限定正社員制の向かうべき方向・方法:日経【女性力活用の課題】を考える(5)
日経ゼミナール【女性力活用の課題】の着眼点(2014年7月掲載)
これまでも日本では、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みが進められてきた。
しかし、いまだ女性が能力を発揮できているとは言い難い。
女性の働き方は、世代や家族形成による影響を受けやすく、男性と違って多様だ。
近年の女性にまつわる変化を捉え、女性活用上の課題について述べる。
という視点からの記事を以下に引用し、考えてみます。
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5.注目される限定正社員(2014年7月20日)
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女性では非正規雇用者が多く、25~34歳を除く全ての年齢階級で、
雇用者に占める非正規雇用者の割合は半数を超える。
近年の推移を見ると、1990年代半ばから、若年層を中心に非正規雇用者
の割合が上昇している。
背景には景気低迷による新卒採用の縮小、労働者派遣法の改正による対象
業務の拡大などがある。
35歳以上の女性では、以前から非正規雇用者が多いが、これは、結婚や
出産を機に働き方を変える女性が多いためだ。
一方、女性の非労働力人口2931万人のうち、315万人に就業希望がある。
就業形態は、7割が、家庭生活にあわせて柔軟に働きやすい、パートな
どの非正規雇用を望んでいる。
求職していない理由は、「出産・育児のため」と「適当な仕事がありそ
うにない」が、それぞれ3分の1を占める。
現在、仕事と育児や介護の両立といった多様な働き方の実現、非正規から
正規への足がかりなどを背景に、職種や勤務地、勤務時間などを限定した
上で、正社員と同様に企業と無期雇用契約を結ぶ「限定正社員」が注目さ
れている。
限定正社員は、これまでも一部企業では導入されている雇用形態だが、
位置づけや職務内容が明示されていないことも多く、いかなる場合に解雇が
認められるのかが不明瞭で、企業での導入が進みにくい状況であった。
厚生労働省は今月、成長戦略における限定正社員の普及・拡大に向けて、
限定内容の明示や処遇水準、従来型正社員との転換制度、事業所閉鎖・
職務廃止時の対応など、企業に向けた指針をまとめた。
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この記事が掲載されてから既に1年経っています。
限定正社員化の動きは、今年に入ってからあまり聞かれなくなりました。
企業経営は継続・永続することも命題であり、人件費負担が、経営を危うく
する大きな要素の一つでもあります。
雇用保証や賃金アップが生産性の向上に直結する保証が必ずあるわけでは
ありません。
そのため、限定正社員制導入とそれに伴う人件費アップを実施できる企業は
やはり限られてきます。
いかに役所がそうすべき、そうしたいと考えても、経営上命取りになるリス
クがある企業に強制するわけにいきません。
正社員と非正規社員との根本的な違いは、雇用期間の定めの有無だけ。
そう言っても良いのではと思います。
そしてそれに社会保険負担と賞与支給基準の変更、有給休暇や出産・育児・
介護休業制度など福利厚生制度の利用権の違いなどに反映されていきます。
しかし、こうした周辺制度上の改善・改訂ですべてが済むわけではなく、
本来は、社員の賃金の見直しとセットで、限定正社員や非正規社員の賃金の
あり方も併せて行う必要があるのです。
いわゆる同一労働同一賃金の問題です。
そして、職種別賃金体系化の課題にも取り組む必要が本来あるのです。
一言で限定正社員と言うと、どんな職種でもそうすべき、そうすることが
可能という前提での話になっています。
しかし、それは、現実的に難しい・・・。
出産・育児・介護など、個人個人の事情・条件に対応できる限定社員制度。
働く上での勤務時間、就業日数と曜日、休暇・休業取得条件、などを満た
すことが可能な仕事内容・職務、職種かどうか・・・。
自宅での就労が可能か、組織・チームで柔軟に勤務体制を変更・対応する
ことができるか・・・。
そうした条件や課題をクリアできるかどうかは、仕事の内容・性質=職種
で、簡単に判断できると思います。
そしてその判断で、その仕事の習熟度や必要技術・技能のレベルが、個人
個人の力量の差として評価できるならば、限定正社員制は、非正規社員全
員が正社員になれる制度としてではなく、一部の限られた人が雇用契約の
変更により、貴重な正社員として、勤務諸条件も認められた上で、契約を
結ぶ・・・。
契約ですから、双方の意思・希望が一致している上でのことです。
本当に必要とされる人に対する雇用契約であり
自分の希望する種々の条件を認めて貰った上での、互いに尊重しあう
関係を基盤としているものです。
限定正社員制は、このような方式でこそ、企業規模や業種・職種を問わず
導入することが当たり前になっていくことが望ましいと考えています。
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日本経済新聞は、
<アベノミクス>の女性活用・女性活躍政策に殊の外ご執心です。
同紙の「経済教室」面の「ゼミナール」と「時事解析」欄。
そこで、昨年2014年から今年にかけて
◆『女性力活用の課題』<ゼミナール>(2014年7月16日から10回:にっせい基礎研究所)
◆『女性の力を引き出す』<時事解析>(2014年12月22日から5回:辻本浩子編集委員)
◆『女性登用の課題』<ゼミナール>(2015年4月16日から10回:第一生命経済研究所)
と<女性>をテーマにしています。それらのシリーズを素材にし、他の視点も時おり挟みながら
女性活用問題を、経営視点、男女・結婚問題、結婚・出産・育児・家族家庭問題、
生き方などと絡ませ、シリーズで考えています。
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このシリーズでのブログを以下にラインアップしました。
第1回:女性の就労率向上が出生率向上につながるか
第2回:男女雇用機会均等法の目的と成果とこれから
第3回:就業率や未婚化・晩婚化など気にせず自分の人生設計で
第4回:雇用形態で異なる育児休業制度利用度と出産後就業継続率: