高齢者の下流老人化に留まらない、格差社会が招く全世代貧困化:『下流老人』の今と明日(19)

「20万部超のベストセラー『下流老人は序章だった!」という
キャッチフレーズの藤田孝典氏の新刊
貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(2016/3/20刊)を
読み終えました。
5月からそのシリーズを始めます。

--------------------------
下流老人とは、
「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
ベストセラー(藤田孝典氏著・朝日新書・2015/6/30刊)より。

NPO法人ほっとプラス を設立・運営する若い世代の同氏が描き、
社会に警鐘をならした高齢者の貧困問題の書を参考に引用させて
頂きながら考える、<『下流老人』の今と明日>シリーズ。

第3章「誰もがなり得る下流老人」
第1回:高齢期の長期化と病気・介護・事故による下流化リスクの高まり
第2回:だれもがなり得る、介護が必要な高齢者、下流化の現実
第3回:公・民の役割と機能の再構築が必要な介護制度・政策と介護事業モデル
第4回:親子共倒れリスクを抱えた下流老人化社会は、一億総モラトリアム社会の断面
第5回:団塊世代とシングル団塊ジュニアとの実家同居が招く下流老人世帯化
第6回:増える熟年離婚。老後を考えると、結婚・夫婦を再考する必要が
第7回:中高齢男性は生活能力を今からでも身に付けよう!
第8回:夫婦関係のリセットで新しい役割分担・関係を作るべき高齢者夫婦
第9回:高齢者に不足する確認・相談先を判断し行動できる社会性。認知症と特殊詐欺被害問題から
第10回:認知症高齢者が被害に合いやすい特殊詐欺。これからの高齢者のあり方
第11回:年金だけで暮らせる老後は夢。自衛を考えるべき現実

今回は、第12回です。

------------------------------
第3章 誰もがなり得る下流老人
-「普通」から「下流」への典型パターン-:近い未来編(2)
------------------------------

年収400万円以下は下流化リスクが高い

 1960年代に池田内閣により推し進められた「所得倍増計画」により、ど

の家庭も一律に生活水準の向上が図られた。
1968年には日本の国民総生産(GNP)が世界第2位に達し、国民に享受され
たのが「一億総中流」社会である。

当時の社会では、隣の家が持っているものは、自分の家にもあるのが当た

前で、いわゆる新・三種の神器(カラーTV、クーラー、自動車)が普及し
時期でもあった。
現代において、この一億総中流の「意識」はいまだ崩れていない。
2014年6月に実施された「国民生活に関する調査」では、男女ともに9割以
上の人が自分の生活を「中流」だと認識しているそうだ。

生活程度

だが、あえて断言しよう。それは幻想である。

これからの日本社会に、もはや中流は存在しない。
いるのは「ごく一握りの富裕層」と「大多数の貧困層」の2つであろう。
隣の家庭も時分と同じくらいだから安心、ではない。
わたしたちは全員が緩やかに、しかし確実に貧困に足を踏み入れている。

自分がどれくらいの生活水準にあるのか。
それを測る指標はいくつかあるが、一番わかりやすいのが年収だろう。
国税庁の調査によると、2014年時点における日本の民間企業の従業員や
役員が昨年1年間に得た平均給与は、414万円とされる。

しかし、先述のとおり、平均年収400万円では、高齢期に「ギリギリ」
の生活を強いられる危険性が高い。

また、これも繰り返しになるが、注意しなければならないのは、年収400
万円程度というのは平均値であって、中央値ではないことだ、
一部の大金持ちが、平均値を押し上げていることを忘れてはならない。
実際のボリュームゾーンはこれよりももっと低く、年収400万円以下で暮
らしている生産年齢人口はたくさんいるし、むしろそちらが多数派と言え
る。

資産2


<強烈な格差の行く着く先>

このような上位数%が極めて高所得を得ているために発生する「富の
一極集中化」は、日本のみならず、どの先進国でも起こっている。
 2014年5月、OECDは「過去約30年間における上位1%の所得割合の
推移」を発表した。
 これによると上位1%の人たちの所得割合は、1981年と2012年で比較
したとき、アメリカは8.2%から20%に、日本でも7.5%から10%に上昇
している。
 要するにアメリカでは、全労働者が得る所得のうち、上位1%の人々
がその20%を、日本では10%を独占しているということだ。

 一方アメリカでは、下位10%の人たちの収入額は2000年からの8年間
で約10%減少したこと指摘されている。
 つまり、双方向のベクトルで経済格差が広がっていることがわかる。

 アメリカほど顕著ではないものの、日本でも今後、経済格差がますま
す拡大していくことは明らかであろう。
 そしてこのとこた、今のような現役時代の報酬比例で厚生年金を支払
っていくしくみや国民年金だけでは、もはや暮らしが成り立たなくなる
ことを意味する。

 そして、ごく一握りの富裕層と大多数の貧困層に分化しつつある社会
において、もはや平均年収は自分の生活水準を測るうえで何の意味もも
たない。
 「普通」だから「安心」とは、まったく言えないのだから。

ボンビー1
※次項に続きます。

-------------------------

金が金を呼ぶ、招く・・・。
金がコモディティ化、金融が商品化した社会は、金の循環方法・回路が変
質してしまいました。

金儲けが得意でない私にも、お金はなかなか簡単には循環してくれません。
天下の回りものはずのカネですが、回り方が大きく偏っているわけです。

まあ、物欲もなく、グルメでもない私たち夫婦なので、地味な生活がしっ
くり身についており、子育てがとっくに終わっていることもあり、貯えがな
くてもそう悲観的にならずに淡々と暮らせそうと思っています。
健康ならば、という但し書き付きですが・・・。
(かみさんに不安があり、私も絶対大丈夫という自信もないので、現実的に
は、どうなっていくでしょうか・・・)

年収400万円レベル高齢者世帯の、下流老人化のリスクの大きな要素は、
やはり健康だと思います。
介護を必要とする状況になったときに、どのような形での生活になるか・・・。
です。

そして、現状進みつつあり、今後一層進むと予想される強烈な経済格差社会。
これは、高齢者問題というよりも、家族、全世代・全世帯、いうならば社会
全体の問題と認識すべきというのが、筆者・藤田氏の考えです。

この問題を掘り下げたのが、冒頭紹介した、同氏による
貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』。

高齢者どころか、若い世代から貧困状態にあり、それが生涯にわたること。
親の貧困が、その子どもに直接的に及び、貧困の連鎖が起き、一生抜け出せ
ないこと。

そうした課題には、社会福祉の視点が、人の一生に関わるものとして必要で
あることを意味します。
高齢者介護という難しい課題が、生まれた時からの貧困と連綿とつながるも
のである・・・・。
そう認識する必要は、今のところないようですが、強烈な格差の行き着く先
のことと想定されるならば、やはり、現状から改善策を具体的に打ち、リスク
回避策の一要素として結果を残していく必要があると考えるのです。

alo14

 

※次回 <昔と今の400万円は価値が全然違う> に続きます

-------------------------

このブログで、これまで「結婚、してみませんか」と題して、私の過去の
Ameblo投稿ブログを再掲して、メモを追加したものがあります。
お時間がありましたら、チェックしてみてください。
⇒ ◆「結婚、してみませんか」シリーズ

cp9

-------------------------
<本書の構成>
第1章 下流老人とは何か
第2章 下流老人の現実
第3章 誰もがなり得る下流老人
第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
第5章 制度疲労と無策が生む下流老人
第6章 自分でできる自己防衛策
第7章 一億総老後崩壊を防ぐために
----------------------------

「第1章 下流老人とは何か」
第1回:下流老人とは?その定義と問題の視点
第2
回:下流老人に多い相対的貧困者
第3回:高齢期の生活維持のための貯蓄がない現実
第4回:一人暮らし高齢者の増加と社会的孤立化
第5回:親子両世代、共倒れのリスク
第6回:尊敬される高齢者とは?
第7回:若者が抱く老後不安の社会構造を変革する道は?

---------------------------
【藤田孝典氏プロフィール】
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。
聖学院大学人間福祉学部客員教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。
ブラック企業対策プロジェクト共同代表。
厚生労働省社会福祉審議会特別部会委員。
ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活
困窮者支援のあり方に関する提言を行う。
著書:『ひとりも殺させない』貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち

関連記事一覧