大きい自治体間の保育料格差。格差の根拠の違法性:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(2)

日本経済新聞社と日経BP社の共働き子育て家庭向け情報サイト「日経DUAL」
子育て支援制度に関する調査を実施。
3大都市圏の主要市区、全国の政令指定都市、県庁所在市の計162市区を対象に9~10月
に実施し147市区が回答(回答率91%)。

その内容を、公開されているPDF資料から引用転載し、紹介しています。
1回目は
少子化だが、増える保育施設需要。どう対応するか:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(1)

今回の2回目は、保育料の自治体間格差を取り上げました。

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保育料、最小と最大で5倍の差

認可保育所の保育料の上限額(0歳児一人の場合)の平均は、6万3422円。
 最大は9万3600円、最小は3万8500円だった。
 世帯年収700万円程度のモデル世帯(市区町村税所得割課税額25万円世帯)の保育料
(0歳児一人の場合)は、平均が4万6108円だった。

自治体が助成する認可外施設に通わせている家庭に対して、認可保育所を利用した場合と
の差額を補助する制度はありますか、という質問については、「助成制度がある」との回答
東京都内では多数を占めた。全体では12.2%だった。
 世帯年収700万円程度のモデル世帯の0歳児への助成額については、最大の自治体が6万円、
最小が1000円だった。
 都内では渋谷区、千代田区、中央区、港区、羽村市、台東区などが4万円以上を助成。

保育料の改定について、近く何らかの保育料引き上げを予定・検討していますか、という質問
では、「引き上げの予定はなく、当面、必要はない」という回答が39.5%。
一方、「来春、実施予定」という自治体が4.8%。

病児・病後児の保育施設の有無を聞いた質問では、「病児・病後児ともある」と回答した自治体
が68%で最多。「病後児のみ」は21.8%、「病児のみ」は6.8%、「施設はない」は3.4%。

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この結果を受けての、2016/12/6付日経の記事が以下の内容でした。

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 子育て調査から 自治体間の保育料格差 3歳未満で1.2~6.1万円
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 世帯の所得に応じて自治体が決める認可保育所の保育料。
 この調査で、自治体間の格差が浮き彫りになった。

 子ども1人の上限額を聞いたところ、月額保育料は3歳未満で9万3600~3万8500円と、
最大2.4倍の地域差があった。3歳では2.5倍、4歳以上は3.0倍だった。

 夫婦の世帯年収700万円程度、子ども1人の想定で保育料を聞いたところ、3歳未満の平均
は約4万6千円。
 最高額は兵庫県伊丹市と川西市の6万1千円、最低が東京都渋谷区の1万2400円で、その
差は4.9倍に達した。東京都は6市区が3万円未満など、安価な保育料の18位までを独占している。

 他の年齢帯では岐阜県大垣市や那覇市などが安価な程度。
 地域差は3歳では5.5倍、4歳以上では5.8倍とさらに拡大する。
 東京の多くの自治体は認可保育所に入ることができれば、安価な保育料を享受できる。


※記事中の資料を転載させて頂きました。

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東京都各区の保育料の安さ。
財政的に恵まれていることを示すものですね。
こうした要素も、施設を増やしても、入園希望者が増え続け、待機児童数が簡単に
は減らないことにつながっている・・・。
そしてそれが人口の流入にも結びつく・・・。

人口減少自治体の一部では、保育料の引き下げや無料化などで、人口の流入をはか
る例もみられるようになってはきていますが、まだほんの一握り(にも届かない。)

保育環境・条件に恵まれているだけでなく、仕事があることも条件になります。
その資源が、全国どこにでもあるという訳ではありません。

それにしても保育費用の格差、大きいですね。
本来、保育政策は、国レベルでのものであるべき。
それが、地方・地方自治体の財政的な事情で、こんなに差があるのは、格差という
より、「差別」というべきでしょう。

2人以上の子どもへの助成も国が全国共通の条件で運用すべきです。
病児・病後児の保育施設などは、やはり国が主導して各地域に整備すべきです。

今回の調査結果は、日本の保育行政の不平等性を示すものです。

不平等といえば、本来保育料は、所得に関係なく一律であるべきもの。
なんでもかんでも所得に応じて負担額が変わる、という基準は、一見平等性・公平
性を示すものであるかのように見えますが、子どもの生きる権利ということについ
ては全員平等であるはず。
親の所得には関係ないものです。

従い、病児保育や病後保育については社会福祉政策の一環として捉えるべきですが、
一般の保育は、むしろ教育政策の一環に位置付けて、今後考えられるべきでしょう。

地方自治体はどうしても財政事情が課題の判断基準になる可能性が高い・・・。
これ、どう考えてもおかしいですね。

次回は、同調査の中の「学童保育」に関するデータを紹介します。

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