訪問看護による在宅死。ホスピスは広がるか:日経<130万人のピリオド>で見る「終活」模様(12)

2016/2/1から、日経が毎週月曜日の夕刊で
「130万人のピリオド」と題して、終活・人生の最期をテーマに
連載しています。
昨年の年間死者数が130万人を超え、今後も増え続けることが予想される社会。
その連載記事を順に紹介し、終活を考えてみます。

第1回:終のすみか。ホームホスピスも在宅で迎える最期のカタチ 
第2回:増える家族葬や直葬。火葬場待ちが常態化で友引火葬も当たり前
第3回:独居高齢者の孤立死リスクにどう対処するか?
第4回:「手作り葬」「家族葬」「直葬」。DIY終活が見えてきた!
第5回:「終活消費」対象のお墓対策と「おりん」? 
第6回:望む終末期・最期を、家族・医師に伝える文化形成を
第7回:ペット同居可能特養、ペット信託、ペット保険。ペットのための終活対策も
第8回:最期のあり方の選択肢として増える「献体登録」
第9回:増える無縁墓。改葬・墓じまい・共同葬、多様な選択肢と対応法
第10回:介護施設入居に保証人が必要。身元保証契約・身元保証制度問題
第11回:「生前葬」からあと何年生きますか?

今回は、第12回の以下の記事です。

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 12.「家で逝きたい」を支える 訪問看護、家族に寄り添う(2016/4/25)
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最期は自宅で迎えたい。
そう願う人は多いが、現実には大半の人が、病院や
施設など自宅外で亡くなる。
本人の望みをかなえ、家族が悔いなく「そのとき」を受け入れるには何が必
なのか。

自宅でのみとりを24時間体制で支える訪問看護の現場に、そのヒントがあった。

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「あのとき、ああしておけばよかったという後悔はない。家族でできること

してやり切った」。

4月17日に亡くなった大類幾男さん(享年83歳)の妻(79歳)は、家族で幾男
さんをみとった1カ月の日々を、穏やかに振り返る。

幾男さんは前立腺がんを患っていた。
ただ80歳を超えても社長を務めるなど元気だった。
容体が悪化したのは3月。
がんが骨に転移して足がまひし、歩きにくくなり、食事の量も大幅に減った。

かかりつけの医師は、余命約2カ月と診断。
終末期の在宅ケアを手がける
「ケアタウン小平訪問看護ステーション」を妻に
紹介した。

看護や介護をどうすべきか。
悩む妻に、所長の蛭田みどりさんは話した。「うちなら一括して全部できますよ」。
妻は安心し、3月中旬から利用し始めた。

幾男さんの体は次第に自由がきかなくなり、家族が介護に参加する場面が増えた。
同居する高校生の孫は、帰宅後すぐ幾男さんの部屋に駆けつけ、硬くなった足を
もみほぐした。
亡くなる前日の夜には3時間近くマッサージをし続け、三世代の家族で幾男さん
を囲んだ。

所長の蛭田さんは、事前にこれから起こりうる変化や見守るための心がけ、死後
の準備を家族に説明していた。
長女(50歳)は「聞いた通りに容体が変わっていき、慌てることなく対応できた」
と話す。
死後の装いについて家族で事前に話し合い、ゴルフ好きだった幾男さんにピンク
のウエアを着せた。

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同じく訪問看護を利用し、4月17日に前立腺がんで亡くなった小平市のAさん

(享年87歳)の妻は「支えてくれた看護師さんを見ると涙が出る。最期を家で
安心して迎えられた」と振り返る。
担当看護師の斎藤明子さんは「みとりはそれぞれの家族にとって貴重な機会。
自宅で亡くなってよかったと思ってもらえるよう心がけている」と話す。

手2
<ケアタウン小平訪問看護ステーションのホスピス>

ケアタウン小平訪問看護ステーションの現在の利用者は、半径約3キロメートル
圏内に住む約70人。
常勤の6人と非常勤の2人の看護師で運営し、併設するケアタウン小平クリニッ
の3人の医師と連携する。
週に2回ほどの定期訪問に加え、24時間体制で利用者や家族の電話を受ける。
必要なら深夜でも駆けつける。

朝夕には、患者の様子や家族の気持ちなどの情報を共有する「申し送り」を開き、
家族に寄り添うケアを徹底している。
クリニックの山崎章郎院長は「家族は本当に家でみとれるのかと不安を持ってい
る。できることを前もって提案し、自分たちでも支えることができる、と自信が
つけば、家族がうまく判断できるようになる」と話す。

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 利用者の多くは、容体が比較的安定した末期がんの患者だ。
 およそ4分の1は2週間以内、半数近くは1カ月以内に亡くなる。
 スタッフはみとりの後も訪問し、遺族の気持ちに寄り添うグリーフケアも手がける。
 山崎院長は「家でみとったことを後悔しないよう、説明やケアをする。家族は、
精いっぱいやって故人の思いに応えたと思えれば、その後堂々と生きていけるから」
と話す。

厚生労働省は自宅や地域で最期を迎えられるよう、医療、介護など切れ目のない
緩和ケアを一括して受けられる「地域包括ケアシステム」を推進する。
全国訪問看護事業協会によると、2015年4月1日時点で、全国で稼働中の訪問看護
ステーションは8241カ所。10年の統計開始以来、増え続けている。

山崎院長は「病院の受け皿は増えており、我々が10年前に始めたときよりも環境は
よくなってきた」とみる。
ただ、24時間対応できる体制を整えるには「バックアップする医師や、一定以上の
数の看護師の確保が不可欠」と話す。

点滴2

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<地域のサービス拡充を 在宅死かつて8割、今1割>

自宅で亡くなる人は戦後間もないころは8割強だった。
その後、1974年に50%を割り込み、2014年は13%に減った(人口動態統計)。
国民皆保険が行き届き、誰もが病院を利用できる豊かな社会になった証しでもある。
半面、民間財団の調査では、余命が限られている場合、8割強は自宅で過ごしたい
と願っており、希望と現実に開きがある。

家族形態の変化も自宅での死亡が減った一因だ。
国民生活基礎調査で65歳以上の高齢者がいる世帯をみると、75年は三世代同居
が54%を占めたが、13年には13%に減った。
代わって夫婦のみの世帯が最多で31%に上る。
75年当時は専業主婦が主流で、高齢者を見守る人手も家庭にあった。
女性のライフコースが多様化しており、高齢者の世話を押しつけるのは許され
ない。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護など地域の医療・福祉サービスの拡充が、
高齢者の最後の希望を支える鍵となる。

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ケアタウン小平訪問看護ステーションのホームホスピスの取り組みについ
ては、このシリーズの第1回

終のすみか。ホームホスピスも在宅で迎える最期のカタチ
で既に取り上げられています。

また、他のブログサイト<介護相談.net>で、今年2016年1月から4月まで
シリーズ化して紹介した、上野千鶴子さん著の『おひとりさまの最期
2015/11/30刊)
この<ケアタウン小平訪問看護ステーション>などのホスピスの事例を詳し
く知ることができます。

同書の構成は、以下の通り。
1章~4章まで同ブログで取り上げました。
5章以降のホスピスに関連する内容は、このブログ<世代通信.net>で、
この後、取り上げていく機会があればと考えています。

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1.み~んなおひとりさま時代の到来
2.死の臨床の常識が変わった
3.在宅死への誘導?
4.高齢者は在宅弱者か?
5.在宅ホスピスの実践
6.在宅死の条件
7.在宅ひとり死の抵抗勢力
8.在宅ひとり死の現場から
9.ホームホスピスの試み
10.看取り士の役目
11.看取りをマネージメントする
12.認知症になっても最期まで在宅で
13.意思決定を誰にゆだねるか?
14.離れている家族はどうすればよいのか?
15.死の自己決定は可能か?
16.死にゆくひとはさみしいか?

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日本人の死因で、いまだに最も多数を占める「ガン」。
その患者さんの自宅での死を望む気持ちを実現するのが、ホスピス。
当然、その営み、取り組みは家族の同意・理解・協力を前提としています。
ただ、そこでは、医療という営み・行為があるのが、介護との決定的な違い。

ある意味、合意形成しやすい事情・状況といえます。
在宅介護と施設介護を比較してどうこう、というのとは異質なモノ、コト。

終活の在り方としては、明確ですが、限定的なもの。
先が見えない重度の介護の悲惨さとは、一線を画したものと理解しておきた
いと思います。

別れ1

 

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