子育て世帯支援で空き家を「準公営住宅」に(国交省検討):拡充すべき「準公営」概念と政策
2016/1/16付日経1面に良い記事が載りました。
「空き家「準公営住宅」に 家賃を補助、子育て世帯支援 国交省検討、建設コスト抑制」
と題した以下の記事。
これを基に考えてみました。
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国土交通省は全国で増え続ける空き家を公営住宅に準じる住宅として
活用する。
(ことについて検討を始めた、というのが正しいかと・・・)
耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を
「準公営住宅」に指定。
所有者が生活費負担が大きい子育て世帯などに貸すことを認める。
家賃の補助も検討する。
自治体の財政が厳しくなるなか、公営住宅の新設費用を抑える効果も
見込み、制度の詳細設計をまとめたうえで、2017年の通常国会への
関連法案提出を目指す(ものです)。
費用を支援するが、財政が厳しい自治体は新設に慎重。
国交省は子育て世帯などに空き家を提供する仕組みをつくり、公営住宅
の建設費抑制と子育て支援の両立を狙う。
公営住宅の不足で入れない高齢者世帯の入居も想定する。
公営住宅の収入基準は自治体が定める。
国交省によると、全世帯の収入区分の下位25%(月15万8千円)までが
入居できる場合が多い。
準公営住宅は公営住宅の入居基準を超す収入があっても家計が厳しい子育
て世帯の利用も促すため、収入区分を下位40~50%(50%で月25万9千円)
程度まで広げる計画だ。
準公営住宅は公営住宅よりも家賃が高くなる見込みだが、家賃を補助する
ことで同じ水準の民間物件よりも実質的に安くする。
さらに別枠で子育て世帯向けの家賃補助も検討する。
家賃の滞納対策として家賃保証会社に支払う保証料を国が補助し、滞納が
数カ月続けば退去を求めるルールをつくる。
準公営住宅に転用する空き家を選定するため、耐震性や省エネ性、遮音性
などの基準を新たに設ける。
基準を満たすために空き家を補修・改修する所有者には費用を補助する。
国交省は民間の住宅賃貸業者が準公営住宅を仲介し、借り手は民間物件と
条件を見比べて選べる仕組みを想定する。
準公営住宅は空き家対策と公営住宅の代用を期待できる半面、民間のアパ
ートやマンションを供給する不動産業者には民業圧迫になる可能性もある
ため、国交省は慎重に制度設計を進める。
公営住宅は全国に216万戸(2013年度)あるが、10年前から増えていない。
自治体が財政難などで新設に慎重なため。
一方で、人口減少に伴って都市部でも空き家が増えている。
全国の空き家は13年時点で820万戸に上り、10年前から24.4%増えた。
野村総合研究所は有効な対策を講じないと、33年には空き家率が3割を
超えると予測している。
<準公営住宅とは?>
民間のアパートやマンションの空き室、戸建ての空き家を活用した賃貸住宅。
耐震性や遮音性などの基準を満たすものを国が認める。
国・自治体が建設・管理する公営住宅と民間の賃貸住宅の中間的な性質を
持つため、「準公営住宅」と位置づける。
国が家賃を補助することで同じ水準の民間物件よりも安くすることを想定し
ている。
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<公営住宅と現状課題対策としての準公営住宅>
国と自治体が協力し、生活が厳しい低所得者を対象に比較的安価な家賃で
貸す住宅が公営住宅。
国土交通省の調査によると、2013年度時点で216万戸あり、10年前と比べて
1.3%減った。
公営住宅に入居できる基準を満たしながらも、民間の賃貸住宅に住んでいる
世帯は約400万世帯に上るという試算もあり、公営住宅の潜在的な需要は
大きい。
(潜在的需要でなく、顕在化・常態化しているというべき。)
が建設を担う自治体は建設費や補修費の負担を懸念して新設することに慎重。
全国で増え続ける空き家を有効活用することで公営住宅の機能を補うもの。
全国市長会は15年11月、国に対して「民間賃貸住宅を活用した公営住宅制度
の補完策」を求める要望を取りまとめている。
公益社団法人の全国賃貸住宅経営者協会連合会も国交省の有識者会議で同様
の提言を示しており、国交省は自治体や民間賃貸業界の協力も得やすいと判
断した。

同列に位置付けられないことは明らかです。民業を圧迫するという論理は、低所得者も支払うことが無理な家賃の住宅に
入ることを強要することをよしとする矛盾を含みます。なんといっても生活費において最も負担が重いのが家賃。
低所得世代が困窮する最大の要素・要因です。
公営住宅においても、望ましいのは、収入に応じて家賃が変動すること。
収入が増加するに従って家賃が高くなる・・・。
そういう運用が望ましい・・・。
「準」公営の「準」という概念は、住宅政策のみならず、介護や保育事業に
おいても今後一層拡充すべきと考えます。
こうした社会福祉的・社会的事業を担うべき公=国・自治体が、財政的理由
から、「民」の参入に大きく傾斜した場合、社会的弱者への施策はどんどん
縮小してしまうことは目に見えています。
それでは、自治・自治体が存在する意味がない・・・。
準公営住宅においても、家賃補助は、利用世帯の実情に応じて、弾力的に行
うことが望ましい・・・。
とくにシングルマザーの世帯の入居支援・家賃補助を最優先すべきです。
準公営住宅制度が導入されたとしても、恐らく貸し手は、できるだけ所得が
多い世帯に貸したいと思うでしょう。
ニーズ自体は、本来所得が低い世帯の方に高いわけで、選別が民にまかされ
ると、結局準公営も名ばかりになる可能性が高い・・・。
懸念・予想されるところです。
むしろ準公営受託は、国・自治体が借り上げ、入居世帯を自治体が申込み登
録者から選考する・・・。
そうあるべきではないでしょうか。
あるいは社会福祉法人や特定のNPO法人にその業務を委託する方式も考えら
れます。
また、準公営住宅入居に当たっては、敷金・礼金規定の廃止や保証金の削減
などの施策も必要でしょう。
いずれにしても、空き家の活用が叫ばれるようになってきている昨今、こう
した子育て世帯住宅に留まらず、高齢者住宅、介護施設、保育施設、低所得
若者向け住宅など、幅広く活用方法が検討され、実現されるコトに大きな意
義があることは言うまでもありません。
準公営概念を拡充することが、そうした政策の具体化を加速させることに繋
がるでしょう。
こうした地道な政策が、人口減少対策にもつながっていくと考えます。