保育園予約制度、待機児童解消には無関係で不公平:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(4)

日本経済新聞社と日経BP社の共働き子育て家庭向け情報サイト「日経DUAL」
子育て支援制度に関する調査を実施。
3大都市圏の主要市区、全国の政令指定都市、県庁所在市の計162市区を対象に9~10月
に実施し147市区が回答(回答率91%)。

その内容を、公開されているPDF資料から引用転載し、紹介しています。

第1回:少子化だが、増える保育施設需要。どう対応するか:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(1)
第2回:大きい自治体間の保育料格差。格差の根拠の違法性:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(2)
第3回:もう一つの待機児童問題、学童保育。いっそ教育改革で午後5時まで教育は?:日経DUAL「子育て支援制度に関する調査」より(3)

今回、最後の4回目は、政府が進めようとしている「保育園の予約制」について。
初めに、同調査の公開情報から。

--------------------------

保育園の予約制度「待機児童解消には寄与しない」

育休給付金の給付期間を2年に延ばすことは、待機児童対策に有効だと思いますか、
という質問では、「思う」が50.3%、「思わない」が11.3%。

◆保育園の「予約制度」について、待機児童解消に寄与すると思いますか、という質問。
「思う」と回答した自治体は4.8%にとどまり、「思わない」(57.8%)、
「どちらでもない」(35.4%)という意見が大多数を占めた。

 上記の「思う」の理由としては「予約制度により、予め保育士を確保する所が増え、
結果的に年度中途の受入枠も増えることにつながる」(松江市)、「保育ニーズ量が
把握しやすくなる」(神戸市)などが挙がった。

 「思わない」の理由では「定員枠は拡大するわけではない」という意見が大多数。
 「利用調整が複雑になるだけ」「必要性が高い子との逆転現象、育休を取れない世
帯の子は利用できない」という意見のほか、「実際に行っているが、待機児童には影
響していない」という意見もあった。

--------------------------------

 この問題について、2016/11/25付中日新聞で詳しく取り上げていました。
以下、紹介します。

--------------------------------

 保育園入園予約制に国も予算要求 「待機」解消効果は疑問
--------------------------------

 保育園の入園予約制導入に向け、厚生労働省は2017年度予算概算要求に保育士らの人件費
分の予算を盛り込んだ。
 予約制は、育休を一年しっかり取りたい人にメリットがある一方で、恩恵を受けられるの
は一部に限られ、待機児童の解消には役立ちそうにない

 待機児童問題が深刻な自治体では、4月に募集定員がいっぱいになり、年度途中での入園
は難しい。
 このため、例えば9月生まれの子は、満6カ月の翌年4月入園を目指すことが多い。
 予約制が導入されると、満一歳の9月に入園できるようになり、1年間の育休(産後休業
八週間を含む)が取得できるようになる。これが厚労省の説明だ。

 既に制度を導入しているのが東京都品川区や豊島区、名古屋市などで、どのように募集す
るかなどの規定は少しずつ異なる。
 品川区の保育課担当者は「育休を途中で切り上げずにすみ、その間はしっかり子どもと向
き合える」と制度の意義を説明する。

 同区が導入したのは08年度。
 育休を1年以上取得する保護者を対象に、職場復帰する月から子どもを預けられる。
 区内の認可保育園のゼロ歳児枠約700人のうち、100人を予約制に割り当てている。

 ただ、15年度には100人の枠に約500人の応募があり、入れなかった子は翌年4月入園を
目指すことが多い。
 さらに、育休の取れない自営業者や、短期雇用の人はもともと対象外という矛盾も抱え
ている。

 担当者は、入園予約を利用できるのは一部の人だけであることを認めた上で、「育休を
切り上げなくてよいのが一部の人だけなのは課題」と話す。

 名古屋市は1996年度の導入から20年が経過したが、先着順に予約を受け付ける運用を
続ける。

 市内の認可保育園のゼロ歳児3225人のうち、予約枠は約500人。
 予約できるのは出産予定日の8週前からと規定され、必然的に4、5月生まれの子が有利に
 4歳と1歳の男の子を育てる女性会社員(36歳)は「親の就労状況や、上の子がどの園に
通っているかも考慮せず、生まれ月だけで早い者勝ちになる制度はおかしい」と怒る。

 同市担当者は「不公平という声があるのは聞いている。制度変更は国の動向を見極めた
い」としている。

 06年度に予約制を導入したものの、09年度にやめたのが東京都板橋区。
 待機児童が多いため、「枠を入園まであけておくのは、入れない人が出ることにつなが
ため」としている。

 保育士が忙しすぎると問題になっている園側の事情はどうか。
 ある園長によると、親と一年間過ごした子は、園に慣れるまで時間がかかる場合が多く、
小さい子の方が園の負担は軽いという。
 ただ「小さな子を泣く泣く預けなければならない親にはメリットがある」と話す。

 保育園を考える親の会(豊島区)の普光院亜紀代表は「無理して育休を切り上げずにす
むので、誰もが確実に入園できるなら良い制度と思う」としながらも、「予約制では待機
児童の抜本的な解決にはつながらない」と指摘。
 保育士の待遇改善などを地道に続けるしかないとしている。

※記事中の資料を転載させて頂きました。

---------------------------------------

定員枠が増えるわけでもなく、処理対応が不公平で、予約できる人も限定されている。
従って、待機児童問題の改善・解消には、役に立たない。
保育の現場に携わる人たちが感じ、自治体も同様感じている・・・。

そんな分かりきっていることを政策として推し進めようとする気が知れない・・・。
運が良い人には、良い制度。
喜ぶ人が一人でもいれば、成果が出た、良い制度と評価するご都合主義。

育休期間を2年に延長しようという考えとなると、何とか働いて欲しい、早く仕事に
復帰して欲しいと活躍を願っていたはずの女性に対して、「そう頑張ることもないです
よ。しっかり子育てしてください」。
その方が入園希望が増えず、施設を増やす必要も減り、待機児童も増えないので・・・。

これも、ご都合主義。

こういう不合理が、さほど抵抗なく、受け入れられることになってしまうのは、日本
の女性も決して一枚岩ではないということです。
「保育園落ちた」で、怒りが社会全体に広がり、国を、政治を、行政を突き動かした
かのように思えたのですが、なんとか、施設と定員増の政策を強く押し出すことで、一
息ついたのか・・・・。
自治体も、国も、以前と比べれば頑張っている・・・。
心優しい日本の女性は、そう評価しているのでしょうか・・・。

第三者的に見れば、忙しすぎて、いちいち自治体・行政に抗議に走っている暇がない・・・。
そういう事情・感情もあるかもしれない・・・。

あるいは、企業内保育所設置が大きなうねりとなり、現実的に改善・解決できそうな夫婦
・世帯が増えつつあることで、我慢すべき期間が見えてきたためかもしれない・・・。

でも、やはり、めざすべきは、保育園の義務教育化。
自民党も厚労省・文科省も、そろそろ、この課題で改革を行えば、信頼度・支持度は間違
いなく上がる・・・。
小池新党が生まれるなら、これを軸にしてくれないものかと期待するのです。

%e6%af%8d%e5%ad%90

関連記事一覧