな要因は未婚の人の増加と結婚・出産年齢の上昇だ。
30代前半では男性の2人に1人、女性の3人に1人が結婚していない。
結婚や出産はもちろん個人の選択だ。
しかし収入の少なさや将来の見通しの不確かさが、家族を持つことの壁になっている。
若い世代には無職や、非正規社員として働く人も多い。
職業訓練の充実などによって、新規就業や処遇改善、正社員への転換が
進むようにすることは大事な少子化対策だ。
働き方の改革も欠かせない。
家庭の収入を安定させるためにも、女性の力を生かすためにも、
共働きは当たり前になっている。
しかし長時間労働の職場では、働きながらの子育ては難しい。
時間ではなく成果で評価する。
柔軟な働き方を用意する。
企業が工夫できることは多いはずだ。
職場風土が変わらなければ少子化が続き、
企業にも労働力不足や消費の低迷などの形で跳ね返る。
保育サービスの充実を掲げた1994年の「エンゼルプラン」以降、
少子化対策は何度も打ち出されてきた。
メニューはそろっている。
大事なのは着実な実行だ。
高齢者への給付に偏っている社会保障の財源の配分を見直し、
子育て支援などを充実させることを真剣に議論しなければならない。
子どもへの投資は、将来の社会保障制度の支え手を増やす。
これを丁寧に説明し、豊かな高齢者には一定の負担を求める。
こうした見直しには、政治の強いリーダーシップが必要だ。
若い世代の結婚や出産への希望がかなえば、
合計特殊出生率は1.8に回復するとの推計もある。
思い切った取り組みで、社会全体で子育てを支えたい。
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いかがでしょうか?
社説の中の、社会保障制度改革は、絶対行うべきものであり
政治の強いリーダーシップが必要なのではなく、全党・全国民の合意形成がなされて
当然のことなのです。
働き方、正社員など
どちらかというと企業サイドの責任を主張する内容・論調が目につくのですが
うがった受け止め方でしょうか。
(もちろん、紙面が十分確保されているわけではないので
論者もこの文で十分言い尽くしているわけではないのですが・・・。)
総モラトリアム社会化した日本の原因は
経済的な豊かさを至上とするところにあると考えるのですが・・・。
その反動としての意識・情緒・情感の豊かさの欠如・減衰がもたらすモノ、コト・・・。
「個人の自由」という言葉が、その事実・実態を覆い隠してしまうかのような現状・現代、
そして未来を、少しは憂うものです。
杞憂であれば良いのですが・・・。