住宅問題を同時解決するひとり親移住支援制度:日経<ひとり親一歩踏み出す>から(2)
2016/7/25と7/26の2日間、日経夕刊で
【ひとり親一歩踏み出す】というレポートが掲載されました。
1回目の「正社員 つかんだ自信 貴重な戦力 求人増える」は
◆シングルマザーを積極的に採用し、戦力化を進める企業事例:日経<ひとり親一歩踏み出す>から(1)
として前回紹介。
今回は、もう一つの「地方移住という選択 仕事と家、自治体支援」
と題した記事を紹介します。
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ひとり親家庭の皆さん、どうぞ我が町に。
子育て中のひとり親世帯に向けて移住を呼びかける自治体が増えている。
人口減で介護などの人材不足に直面し、住居や経済面で支援し就労を促している。
ひとり親は収入に加え住まいの確保に苦労することが多いだけに、安定して子育て
できる利点がある。
介護以外でも受け皿となる職域を広げる動きが出始めている。
北海道・旭川駅から車で約40分の幌加内町。
ソバの収穫量日本一で知られ、緑のソバ畑が広がる。
6月、道内の中核都市から一人のシングルマザーが移り住んできた。
7月から町内の特別養護老人ホーム「テルケア」で介護助手として働くBさん(43歳)。
Bさんが利用したのは同町が昨年10月に始めたひとり親向けの移住支援制度。
中学生以下の子どもと同居する60歳未満の町外在住者が対象だ。
介護サービス事業所で働くことを条件に、月額17万円の給与を保証し、月3万円の養育
補助や20万円の支度金を出す。
一定期間定住すれば奨励金もある。
もともと介護の仕事に就いており、長男(3歳)が小学校に入学する前に心機一転、転
居することにした。
東京も候補地だったが「家を決めるまで何度も通うことになる」と、手続きの大変さを
心配。幌加内町では、町営住宅を紹介され、すぐに入居できた。
同町では町立保育所の保育料と、子どもが中学生までの医療費は無償。
「一人で子どもを育てるにはお金をためないといけない」というBさんには魅力的な制
度だ。
移住後は子どもと遊ぶ時間がしっかりとれ、長男は自宅にある畑を耕し「前よりたくま
しくなった」。今の暮らしを楽しんでいる。
幌加内町が移住制度を取り入れたのは「人口が減り、子どもがいないと地域は活気に欠
ける。移住支援で人を呼び込みたい」ためだ。
参考にしたのが、同制度を全国に先駆け昨年5月に実施した島根県浜田市。
引っ越し費用の一時金30万円や月3万円の養育費を支給。現在6世帯が居住する。
説明会ではデメリットも隠さず話す。「コンビニが多くあるわけではないこと、スー
パーは午後7時で閉まることも最初から説明する」と浜田市政策企画課長は言う。
制度開始から2年目。課題も見えてきた。
説明会までは足を運ぶものの、最終的に制度利用を見送る例もある。
「いかに浜田で明るい未来を描いてもらえるか」。
長期に地域にとどまってもらうためには、安定的に暮らせる環境整備が欠かせない。
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ひとり親対象の移住制度は各地で増えている。
三重県鳥羽市、大分県国東市などだ。
介護就労を条件としたり、福祉分野の資格取得を支援する例もある。
Bさんもホームヘルパーの資格を保有していた。
だが、ひとり親が必ずしも介護就労を希望するとは限らない。
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<長野県が説明会実施>
「浜田モデル」を参考に今年度から移住支援制度を始めた長野県は、製造業や小売業
も就労条件に追加。
こども・家庭課は「介護には向き不向きがあるから、長く仕事をしてもらうために業
種を広く考えた」。
7月23日に東京・銀座で開いた説明会には22人が参加。
「キャリアを生かしたい」と、介護以外の仕事を問い合わせる人もいた。
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移住制度は、人口減に悩む自治体と、職と住まい、子育てを安定させたいひとり親の
双方に利点がある制度だがマッチングは容易ではない。
シングルマザー支援のNPO法人リトルワンズの小山訓久代表理事は「自治体による
移住支援のパンフレットが観光情報になっていることも多く、情報提供が十分ではない
例も少なくない」と指摘する。
仕事や住居に加え、学校や病院などにも目を向け「親と子ども双方の人生に長く関わ
ることという意識を持って環境整備していくことが重要」と話す。
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<「困ること」上位に住居問題 増える空き家紹介の自治体も>
厚生労働省による2011年度の「全国母子世帯等調査」によると、母子家庭が困ること
の第1位は家計(45.8%)で、第2位は仕事(19.1%)、第3位は住居(13.4%)。
住居は、保証人が必要なことや母子家庭だと収入が安定していないなどと見られ断ら
れる場合もある。
仕事と住居を用意するひとり親移住支援制度はこれらの悩みを一挙に解消するものだ。
一方、自治体にとっては増える空き家の対策にもなる。
島根県浜田市は空き家バンク制度をつくっており、移住してくるひとり親世帯にも
職場から近いところを紹介している。
リトルワンズは11年に国土交通省の空き家対策のモデル事業として東京都豊島区の
空き家に、母子家庭が暮らせる仕組みを構築。ほかの区や市へも広げている。
敷金、礼金が不要な物件を中心に、リトルワンズがひとり親家庭の物件探しから入居
まで支援する。
母子家庭と住居問題の2つを解決する「全国唯一の取り組み」(小山訓久代表理事)
という。
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移住する決心がつけば、非常に良い制度と思います。
いろいろな事情を背負って生きる、生きざるをえない家庭もあるでしょう。
むしろ移住を望むシングルマザー、母子家庭もあるかもしれません。
そうした方に、住まいと仕事と収入を提供する制度は、有難い制度でしょう。
今後もこうした制度を拡充していく上で、国がその情報ネットワークの基盤を整備し、
地方移住と雇用、住宅をパッケージ化して提供する事業を進める自治体を調べることが
できる総合ホームページを設けてバックアップしてほしいと思います。
また、積極的にそうした情報を自ら発信する企業も増えて欲しいですね。
前回の、シングルマザーの積極的な雇用と活用をめざす企業、今回のように官民一体
となっての移住支援に取り組む地域。
今回の2つの記事を見て、これから日本も少し変わっていくかもしれない・・・。
希望・期待を持たせる情報が、ますます増え、拡散し、広がっていくことを期待した
いと思います。