「終活消費」対象のお墓対策と「おりん」?:日経<130万人のピリオド>で見る「終活」模様(5)
2016/2/1から、毎週月曜日の日経 夕刊で
「130万人のピリオド」と題して、終活・人生の最期をテーマに
連載しています。
昨年の年間死者数が130万人を超え、今後も増え続けることが予想される社会。
その連載記事を順に紹介し、終活を考えてみます。
第1回:終のすみか。ホームホスピスも在宅で迎える最期のカタチ
第2回:増える家族葬や直葬。火葬場待ちが常態化で友引火葬も当たり前
第3回:独居高齢者の孤立死リスクにどう対処するか?
第4回:「手作り葬」「家族葬」「直葬」。DIY終活が見えてきた!
今回は、第5回の以下の記事です。
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5.「終活消費」に高齢者走る 墓問題「子に負担かけず」(2016/2/29)
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高齢者が生前に暮らしの整理をつけておく「終活」。
エンディングノートや遺書を準備する一方で、子世代に負担をかけたくないと、
地方にある墓を自宅の近くに移したり、自分で購入したりする人が目立つよう
になった。
終活の一環として「最後の消費」に走る高齢者の心情を探った。
「戦争中亡くなった母の骨を、ようやく父と同じ墓に葬れた」。
73歳になる元金融機関勤務のAさんは、そう話すと言葉を切った。
Aさんは広島県にあった母方の墓を改葬し、母を含む11人の骨を、神奈川県内
の公園墓地の墓に合葬したのだ。
終戦で外地から引き揚げたAさんと父は、母の遺骨を広島県の実家の墓に入れ、
首都圏で生活を築いた。
その父も亡くなり、墓は神奈川県にAさんが設けた。
母の遺骨はそのままで心残りだったため、改葬に踏み切った。
広島県での作業費用は約150万円。下見や立ち会い、寺への謝礼などを含めると
300万円弱という。
「子は2人いるが、墓が2つでは負担がかかる」とAさん。
「私の代で一仕事終わらせた感じ。将来、子は年5000円の管理費を払うだけです
む」とほっとした様子だ。
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<お墓を移転>
墓を移す改葬は、近年増えている。
須藤石材の須藤昭社長は「年間2000基ほどある新設墓のうち30%が改葬だ。
改葬セミナーを開くと、団塊世代以上の夫婦の参加が多い。『子に迷惑をかけ
たくない』との動機が目立つ」と話す。
須藤社長によると東京近郊の墓地の永代使用料は1平方メートル30万円ほど。
墓石は120万~150万円なので、2平方メートルの墓で200万円くらいかかる。
ここに地方の墓の墓じまいの費用が加わる。
それでも彼らは子を思いやる。
<増える「搬送式納骨堂」利用>
都市部で増える「搬送式納骨堂」でも、状況は同じだ。
骨つぼを収納する箱である厨子が3000~5000基ほどあり、遺族が訪れると礼拝
スペースに自動で運ばれる。
遺骨は50年後に合葬される取り決めだ。
販売を手掛ける、はせがわによると、東京近郊では年間で1万基ほど増えており
「団塊世代以上の人に人気がある」という。
元医科大学講師の井川潤二さん(77歳)とはる枝さん(73歳)夫妻は、東京都
世田谷区にある納骨堂の権利を80万円で買った。
近郊に一族の墓もあるが、米国に住んでいた時に知った同国の墓に近いスタイル
にひかれた。
「海外で働いている子に負担をかけずにすみ、自分が生まれ育った地元で眠れる」
と潤二さん。
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<資産継承を兼ねた終活消費>
終活消費は、子世代の負担を軽くするのにとどまらない。
富裕層の中には資産の継承を意識する人もいる。
仏前で鳴らす黄金の「おりん」など、金製の祭具の売り上げが伸びているのは
その代表例。
約1000種の金工芸品を百貨店などで販売するSGC(信州ゴールデンキャッスル)。
2012年度の売り上げは約30億円だったが、15年度は200億円に達しそうだという。
土屋豊社長は「金製品売り上げの80%が仏具や仏像になって驚いている」と話す。
おりんは18金製で、200万~300万円の製品が売れ筋だ。価格は同量の金地金の
2~3倍で、購入者の9割超が65歳以上。
「多くが富裕な自営業主に売れている。いざというとき、子が換金できるように
したいと考えてもいるようだ」と話す。
おりん、仏像などは、墓と同様に相続税法12条により課税されない祭祀財産になる。
ただ、祭具の非課税・課税の基準は、裁判例がほとんどなく不明だという。
元値が地金より高いため、金の値上がり益を狙うのも難しそうだ。
土屋社長は「購入者は自分の生きた証しを、価値が永続的な金に求めている面も
あるのでは」ともみる。
自分の代で墓問題を解決しようという責任感、子に決して迷惑はかけないという
決意――。
様々な思いで高齢者は最後の消費に向かっている。
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「様々な思いで高齢者は最後の消費に向かっている。」
なんて、随分厳かな気分にさせるような表現ですが、正直、ちょっとくすぐ
ったい・・・。
最後の消費。
はっきり意識がある状態であれば、何に、どのようにお金を使うか・・・。
考えてみるのも面白いかもしれません。
もちろん、お墓や資産継承などとは無関係に、楽しくか、美味しくか・・・、
でです。
今回の記事に出てくる終活協賛?各社。
須藤石材のHPには、お墓の引っ越しについての詳しい説明がありました。
はせがわのサイトでは、いろいろな納骨堂の種類を見ることができます。
SGCのサイトではCM放送中の「おりん」の音色をほんの少しですが、
ここから聴くことができました。
多様な死後の対応方法が広がり、提示され、選択可能になっていくことは望ま
しいことと思います。
わたしも、自分の墓は要らない、と断言し、家族にははっきり伝えておきたい
と思いますが、(万一かみさんが先に逝ってしまったら)お墓はそうはいかない
だろうなと考えるでしょうね・・・。