日生・ニチイ学館が共同で企業型保育所100カ所開設:企業と社員の密接な関係、大企業で新段階に

2017/2/17付日経

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 保育所新設 企業が主導
 日生・ニチイ学館が100カ所
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 日本生命保険とニチイ学館は共同で保育事業を展開する。

国が民間の力も借りて保育サービスを提供する「企業主導型保育事業」で、
運営会社と事業会社が組んで大規模に展開するのは初めて。
一部で同じような取り組みが出てきており、全国で2万人超とされる待機
児童の解消に一歩近づく。

 両社は4月上旬に31カ所、7月初旬までにさらに17カ所の保育所を開設。
この段階で受け入れ児童数は約850人となる。
2018年春には100カ所程度まで広げ、児童数も約1800人に増やす。
札幌や東京、名古屋、京都、大阪、福岡など全国の主要都市を網羅する。

 企業主導型保育事業は待機児童の解消をめざす政府の肝煎り施策で、昨年
5月に事業者の募集を始めた。
保育最大手のJPホールディングスは資生堂と組み、保育所を運営する共
同出資会社を月内にも設立。
まずは資生堂の従業員向けに開放するが、今後は他企業の運営受託もねらう。
ポピンズも4月までに企業主導型を活用した保育所を13カ所つくる計画だ。

 日本生命とニチイ学館は1年程度で100カ所程度の保育所を新設する計画。
これまで明らかになった同制度の活用策としては最大規模となる。
保育所は待機児童の集中する0~2歳児が対象。
利用料は全国一律で、0歳児が月3万4300円、1~2歳児で月3万4200円で調
整している。
 認可保育所の利用料は市区町村や世帯年収で異なるが、ほぼ同等の水準に
なるという

 大きな特徴は日本生命がニチイ学館から保育所の利用枠の約半数を押さえ
点。
日本生命は全国に約5万人の営業職員を抱え、女性が大半を占める。
人手不足で新規採用が難しく、子どもを抱える女性が働きやすい環境を整
えることで採用を他社より優位に進めたい考えだ。
自社のビル内に保育所を誘致することも検討している。

 介護では最大手のニチイ学館は保育所を現在約120カ所展開し、さらなる
拡大をめざしている。
日本生命との共同展開は、児童数が定員に届かず低採算となるリスクを抑
えられ、事業を安定的に展開しやすくなる。
こうした事業モデルが定着すれば運営側は事業収支の見通しが立ち、慢性
的な保育所不足の解消にもつながる可能性がある。

 日本生命とニチイ学館による利用枠は地域ごとに異なるが約半数とする予
定で、それ以外の分については近隣の住民が利用できる
保育所内でニチイ学館が展開する子ども向けの英会話レッスンを取り入れ
るなどサービスの充実もはかる。

 厚生労働省によると、昨年4月時点の待機児童は全国で2万3553人と2年連
続で前年を上回った。
政府は17年度末までに解消を掲げるが道半ばで、認可保育所を望んでも入
れない「隠れ待機児童」も6万5000人以上にのぼるとされる。

待機児童数
※記事中の資料を転載させて頂きました。

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「企業主導型保育事業」とは? 待機児童解消へ補助

企業が従業員の福利厚生の一環として、主体となって保育所を設置する事業。
 政府は待機児童を解消するため、2016年度から補助金制度を始めた。
 施設が保育士の配置など一定の基準を満たせば設置企業は認可保育所並みの
補助金が受け取れる。2月8日時点で約500カ所の助成が決まった。

 企業主導型は自社の従業員の子どもが優先的に入所できる
 複数企業での共同設置や、利用定員や利用負担を契約することも可能。
 全体定員の半分までは地域住民に保育所の空き定員として提供することもできる。

 通常、政府から補助金が出る保育所は地方自治体の認可が必要。
 認可施設には職員数や設備の面積に細かい規定があり、すべてをクリアしなけ
れば設置できない。
 企業主導型には自治体の関与がないため、設置が比較的容易だ。
 内閣府が定める企業主導型保育所の設置基準も認可保育所より緩い基準になっ
ている。一方で有識者の一部からは保育所の安全性を懸念する声もある。

企業型保育所
※記事中の資料を転載させて頂きました。

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大手事業の人材囲い込み政策が、社員にとっては福利厚生制度の充実と一体となって
急速に進められていく。
そんな状況を示しており、これが、政府が取り組む待機児童ゼロ化政策と女性活躍推
進ともピッタリはまり、いいことづくめ。
まさに企業頼みの新たな社会福祉政策が、開花しつつある・・・。

資生堂の取り組みについては、以下で取り上げました。
資生堂、JPHDと合弁で事業所内保育事業会社設立:顧客・社員女性主体企業の責務と期待 (2016/11/18)

自治体関与の認可保育所よりも設置基準が緩いので安全面での不安がある、とのこと
ですが、企業サイドとしては、事故があっては社員に示しがつきませんし、組む相手
が保育大手企業ですから、反対に自治体関与の施設よりも、質が高いサービスを受け
ることができそうな気もします。

子どもの送迎が、勤務地と同一ならば、安心と合理性が。
残業や時短などへの対応も柔軟にしてもらえそう・・・。
やっぱりこちらに優位性がありそうです。

お父さんの育休・イクメン化も含め、企業と社員との蜜月のあり方、大企業を中心に
新しい時代・局面に入っていきそうです。
中小・零細企業、個人事業との格差が、その裏で拡大しつつ・・・。

 

 

 

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