少子化を克服したフランスの経済学者ピケティも不安視する日本の育児と少子化:『保育園 義務教育化』から(4)
人気の若手男性社会学者古市憲寿氏の子育て・保育論『保育園義務教育化』を
紹介しながら保育・子育て政策の転換と社会システムとしての構造改革を考え
るシリーズ。
【はじめに】
第1回:絶望の国の「お母さん」にしない、ならないために
第2回:待機すれば入園できるのか?お母さんを虐待する待機児童問題
第3回:「一人っ子政策」を進めているかのような日本の少子化対策の怪
今回は、第4回です
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「お母さん」が「人間」だって気づいていますか?(4)
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<ピケティも心配する日本の少子化>
もう誰も覚えていないと思うが、昨年の初め、フランスの経済学者トマ・ピケティ
が日本に来ていた。
『21世紀の資本』という分厚くて高い本が世界で100万部を超すベストセラーになった
経済学者だ。 (略)
(その)ピケティと対談する機会がったのだが、印象的だったことがある。
それは彼がしきりに、日本の少子化を気にしていたことだ。
日本は急速に少子高齢化が進んでおり、これは日本にとって危機的な事態だ。
そのためには女性が働きやすい環境を整備したり、男性が長時間労働を改めて育児
にもっと協力しないとならない、というのだ。
「なんでそんなこともやってないの?」という顔をして、「日本は女性だけが育児
をするべきという規範が強すぎる」「このままじゃ日本の女性はますます子どもを産
まなくなってしまうよ」「若い世代が子どもを持ちたくなるような政策を採用しなく
ちゃいけない」と熱く少子化の話をしてくれた。
そうしないと、日本は「本当に極めて恐ろしいことになる」というのだ。
実は、ピケティは来日中、僕との対談以外でも、折に触れて日本の少子化や育児の
問題に触れていたのだが、多くのマスコミではそれについては軽く無視されていた。
ニュースで触れられたのは、彼がアベノミクスや格差社会について言及した箇所が
中心だった。
そう、このピケティの取り上げられ方自体が、今の日本社会を象徴していると思う。
みんな少子高齢化がなんとなく問題だとは認識しながら、それで日本が「本当に極
めて恐ろしいことになる」とは本気で思っていないようなのだ。
よく少子化の話題になると、「日本は狭いんだから人口が減ってもいい」という人
がいる。
確かに日本人の全世代が均一に消滅すればいいのだが、実際には人口減少の過程で
高齢者が多く、若者が少ないという時代が訪れる(まさに今、そうなりつつある)。
そうなると、年金や社会保障の仕組みが立ちゆかなくなる。
働く現役世代が減ると、そのぶん労働力も高くなるから、産業もどんどん海外へ逃
げていく。
さらに高齢者ほどお金を貯め込む傾向にあるから消費も冷え込む。
移民をいれればいいという人もいるが、ヨーロッパでは移民がうまく社会に溶け込
めなくて様々な社会問題が起こっている。
さらに、裕福な外国人が来てくれればいいが、貧しい移民が増えても消費者として
の期待はできない。
確かに、アベノミクスの成否や格差社会の行方も大問題だ。
だけど、少子高齢化で日本はこのように「本当に極めて恐ろしいことになる」。
(略)
※次項に続きます。
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「本当に極めて恐ろしいこと」とはどういうことなのか、きちんと示してほしかった
のですが、脅し文句?止まりだったのは、ちょっぴり残念!でした。
恐ろしいことになるとの予想の中に、若者世代と人口の減少、高齢者増加で、社会
のさまざまなインフラを維持できなくなるということが入るのが常です。
しかし、非婚派の著名な女性社会学者は、そうなれば何か考えるでしょう、とだれ
の責任でもないとおっしゃっています。
確かに、だれかの責任に特定できるものではないし、すべきものでもない・・・。
でも、「極めて恐ろしいことがおきる」と予想されれば、その対策・対応を考える
のは、順番からいうと、政治・行政の役割・責任、とうことになりそうです、という
かそうなります。
ただ、その対策が、子どもを産むことだ、と素直に、一直線に結論付けてしまうと、
非婚派や子どもを欲しいと思っていない人から、もろに反対を受けてしまう。
なので、粛々と、結婚するコト、子どもを持つコトに対する不安要素を取り除く政
策を推し進めていけばいいわけです。
その手順と内容が、まずい、ひどい・・・。
これまでの政治・行政が、そういう状態だ、と言えるわけです。
でも、個人個人の生き方、考え方、結婚、出産、育児などに対する思い、願い・・・。
それらも、当然のことながら、とてもとても大切なコト。
その領域に、だれがどのように関わっていくのか・・・。
これが最も難しいことのような気がします。
次回は、<子どもより猫が欲しい?> です。
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このブログサイト<世代通信.net>のカテゴリーのひとつに
【保活・保育】カテゴリーがあります。
折々の関連する話題・ニュースなどを交え、保活や待機児童問題や施設・
保育士問題などを軸にして取り上げてきています。
そこで関係図書を紹介しながらのブログシリーズでまず手掛けたのが
『「子育て」という政治』。
昨年2015年10月に、『「子育て」という政治』からとして9回投稿。
次が『ルポ 保育崩壊』。
このブログシリーズは現在も継続中で、以下で通算21回目。
◆待機児童問題解決に必要な子育て・保育行政の改革:『ルポ 保育崩壊』<共働き時代の保育>から(8)
そして、第3弾の『保育園義務教育化』に入っています。