健康女性が凍結卵子で出産。東京都港区が男性不妊治療を実質負担ゼロ化:妊娠・不妊支援技術と政策事例

2016/2/2付 日経夕刊で、興味深い記事を見ました。
「健康女性、凍結卵子で出産  大阪の40代、国内初の例か」という見出しの
以下の記事です。

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将来の出産に備え、独身だった41歳の時に卵子を凍結保存した大阪府の
女性(44歳)が昨年、その卵子で女児を出産したことが2月2日分かった。

凍結卵子の体外受精を行った大阪市西成区のクリニック、
オーク住吉産婦人科が明らかにしたもの。
医学的な理由ではなく、仕事など社会的な理由で卵子を凍結して妊娠と
出産をしたケースが公になったのは国内初とみられる。

卵子凍結から妊娠までは
1)採卵
2)採卵した卵子を、マイナス196度の液体窒素で凍結保存
3)凍結保存した卵子を解凍し、精子を注入して体外受精
4)受精卵を女性の子宮に移植
という流れ。

凍結卵子
※画像は、同医院HPからの引用転載です。
オーク住吉産婦人科では、女性は2012年から数回にわたり卵子を凍結。
健康状態に問題はなかったが、「結婚の予定はないが、いつか子供を持
ちたい」
と希望したという。
健康保険は適用されず、1回の採卵に数十万円、総額数百万円の費用が
かかった。

その後、夫(42歳)と結婚し、卵子を解凍して精子を注入する顕微授精
(体外受精)を実施。昨夏に女児が生まれた。

同クリニックでは10年から健康な女性の卵子凍結を開始し、昨年末までに
229人の卵子を凍結保存した。
このうち17人が体外受精をし、この女性のみが出産に至った
「他院での同様のケースは聞いたことがない」(同クリニック)という。

卵子の凍結保存は、がん治療などで卵巣の機能低下が見込まれる女性が
行っている。
健康な女性の利用を巡っては、日本産科婦人科学会が昨年2015年6月、
「推奨しない」とする文書をまとめた
卵子採取時に出血などリスクがあるほか受精卵や胎児への影響も不明で、
将来の妊娠や出産を保証できないことを理由に挙げた。
日本生殖医学会は13年、高齢出産などのリスクから40歳以上の採卵は
「推奨できない」とした

晩婚化などを背景に卵子の凍結保存への関心が高まっている一方、
「出産の先送りにつながりかねない」「仕事との両立支援など社会的な対
が重要」との声もあり、医療関係者の間でも賛否が分かれている。

妊婦
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<卵子の凍結保存とは>
排卵誘発剤などで卵巣を刺激し、採取した卵子を液体窒素の中で凍らせ、
凍結保存する。
解凍すれば体外受精が可能で、受精卵を子宮に戻して妊娠、出産を目指す
ことができる。
卵子は細胞膜が弱く、凍らせると染色体が損傷する恐れがあるため、
精子や受精卵の凍結に比べて難しかったが、近年の保存液や急速冷凍技術
などの改良によって可能になった。
同紙同日付記事を転載)

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この事例は、不妊治療による凍結卵子の利用、というわけではなく、凍結時
には未婚状態であったが、いずれ結婚すれば利用したいという希望からのも
のです。

同医院では凍結保存卵子を用いて体外受精を行ったのは17例。
そのなかで実際に出産に至ったのが、この1例のみとのこと。
残り16例についてどうなったのか、どうしたのか知りたいところです。

同産婦人科では、奇数月 第三土曜日に、卵子凍結の無料セミナーを実施して
います。
「卵子凍結(無料)セミナー」については、同医院のHP
こちらのページで確認できます

安全性については、まだ事例が少なく、検証されていませんが、どちらかと
いうと学会では否定的な感じですね。

ただ、わたしが調査目的に登録している婚活サイトから紹介されてくる40歳
以上の独身女性のほとんどが、子どもを持ちたいとしていることを考えると
卵子凍結保存と体外受精、妊娠を希望する女性が多いのでは、と推測させら
れます。

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これとは別に、翌2016/2/3付日経・首都圏版には
「男性の不妊治療を助成 港区、実質負担ゼロに」
という以下の記事が掲載されました。
合わせて紹介します。

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東京都港区は2月2日、男性の不妊治療への助成制度を始めると発表した。
2016年度から申請を受け付け、1年間で上限15万円を支給する。
所得制限は設けない
都が15年度から始めた同様の助成制度(上限15万円)を併用すれば、
男性不妊治療の一般的な費用(30万円程度)を賄え、自己負担は実質無料
になる。

対象は医療保険適用外の体外受精や顕微授精といった特定不妊治療。
精巣内の精子採取などが該当する。

4月1日以降に治療が終了した案件に適用し、最大5年間の助成が受けられる。

港区はこれまで女性向けの不妊治療に対し、年間30万円を限度に補助している。
不妊の原因が男性にある場合もあるため、自己負担を減らして治療しやすい環境
を整える。

bb10
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人口減少対策のうちの不妊治療支援。
これは、具体的な対策で、子どもが欲しいけれど恵まれない夫婦にとっては
朗報です。

安全性が保証された不妊治療技術が、無料あるいは低費で利用可能になるこ
と、望ましいですね。

当<世代通信.net>のカテゴリーのひとつである、<妊娠・妊活・出産>に
ついては、これまで
妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング
齊藤英和・白河桃子氏共著・2012/3/20刊)
を紹介してのシリーズを投稿しています。

第1章「婚活時代は妊活時代」(白河桃子)
第1回:学ぶ「妊活」と、再考する「婚活」
第2回:出産後も正規職として継続就労した大半は公務員・教師という時代
第3回:妊娠・妊活、婚活に不可欠な強い意志・理性、責任そして愛情
第2章「教科書が教えてくれなかった卵子の話」齊藤英和)
第4回:胎児のうちにすべての卵子が創られるって、知らなかった!
第5回:アンチエイジングできない卵子、思うままにならない妊娠

本書の構成は、以下

第1章 婚活時代は妊活時代
第2章 教科書が教えてくれなかった卵子の話
第3章 「産めるカラダ」ってどんなカラダ?

第4章 不妊治療の現場から
第5章 「産みたい」なら、まずは結婚!?
第6章 妊活時代の妊娠力とは
第7章 共働きカップルの妊活
第8章 セックスレスが大問題
第9章 「35歳から」始める産めるカラダのメンテナンス
第10章 妊活の未来は?
第11章 女性を幸せにする妊活

後日、3章以降の内容も紹介する予定です。

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