介護・医療支出に備える高齢者の増加と問題点:日経<家族の衰退と消費低迷>から(7)

2016/11/30から日経【やさしい経済学】欄で、山田昌弘中央大学教授による
「家族の衰退と消費低迷」と題した小論シリーズが掲載されました。

今年2017年は、家族と結婚というカテゴリーにも力を入れることを考えており、
軸とする新書も今、準備中です。
その前に、上の小論連載記事を紹介します。

第1回:現代の家族の変化と社会と経済との関係を読む:日経<家族の衰退と消費低迷>から(1)
第2回:戦後家族モデルの絶対化への疑問:日経<家族の衰退と消費低迷>から(2)
第3回:高度成長期の「豊かな家族生活」から、低成長期への反転で晩婚・未婚化へ?
第4回:新世帯形成力の低下と共働き世帯の変化がもたらす消費低下:日経<家族の衰退と消費低迷>から(5)(6)

今回の第5回は、連載その7、を紹介します。

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 (7)高齢者のお金は消費に回らず   (2016/12/8)
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 今回は高齢者の家族状況と消費との関連を示しましょう。
 10年ほど前、堺屋太一氏と対談したとき、堺屋さんは「これから高齢者消費の黄金時代が来る」と
言われました。堺屋さんが名付けた「団塊の世代」が退職する。資産があり、年金もまだ高水準、
時間も十分にある高齢者が消費市場に出てくるというのです。

 しかし、筆者は、欧米と違い、日本では「家族のあり方」が制約になり、次に挙げるいくつかの理
由で、お金があってもなかなか消費に回らないのではないかと疑問を呈しました。

 まず、日本では通常、家計を妻が管理しています。
 筆者の調査では、現役世帯で4組に3組の夫婦が、夫は収入を全額妻に渡し、小遣いを妻からもら
う形態をとっています。引退後も、財布のひもは妻が握るのが多数派です。
 すると、いくらお金があっても、夫は自由には使えません。団塊世代の夫婦年齢差は平均4歳で、
平均寿命も6歳ほど女性が長くなっています。平均すれば、妻は夫が亡くなった後の10年を1人で生
活しなければなりません。それを考えると、お金を夫に使わせたくないのです。

 さらに日本では夫婦共通の趣味を持つ高齢者は少なく、共通の趣味を楽しむために2人でお金を使
う夫婦は少数派です。夫婦仲も欧米に比べて良いとは言えないので、自分の趣味のために夫婦のお金
を使うと相手に嫌がられます。夫が引退後、田舎で暮らしたいと言っても、妻が反対して実現しない
ことが多いのです。

 子どもとの関係も問題になります。
 高齢者は子どもとの関係が悪化することに不安をもっています。現実に日本では、資産がない高齢
者は子どもとの関係が疎遠になりがちです。これはいい悪いの問題ではありません。
 資産がなくなったら子どもから見捨てられるかもしれないという不安があるので、自分で使わずに
持っていようという高齢者が増えるのです。

 また日本では、いざ病気や介護状態が長期化したとき、中流生活を維持しようとすれば、ヘルパー
など余分な費用がかかります。可能性は低くても、そのような状態になったときに困らないように、
お金を取っておこうとするのです。

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今回の内容は、筆者が家族社会学者であることの面目躍如、という感じです。
かなり実態を突いている。

但し、うちはご指摘の多数派ではなく、どちらかというと少数派に当たるかと・・・。
とにかく一緒に行動する機会が多いですね。
親子(家族)関係は、べたべたせず、離れ過ぎず、Facebookで家族だけの秘密のグループを持って
近況報告をしています。
(かみさんは、少し寂しげですが・・・)

そんなことよりも、やはり大きいのが、高齢者生活における介護と医療負担のリスクの増大とそのた
めの備えへの意識の強まり、です。
「介護業界は成長産業」と宣り、介護事業のM&Aを進めて業界大手になった損保会社のトップもいる
急速な介護社会の進展。

ここ数年で、『老後破産』、『下流老人』などがベストセラーになり、高齢化・長寿化のリスクが喧
伝されたことも、高齢者消費を抑制する大きな要因になっているわけです。

独居高齢者や高齢夫婦世帯の増加に反して、現役世帯、若者・子ども世代の人口の減少。
いわゆる「デフレ」の根源、「デフレの正体」ともされるその社会構造上の問題は、家族の在り方と
最も強く結びついているのは明らかです。

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そうした親の世代、高齢者世代の暮らしや意識を考えると、現役世代、若者世代が、将来になかなか
期待を持てない・・・。
そうした事態・状況において、まだ恵まれた状態にある高齢者は、まだまだやるべきことが多いはず
ですが、多くは御身大切で、シルバー民主主義の体現者として、すなわち、国政選挙におけるマスの
票田・団塊として大きな勢力・影響力を保持している・・・。

家族社会学者は、そうした高齢者意識と行動に影響を与える提言・提案をしてくれないものかと・・・。
山田氏は、白川桃子さんと共に『「婚活」時代』『「婚活」症候群』をモノにし、共働き夫婦・世帯を
現代の結婚と家族のモデルとした生き方・家族の在り方・働き方を提言し、一応話題化し、「婚活」用
語を一般用語化し、認知させ、その活動を常態化させた学者さん。

ならば、高齢者に対しても、次世代に対する先行世代の役割・責任を説く提言・提案も!
と・・・。

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実は、上に紹介した『「婚活」症候群』を用いたシリーズも以前取り上げていました。
2015/4/27の21回目で止まったまま・・・。

再開するか、新刊書を用いた結婚論に転じるか・・・。
在宅家族社会論を目指す在宅高齢者には、時間が足りないのが残念です。

 

 

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