多剤併用の副作用リスクと過剰・重複投薬への不審:高齢者の「薬漬け」対策の重要性
もう1か月以上も前の記事ですが、気になっていたので紹介します。
2016/9/18付日経の【日曜に考える】< 医療>編の以下の記事です。
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高齢者の「薬漬け」対策急ぐ 学会が指針/専門外来設置
体力低下、副作用出やすく
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高齢者が服用する薬を減らす取り組みが広がってきた。
学会が薬を適切に選ぶためのガイドラインをまとめ、専門外来を置く病院
もある。
多くの薬を一緒に飲むと副作用が出やすくなり、特に体力が低下した高齢
者に顕著なためだ。出血や転倒などで亡くなるリスクも高まってしまう。
75歳以上の約3割が10種以上を服用しているとの報告もある。
“薬漬け”対策は急務だ。
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8月下旬の夜。東京都港区の虎の門病院に高齢患者が救急搬送された。
自宅でふらついて倒れ、意識もはっきりしない。幸い、検査では異常は見当
たらず、一晩で回復。家族は胸をなで下ろした。
西田昌道・救急科部長は「処方された多種類の薬を飲んでいて、その影響が
出たと考えられる」と話す。
昨年2~4月に救急搬送された高齢者約700人を調べたところ、薬の副作用
が疑われる人が60人近くにのぼったという。
多種類の薬を飲む多剤併用は、ふらつきや臓器障害など副作用の危険性が高
まるとして問題視されている。
とりわけ高齢者は内臓機能が衰え、薬の処理能力が落ちている。
種類や用量の慎重な見極めが必要だ。
一方で病気を複数抱え、医療機関を幾つも受診する高齢者は多い。
それぞれの医師は患者が服用する薬全体を把握せず、自分が受け持った病気
だけを診て処方しがちだ。結果、患者が服用する薬は増えてしまう。
※記事中の資料をそのまま転載させて頂きました。
代表的な薬例示:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
こうした問題を受け、日本老年医学会は昨年11月に「高齢者の安全な薬物療
法ガイドライン2015」をまとめた。
慎重な投与が必要なものとして抗精神病薬や睡眠薬、鎮痛薬など20領域の代
表的な薬剤を例示。
認知機能低下や転倒、出血といったそれぞれの主な副作用に加え、「漫然と
長期投与せず、減量、中止を検討する」「可能な限り使用を控える」などの
注意事項を付記した。
ガイドライン作成を主導した東京大学病院老年病科の秋下雅弘教授は「医師
や薬剤師はこれを参考に、どこから見直すべきか検討してほしい」と訴える。
医療機関も対応に乗り出した。
栃木医療センターは医師と薬剤師が組み専門外来「ポリファーマシー外来」
を開設している。
病院側が多剤併用している患者の服用薬を確認し、それぞれの要否を判断
して整理するのが役割だ。
昨年1年間で47人に投与されていた延べ422種の薬のうち、半分以上に当た
る237種類を中止した。
同外来の責任者、矢吹拓内科医長は「診療所を含めて地域全体で取り組み
が広がれば」と期待する。
チームで連携
虎の門病院は「高齢者総合診療部」で対策を進めている。
医師や看護師、薬剤師などがチームを組み、高齢者が多剤併用にならない
ようサポート。井桁之総・同部長は「救急科との連携を強化していく」と話す。
調剤薬局の取り組み
調剤薬局も同様の役割が期待される。「具合はどうですか。変わったことは
ないですか」。
アイン薬局汐入店(東京・荒川)の薬剤師、高津潤子氏は高齢者にこう声を
掛ける。効き目や副作用の有無を確かめ、「異常がありそう」と判断したら
処方箋を出した医師に報告し、対応を相談する。
もともと薬局は「お薬手帳」などを通じて患者の服用薬を把握しやすい。
さらに今年4月の診療報酬改定で、患者の指名で薬を一括して管理する
「かかりつけ薬剤師制度」も始まった。
「以前は医師に見直しを提案してもなかなか聞いてもらえなかったが、最近
は耳を傾けてくれるケースが増えた」(高津氏)
インフラ整備も必要だ。
電子カルテが普及し、患者の薬の情報が一元化され、それが共有化されれ
ば多剤併用は減るだろう。診療所への整備や病院との連携が求められる。
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高齢患者の服薬、3割が「10種以上」
厚生労働省が2014年12月の診療データを集計したところ、75歳以上の患者
で10~14種類の薬を服用していたのは20.2%で、15種類以上は7.1%。
10種以上が3割近くを占めている。
同省の研究報告では、多剤併用による副作用の症状としては意識障害や
低血糖、肝機能障害、ふらつき・転倒などが多い。
東京大学病院老年病科の入院患者への調査では、薬剤の投与が1~3種類
の患者のうち副作用が確認されたのは6.5%だったのに対し、6種類以上では
1割強だった。
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こうしたリスクの周知を徹底すべきと思うのですが、医療機関と調剤薬局
などの意識は実際どうなのでしょうか?
よく、調剤薬局で、医師が処方してくれた薬を受け取るときに
「いかがですか?変わったことはないですか?」と聞かれます。
薬を受け取る方としては、医者に診てもらったところなんだから、なぜ薬
局で状況を尋ねられるのか、どちらかというと、疑問や怒りを覚え、応える
必要などないだろう、と思うことが多いです。
要は、医師が処方したんだから、基本的に間違いはないだろう。
なのになぜ薬剤師がまた、健康状態などを聞くのか、と思って当然ではな
いでしょうか。
もし、多剤併用のリスクを伝えたいならば、まず、薬局が処方箋を書いた
医師・医院に質問したり、注意を直接喚起すべきでは、と思います。
この記事よりももっと以前に、やはり日常的に気になっていたコトについ
て、2016/7/31付日経で、以下のレポートがありました。
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高齢者の飲み残し 年500億円
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厚生労働省によると、2014年度末時点で薬局は全国に約5万7000カ所。
うち7割が経営を1つの病院からの処方箋に頼る「門前薬局」とされる。
同省は処方箋を十分確認せず薬を出す薬局があり、飲み残しの一因に
なっているとみる。
飲み残しは在宅の75歳以上の高齢者で年間500億円に及ぶとされる。
医療費40兆円のうち、薬剤費は2割強を占める。
かかりつけ薬剤師の創設には過剰・重複投薬を減らし、医療費を少しで
も抑える狙いがある。
ただ24時間の相談対応などハードルは高い。
薬剤師は14年で28万8151人と10年前に比べ約2割増えたが、一段の増員
が必要になりそうだ。
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本当に、調剤薬局へ行くと、高齢の方が何種類の薬をもらったのだろうと、
びっくりすると同時に、大丈夫なのかと不安を感じることが多々あります。
もちろん、そこには、膨大な医療費がかかっているという心配も含みます。
また、ここ数年で2度入院経験があるのですが、痛みどめや眠剤は、言
ってもらえばすぐ出しますと、比較的簡単に?言われることが多かった
・・・。
どちらかというと、できるだけ我慢しよう、薬に頼らないようにしよう
と思う方なので、よほど辛いとき以外は申し出ないようにしているのです
が、常に薬を出してもらっている高齢患者は多いですね。
1割、3割という個人負担額は、よほどの高額医薬品でない限り、さほ
ど気にしない人が多いですね。
何より、薬を飲んでいれば安心と感じる人、あるいは、薬に頼る気持ち
が人一倍強いという人も多い。
でも、処方してもらった薬を飲まず、使わず、ムダにしてしまうこと、
本当に多いと想像できます。
一人一人の自覚に委ねるしかないのか、どうか・・・。
高額医薬品が医療財政にもたらす莫大な影響。
この課題については次回取り上げることにします。
医療・介護費が社会問題化する直接の当事者である高齢者の意識と行動。
その多くは、自己中心的であること。
ポピュリズム化した政治も当分は変わりそうもありません。
与野党ともその体質は共通ですから。
もちろん高齢者自身も御身大切の投票権行使。
意識もなく、行動も不可能な高齢者も増える一方。
現役世代と子供世代が安心できる明日・将来は、だれが創るのでしょう。
高齢者が範を示すべきなのですが、不平不満を語るのも判を押すように
この世代が圧倒的・・・。
いたずらに齢を重ねて生きてきただけの存在にならぬように・・・。
高齢世代のオピニオンリーダーが居ないことを情けなく、残念に思う昨今
です。