早期復職を前提とした企業努力、個人の思いとずれる政府の思惑

イクメン、イクボスと育児休業制度と関連する課題を男性の家事・育児分
担責任論の視点で、ここ数回取り上げてきました。
そこで、この育休制度を巡る法律上の課題、育休延長問題についても数回
引き続き考えてみることに・・・。

1回目は、日経の女性論説委員辻本さんの一文を紹介し
育休延長、本音と建て前。当事者の思い・思惑にどう対応するか:育休延長論を考える(1)
で問題の視点を確認しました。
今回と次回は、その問題提起よりも遡って、2016/9/5と同9/6両日日経夕刊に
掲載された「育休延長の波紋」という特集を用い、事例を含め、もう少し突っ込
んで考えてみたいと思います。

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 育休延長の波紋(上):早期復職、企業は舵 「女性活躍と逆行」懸念も
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 育児休業を2年に延長する案が急浮上し、政府内で議論が始まっている。
 待機児童問題が深刻になっているなか、仕事と子育ての両立を一層しやすく
する狙いだ。
 ただ休業期間の長期化はキャリア形成を遅らせ、女性活躍推進の流れに逆行
するという声もある。
 国や企業、働く側の思いを2回に分けて紹介する。
 まずは企業で急速に広がる早期復職支援の動きから。

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<ダイキン工業の事例>
「半年だけでも仕事の感覚を取り戻すのが大変だった」。

 同社の法務部門で特許業務を担う芝池由美子さん(35歳)は振り返る。
 2015年5月に第1子を出産。育児休業を経て12月に職場復帰。
 不在の間も法改正や新たな判例などがあり、休業前の知識では追いつかな
くなっていた。
「子どもは大切だが仕事でも活躍したい。育休は半年が限度」と話す。

 育児休業は原則、子どもが満1歳になるまで取得できる。
 政府は8月にまとめた経済対策で育休期間の延長方針を打ち出した。
 ただ国の思惑に女性活躍先進企業は戸惑っている。
 早期復職支援が新潮流となっているからだ。

 ダイキン工業もその一つ。最高60万円の保育費補助や週4日の在宅勤務な
ど、早期に復帰する社員に手厚い支援をさしのべる
 芝池さんも制度をフル活用。復帰当初は認可保育園に入れず認可外保育園
を利用したが、保育料は全額会社の補助でまかなった。
 早期復職支援は13年に始めた。
 ダイバーシティ推進グループ担当課長の今西亜裕美さんは「女性社員は貴
重な戦力。期待しているからこそ早く帰ってきてほしい」と説明する。

 企業が早期復職支援に舵を切る背景には育休取得者の増加がある
 育休を取り休業給付金を受け取った人は15年度に30万人を超えた
 05年度の約2.5倍だ。出産後も働く社員が増えると「育児中だから」と過
度に仕事を軽減はできない。

<明治安田生命保険の実情>
同社は今年4月、保育料補助を早期復職者に限り月5千円増
額した。
従来は一律1万円だった。

 15年度の育休取得者は1350人に上る。
休業中の社員の仕事をカバーする同僚の負担も重くなっている。本人のキ
ャリアロス懸念もあり、早期復帰を促したい」(人事部)

 もちろん育休は働く側の権利。早期復職の無理強いは許されない。
 子育て中の社員への配慮と早く戻ってきてほしい思い――。
 バランスの取り方は難しい。

サトーホールディングスの実情
 同社は10年に最長3年間の育休制度を導入し、気兼ねなく休めるよう給与
の50%を休業中も支給する仕組みをつくった。

 一方、育休制度をフル活用しない社員にも13年4月に支援策を新設。
 子どもが満3歳になるまで給与の20%(上限6万円)を上乗せ支給している。

「前倒しで復職する社員より休業中の社員が厚遇されるのはおかしい」。
 女性社員から経営層に提案があったからだ。育休取得者のほとんどは1年
以内に復帰し、2年以上休むケースは全体の6%にすぎない。
 人財開発部の高橋麻子部長は「女性社員の就業継続という目標は達成した
ので、これからは女性管理職を増やしていく」と説明する。

<「ぷちでガチ!育休MBA講座」>
大阪駅前のオフィスビル会議室に8月30日、赤ちゃんを抱っこした女性約

20人が集まった。「ぷちでガチ!育休MBA講座」の定例会だ。
 育休中もビジネススキルを磨きたい。
 そんなワーキングマザーの思いから講座は15年8月に始まった。
 大学教授らを毎回招き、2時間みっちり議論する。
 創設メンバーの西山裕子さんは「女性の意識も変わった。出産したらそこ
でキャリアは終わりではなく、復帰後に仕事でどう貢献するか。将来を見据
えて、育休中もうずうずしている」と指摘する。

<マザーネットが受ける相談から>
 育休取得期間が延びたとしても、選択肢が広がるだけでキャリア志向の女
性に影響はないとする意見もある。ただ病児保育などを提供するマザーネット
(大阪市)社長の上田理恵子さんは異を唱える。

 利用会員のワーキングマザーから毎月100件の相談を受けている。
「育休をめいっぱい利用せずに復職するとき『子どもより仕事を選ぶのか』
という暗黙の圧力を女性は今も感じている。育休の延長は復職にためらいを
感じている女性をさらに心理的に追い詰める」と強調する。

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育休延長案、異例の審議 待機児童問題背景に

 育児・介護休業法は社会情勢の変化に合わせて、およそ5年ごとに改正を
繰り返している。ただ今回の育児休業延長論はこの定期的な見直しとは別
 定期的な法改正は先の通常国会で成立したばかり
 その施行も済まないうちに次の法改正審議が始まるのは異例の事態だ

 背景には待機児童問題がある。保育の受け皿を拡充しても、利用希望者の
増加に追いつかない。
 育休は原則子どもが満1歳になるまで取得できるが、保育園に入れない場
合は半年延長できる。
 厚生労働省は「半年延長しても保育園に入れずに退職する保護者がいる。
その救済が育休延長の狙い」と説明する。

 厚労省は月内にも労働政策審議会で議論を始める予定。
 詳細は未定だが、育休2年案が有力だ。その場合、
1)原則1年と規定する育休期間を2年に延ばす
2)保育園に入れなかったときの特例延長期間を1年に延ばす
など複数案がある。
 法改正案を審議会でまとめて早々に国会に提出、17年度中の施行を目指す。

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企業サイド、といっても大手に限ってのことと言っていいのではと思いま
すが、どうも政府の思いとは、根本的にずれがあるようです。
現状では、早期復職を促進するために、法律を上回る条件を上乗せする企
業が増え、女性も、企業の支援制度を活用しながらそうしたいと考えている。
この動きに、育休延長は水を差すもの、コトになる。

休業期間が長引けば、企業にとっても戦力の女性の復帰が遅れ、損失を受
け、本人も、復帰の遅れは、必要な実務能力とのギャップの発生やその後の
キャリア形成上のデメリットへの不安などから、望ましいことと思っていな
い・・・。

これに対して、政府は、待機児童をゼロにするためには、育休期間を延長
して、1年以上養育に専念できるようにし、そのことで、離職・退職も抑制
できるとみている。

どうやら、経済の成長のため、女性の労働参加と女性活躍を期待したいと
言いつつ、子どもが待機児童にならないように、育児休業期間を延長するの
で、働かずにもうちょっと子育て期間を延ばして欲しい、と言っているんで
すね。虫がよすぎる・・・。

しかし、この議論で対象になるような女性は、ほんの一握りでしょう。
法律内の適用・運用で目いっぱいな企業の方が多いでしょうし、その範囲
内の賃金保障では、生活には不十分なので、早く復職したいと考える女性が
多いでしょう・・・。
そこで育休延長されても、収入が少なく不十分で、不安定な生活が続いて
かえって迷惑。
待機児童対策を優先的に解決してくれれば、復帰は早い方が良いわけです。

「半年延長しても保育園に入れずに退職する保護者がいる。その救済が育休
延長の狙い」
とする厚労省の理屈は、「待機児童問題を改善・解決すれば、育休延長は必
要ない」ということのはずです。
もうひとつ厚労省の狙いは、育休延長を利用する人が増えれば、不足する保
育士不足に、多少はプラスの効果をもたらすだろうということ。
これも、本末転倒の理屈です。

ということで、育休延長には、本質的には合理性はないはずです。

それとは別次元で、私は、子どもを産んだすべての親に、現役世代として
子どもが1歳になるまで毎月、養育年金を1年間受け取ることができる新しい
年金制度を制定することを提案しています。

その額は、出産し養育を担当するすべての母親(または父親)が、1年間
就労しなくてもよい生活コストに当る金額です。
企業に在籍する社員が、企業独自の支援制度で補助金を別に受け取るのは
構わないとします。
この養育年金支給により、現状の雇用保険からの育児休業補償給付は廃止
します。

法律上の育休期間は、1年間。
企業が別途その期間を超えて育休期間を延長するのは、任意でよいでしょう。

加えて、2020年頃からは、5歳児以上の保育園義務教育化、その教育の無
償化を図る・・・。
など、保育・教育制度の構造改革を、関連する他の規制緩和と制度構築で
推し進めることになります。

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