効果が明確な保育サービスの現物給付。財政改革の壁を破る責任は?:日経<少子化対策に新たな視点>から(上)

小池東京都政における保育政策の拡充のからみで、以下の3話、連続ブログ投稿
保育所増設、利用者・保育士支援の小池都知事保育行政が促す、子育て世代の流入と女性就業者数増加
東京各区、待機児童対策で、ベビーシッター保育制度拡充:小池都政が加勢
潜在保育士をベビーシッターに。ネット仲介で活用:ポピンズ、小池都知事保育行政で事業に追い風

こうした待機児童ゼロ化政策が、女性が安心して働くことができ、夫婦世帯が
仕事と育児の両立も可能になり、経済的な不安もなくなり、第二子、第三子の
壁をクリアし、少子化にも歯止めがかかり、出生率も改善が見られるように・・・。

そう簡単に、食物連鎖みたいに行くはずはないです・・・ね。
むしろ、逆により少子化の方向に向かう可能性さえある、かもしれない・・・。

まあ、何事も、近視眼、短期的にみてはいけませんが・・・。

そんな折り、2017/2/7付、同2/8付日経【経済教室】欄に「少子化対策に新たな視点」
というテーマで、2回小論が掲載されました。

新しい視点での少子化対策?
そんな手立てが果たしてあるか・・・。
2回連続で紹介したいと思います。

1回目は、小塩隆士一橋大学教授によるものです。
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 「少子化対策に新たな視点」(上):
 現金より現物給付の充実を 保育サービスの拡充急げ 
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日本の合計特殊出生率(女性が生涯に産む平均的な子どもの数)は2015年に1.45と
なり、回復基調にあるもようだ。
 しかし米国、英国、フランスなど出生率が1.8を超える先進国もいくつかある。
 日本の経済社会が現在直面している少子高齢化の圧力が、すべての先進国で共通
みられるわけではない。

 少子化対策としての子育て支援は、児童手当などの現金給付と、保育サービスなど
現物給付に分かれる。
日本の子育て支援の規模は、国際的にみればいずれもかなり見劣りする
出生率の高い先進国の経験を踏まえると、とりわけ現物給付に力点を置いて子育て
支援を大幅に拡充すべきだと筆者は考える

 安倍政権が掲げる「ニッポン一億総活躍プラン」では、1.8という出生率の実現を目
指している
そこで米英仏など、14年時点の出生率が1.8以上の先進8カ国(高出生国)と日本の
間で、出生率や子育て支援がどのように違うか簡単に比較してみよう。

 図からまず確認できるのは日本だけでなく、高出生国でも出生率の低下に歯止めが
かかっているという点だ。
もちろん国ごとに違いはあるが、平均的にみると出生率は1990年代後半に底入れし
ている。
08年の国際金融危機後の景気低迷の影響もあり、最近では頭打ち傾向にあるが、そ
れでも少子化にはブレーキがかかりつつある。
もっとも、高出生国の場合は、80年代以降の出生率の低下幅そのものが日本に比べ
て小さいという点にも注意が必要だ。

 一方、日本でも出生率は反転しているが、底入れの時期は高出生国より遅く、水準
もかなり低い。この差はどこから来るのだろうか。
女性の働き方を取り巻く環境はそれほど違わない。
13年の15~64歳の女性の就業率は、高出生国の平均が67%に対し、日本は62%程度
とやや低いが、それだけでは出生率の差を説明できない。
賃金の男女間格差も日本だけの問題ではない。

 女性就業は出生率にプラス・マイナス両方の影響を与える。
所得を増加させるという点ではプラス要因だが、出産・子育てが就労・所得獲得の
機会を奪うとすればマイナス要因となる。
日本の出生率の低さは、マイナス要因がほかの先進国より大きいということでかな
り説明できそうだ。

 出産・子育ての機会費用は子育て支援のあり方に大きく左右される。
経済協力開発機構(OECD)は、各国政府による様々な公的サービスを「社会支
出」という概念でまとめ、そのうち子育て支援は「家族関係社会支出」のカテゴリー
で把握している。
同支出は現金給付と現物給付に二分される。
図では、2種類の子育て支援の国内総生産(GDP)比率の変化を出生率の動向と
併せて示している。

出生率コドモ支援
※記事中の資料をそのまま転載させて頂きました。


ここからまず確認できるのは、日本の子育て支援の水準の低さだ。
ここ数年は増加傾向にあるが、GDP比は13年でも1.3%にとどまる。
高出生国では80年時点で1.6%と日本の現状を上回っており、13年には2.9%に達して
いる。この間、女性就業は高出生国でも日本と同じようなペースで進展している。
従って高出生国の出生率が日本ほど落ち込まなかったのは、出産・子育ての出生抑制
効果を子育て支援による出生促進効果が上回ったからだ、というのが素直な解釈だろう。

 次に、子育て支援の中身やその変化の様子が大きく異なる。
日本では10年以降、家族関係社会支出が急増しているが、そのかなりの部分は現金給
付の増加で説明できる。
これは10年度に「子ども手当」が創設され、その後も児童手当という形で子育て支援
に対する金銭的な支援が拡大されてきたからだ。
しかし出生率が底を打ったのは05年だから、子ども手当など現金給付の急増がそのき
っかけとなったとは考えられない

 高出生国も日本の水準を大幅に上回る現金給付をかなり前から実施してきた。
しかしそれ以上に注目すべきなのは、子育て支援の重点が90年代前半以降、現金給付
から現物給付に大きくシフトしている点だ。
図からも分かるように、高出生国での過去約30年間の子育て支援の規模拡大のうち、
そのかなりの部分が現物給付の増加で説明できる。

 政策効果の厳密な検証は別の機会に譲るしかないが、高出生国で90年代後半に出生率
の低下に歯止めがかかったのは、それ以前から始まっていた子育て支援の現物給付シフ
トによるものだという説明もできそうだ
日本でも現物給付は徐々に充実してきており、出生率の反転はその影響を受けている
と考えられる。

 00年代に入ってから、女性の就業率が高い国ほど出生率が高くなる傾向がみられるよ
うになっている。
その事実を受けて「女性就業が高まれば出生率が上向く」といった議論も一時期聞か
れた。
しかし同じ時点で観測される相関関係からそうした因果関係を主張するのは科学的で
はない。
実際、日本の経験をみても、少なくとも05年に出生率が底入れするまで、女性の就業
率の上昇と出生率の低下は同時並行的に進んできた。

 その一方で、女性就業と出生率の関連をはじめから否定することも科学的ではない。
女性の就業率が上昇すると、政府に対して子育て支援を要請する声が社会的に強まる。
それを受けて政府が子育て支援を拡充することにより出生率が回復する、という経路
も十分考えられるからだ。問題はこうした経路が実現するかどうかだ。

 先進各国のデータを具体的に眺めると、現金給付は女性の就業率とプラスの相関関係
にあるが、その関係はそれほど密接でないことが分かる。
興味深いのはむしろ現物給付のほうだ。
女性の就業率が低い段階では、現物給付は小さな規模にとどまる。
しかし就業率がある水準以上に上昇すると、増加局面に入る傾向がある。
つまり女性の就業率が十分高くなると、現物給付が拡充して出産・子育ての機会費用
が低下し、女性就業の所得面を通じたプラス効果が前面に出てきて、少子化傾向にブレ
ーキがかかり始める。

 図からは、高出生国での現物給付への重点シフトと、その後の出生率の反転が確認で
きる。背景にはそうした経路が働いていると推察される。

 国の内外を問わず、出産・子育てを念頭に置くカップルからみれば、生まれてくる子
どもの世話を一体誰が担うのかが差し迫った問題となる。
とりわけ共働きカップルにとっては、少しぐらい児童手当を受け取れたとしても問題
は解決しないだろう。
保育サービスが容易に利用可能になってこそ、出産・子育てに踏み切れるケースも多
いと考えられる。
仕事と出産・子育ての両立のためには、お金より保育サービスの供給が重要だ。

 最近では「待機児童ゼロ」を求める声が強まり、子育て支援が政府の取り組むべき最
優先課題となっている。こ
これは日本でも、女性就業の高まりやそれに伴う社会的な変化が、子育て支援の拡充を
強く要請する段階に入ったことを意味する。この点では状況は高出生国と大きく違わない。

 しかし高出生国はその要請に応えて制度改革を推進し、高い出生率を維持できた。
日本はどうか。出生率の回復を目指すのならば、高出生国の経験が貴重な教訓となる。
保育サービスの拡充など現物給付中心の子育て支援を大幅に引き上げ、回復の兆しを
みせている出生率の上昇を持続的なものにする必要がある。

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小塩隆士一橋大学教授:60年生まれ。東京大教養卒、大阪大博士(国際公共政策)。専門は公共経済学

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現金給付、いわゆるバラマキ政策がうまくいくはずがないは分かりきっているはずな
のに、低所得高齢者向け生活補助、地域振興対策などで、政府がやることは、バカの一
つ覚え・・・。

意図・目的通りに、出した額通りの支出・使途が見られ、効果が上がったのか、追跡
・分析不明のはず。
マスターべーションにしか過ぎません。

子育て政策においてもそうです。
現金支給しても、子どものためにだけに使われているのかどうか・・・。
いわゆる家計に紛れ込んで、親のビール代の方に回ってしまったかもしれない。
ママ友の集まりの飲食代に化けたかもしれない・・・。
などというゲスの勘ぐりは必要ないですが・・・。

現物支給であるべき。
とりわけ筆者が発見・発掘した手法ではなく、いうならば、常識的な、当然の方策です。
間違いなく、具体的な行動に対して、対象となるサービスを提供するサイドにお金が直
接回っていくわけですから、親・保護者の懐・財布、銀行口座は経由しない。
間違いなく、利用者は、そのサービスを受けることができる。
無料、もしくは、一部負担で。
そして、それは利用しなければ、メリットがないため、世ほどの理由がない限り必ず利
用する、メリットを享受できる。

とまあ、一般的な人のココロをベースに考えれば、そういうもんでしょう、と、これ自
体感覚的なものですが、数字上でも、そうしたサービスを利用する人数、件数で検証でき
るはずです。

学者さんの研究は、こうした海外諸国の長期にわたっての集計データ分析を比較活用し
て、その合理性を主張するのですが、制度・政策導入時に、学者が存在してその政策を提
言・提案したわけではないのであります。
すべて、それ相当の年数を経過して後の推測的分析であって、「と思われる」論の域を
出ません。

いまここで現物支給する。
そこで、利用者数がすぐ集計・把握でき、効果・成果が測定・評価できる。
予算支出実績と合わせて。
実は、最も単純な政策なのです。

が、もちろん、実際のところ、その実施・導入は単純ではない。
すなわち、その原資をどこから捻出するか・・・。

「日本の子育て支援の規模は、国際的にみればいずれもかなり見劣りする。
出生率の高い先進国の経験を踏まえると、とりわけ現物給付に力点を置いて子育て

支援を大幅に拡充すべきだと筆者は考える。」

そう筆者に限らず、どなたも指摘される。
別に、他の先進国がどうこうは、ここでは関係がないのです。
要は、そのためのコストを、財政赤字の現状において、どこから持ってくるのか。
望ましい政策を口に出すのは簡単ですが、その壁として、常に財政問題が立ちはだ
かる。

ゆえに、それを考えるのは本来、首相を含め、政治家と官僚の役割・責任なのです
が、彼らは「一億総モラトリアム社会」のリーダーゆえ、まったくもって期待できま
せん。いわゆる既得権主義と縦割り主義の壁が、厚顔よりも分厚く、トランプが建て
ようとしているメキシコ国境の壁よりも高い・・・。

赤字国債の発行を削減しつつ、どの支出を減らして、保育行政・保育サービスの現
物給付のための原資に持ってくるか。
合理的で、多くの国民の納得・合意を得られる新しい財政配分を考え、提示し、立
法化し、具体化する。
その仕事、研究者もやって欲しいのですが・・・。
本来、政党の仕事であること、そして、本質的には、行政・官僚・国家公務員の仕
事であることは、再度、確認した上のことです。

安倍さんの考える政治では、決して優先順位が高くない課題、でしょうね。
まずは、小池東京都知事に少しでも風穴をあけて欲しいところで、その可能性は、
このところのブログでも取り上げてきています。
でも、豊洲問題がもしかしたら、それらの財政的な障害になるリスクがないでもない。
 彼女の責任ではないのですが・・・。

そして、そうした理想的な政策・制度が、果たして少子化に直結するか、どの程度の
成果をもたらしうるか・・・。
それは、時間のみが評価・証明しうることであり、保証されるものでもありません。
大切なこと、評価されるべきは、その結果ではなく、そうした政治・行政を行った
ことにある。
そのサービスを利用・享受できた国民・住民がいて、望ましい暮らし・生活をおくる
ことができる、そしてできた。
それでまずは十分ではないのではないでしょうか。

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