一時金で保育士の復職期待と人材確保の緊急対策の評価:定着のための問題解決・改善策が先

一億総活躍社会実現のための緊急対策。
新・3本の矢と称されていますが、その<第3の矢・介護離職対策>
関しては、ブログサイト、介護相談.net
一億総活躍社会化の第3の矢「介護離職ゼロ」が示す介護現場・人材不足の現状無視
の中で紹介しました。

<第2の矢 出生率1.8対策>について、今回
2015/12/17付日経の
「 保育士確保へ緊急対策 厚労省、一時金で復職促す」と題した以下の
記事と関連させて触れたいと思います。

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厚生労働省は保育士の不足を解消する緊急対策を打ち出す。
保育士の資格があるのに働いていない「潜在保育士」の復職を促すため、
2年勤めれば返済不要となる就職準備への一時金を支払う。
保育所向けの貸付制度も新設し、保育士資格を持たない人が保育所で働き
ながら資格を取れるよう促す。
女性が子育てと仕事を両立できるよう保育の受け皿を50万人分増やす政府
目標の達成に向け、不足する約9万人の保育士の確保につなげる。

安倍晋三政権は現在1.4台の出生率を1.8に高める目標を掲げる。
今回の対策は目標実現のため共働き世帯の育児支援を強化する狙いだ。

対策に必要な費用として約710億円をまず今年度の補正予算案に盛り込む。
来年度予算での費用計上も検討し、来年以降に対策を実行に移す。

緊急対策の柱は3つ。
1)潜在保育士の掘り起こし
保育士として働く人は全国に約40万人いるが、資格を持ちながら子育て
などで離職している潜在保育士は約70万人に達するとされる。

こうした人々の復職を促すため、就業を決めた保育士に1人あたり15万
~20万円を貸し付ける。
就職準備のための引っ越し費用や交通費、仕事用の衣類の購入費などに
充ててもらう。
保育士として2年ほど勤務すれば返済は免除される。

また就業した保育士の子どもが勤務先の保育所や近隣の保育所に優先し
て入れる仕組みもつくる。
保育料も3万~4万円程度を上限に半額とし、仕事と育児を両立しやす
い環境を整える。

2)新たな保育士の確保
日中は保育所で働き、夜は専門学校で保育士の資格取得を目指す人を
支援する。

具体策として家庭で子どもを預かる「保育ママ」などを補助員として
雇う保育所に、1人当たり約300万円を3年間貸し付ける。
雇われた人が3年以内に保育士資格を取った場合は、貸付金の返済を
免除する。

人手不足に悩む保育所は貸し付けで補助員に給与を払う余裕ができる。
保育士への入り口が広がることで、将来の保育士人口の拡大にもつながる。
保育士を目指す人にとっても、仕事を覚えながら保育士の勉強ができる
ため、資格取得後に即戦力として活躍できる。

3)保育士の離職に歯止め
保育士は毎年、約3万5千人が離職する。
業務日誌の作成など、事務負担
が重いのが一因という。
そこで業務管理ソフトなどを導入して業務を効率化する保育所に費用の
一部を助成する。

政府は「一億総活躍社会」実現に向け女性の活躍を促すため、2013~17
年度の5年間で保育の受け皿を50万人増やす目標を掲げたが、実現には
5年間で約8万~9万人の保育士が不足する。

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離職防止対策の一つが、業務日誌などの事務負担軽減のための業務管理
ソフト導入等業務効率化助成・・・。
これで本当に保育士の負担が軽減され、離職防止の歯止めになるか?
恐らく、それは、多数ある要因のうちのほんの一つに過ぎないのでは、
と思います。

保育の現場の悲惨さ、大変さがその程度のこととしてしか理解されていな
いとすれば、お役人のノー天気さには、頭に来るどころか、あきれ返って
モノも言えない!!!

現在、ちょっと小休止していますが、保育現場の大変さと保育士不足を
関連付けたレポートを、以下のシリーズで引用・紹介しています。

ルポ 保育崩壊』(小林美希さん著・2015/4/21刊・岩波新書)から。

第1回:保育所急増・待機児童増状況での保育士問題を考える
第2回:大手運営会社の新設保育所の開園事情が示す問題
第3回:疲弊し、退職が止まらない保育士の現場実態
第4回:保育士不足を招く保育現場の実態調査から
第5回:社会福祉法人運営保育所もブラック化?
第6回:潜在保育士・潜在介護士。共通の問題を抱える保育・介護事業
第7回:保育現場では、女性による保育士へのマタハラが日常茶飯事?
第8回:職場流産が多い保育現場と保育士の現状

その内容、この図書を読めば、新しい矢が、的を射ることなど到底不可能
と断定できるでしょう。
なぜ潜在保育士化したのか、原因・理由を把握し、そのための改善・改革
に取り組まない限り、顕在保育士化する程度は知れています。

貸し付けるお金も、復帰・就職に必要な費用の補填が主旨ですから、魅力
的なものではありません。
仮に無償供与であっても、一定期間の勤務を条件とすれば、給料の前払い
的な性質のもので、仕事の負担の軽減や労働環境の改善向上が伴わなけれ
ば、もらって当然のもので有難味があるものではありません。

反対に、既に働いている保育士の方々への不公平感が高まってしまいます。
「保育ママ」の活用に関しても、保育士資格を持って働いている人たちの
一部には不評であることも、理解できます。

要するに、緊急対策は、緊急対策に過ぎず、一時的なカンフル剤で、しか
も効かない可能性の方が高い!

以下に、
「第2の矢の希望出生率1.8の実現に直結する緊急対策」を日経紙から
引用しました。

そもそも、出生率1.8を緊急対策で実現できるはずはないのです。
6つの重点政策を見ても、どれが現実的に1.8まで引き上げることに役
立つか、恐らく、だれも言えない、分からない・・・。
ただみな少しは関係していることだから、一応列記しておけばよい・・・。
そんな感じにしか読めません。

地方創生のために国が拠出する補助金・交付金の成果の評価をするという
が、政府・所管省庁の成果を問い、その結果に責任を持つなど、口が裂け
ても自分からは言いません。

種々の要素が絡み合い、婚姻率の向上、第2子・第3子の壁を超えること
が可能な、安心して出産・保育ができる環境・条件整備すること、シング
ルマザーでも仕事・子育てが経済的な不安がなくやっていける制度作り、
など、インフラ部分の持続的・継続的な政策が絶対に必要です。

そのインフラの、よりインフラ部分が、保育所施設と保育士の数と質の確
保です。

5年、10年かかる事業であり、しかも、1年1年、数値目標・財政投入
計画を基に、確実に進めていくべき課題です。

もっと、現場の声、女性の声を聴くと共に、政策推進のリーダーシップを
取れる女性大臣、女性関係官僚が望まれるのですが・・・。

CW1
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<一億総活躍緊急対策の要旨>

【第2の矢 出生率1.8】:「希望出生率1.8」の実現に直結する緊急対策

(1)結婚・子育ての希望実現の基盤になる若者の雇用安定・待遇改善

◆若者の円滑な就職を支援するとともに、非正規雇用者の正社員転換・
待遇改善を推進する。
◆非正規雇用者が育児休業を取得し、継続的に就業しやすくなるように
制度の見直しを検討する。
◆妊娠・出産・育児休業による不利な取り扱いを防ぐため、法制度を含
めて対応を検討する。
◆自営業者、短時間労働者の産前産後期間の経済負担を軽減するため、
国民年金保険料の免除を検討する。
◆中小企業に被用者保険の適用を拡大できるように制度的措置を講じる。

(2)結婚、妊娠から子育てに至る各段階の負担・悩み・不安を切れ目なく解消するための支援充実

◆不妊治療への助成を拡充する。※
◆地域での出会いの機会の提供や若者の新婚生活の住居負担の軽減など、
結婚に向けた活動を支援する。

(3)出産後・子育て中も就業が可能な多様な保育サービスの充実

◆17年度末までの保育の受け皿整備を40万人から50万人に拡大し、
「待機児童解消加速化プラン」に基づく認可保育所等の整備を前倒しする。※
◆小規模保育事業所の整備を支援する。※
◆企業主導型の保育所整備・運営の推進を16年度予算編成で検討する。
◆保育士の人材確保や情報通信技術による業務効率化を推進する。

(4)子育てを家族で支え合える3世代同居・近居がしやすい環境づくり

◆3世代同居向けの住宅建設、都市再生機構の賃貸住宅を活用した親子
の近居を支援する。※

(5)希望する教育を受けることを阻む経済事情など様々な制約の克服

◆幼児教育の無償化について財源を確保したうえで段階的に進める。
◆高等教育の奨学金を充実させるとともに、奨学金の返還月額が卒業後の
所得に連動する「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けて取り組む。

(6)子育てが困難な状況にある家族・子ども等への配慮・対策等の強化

◆財源を確保し、児童扶養手当の充実を図る。

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