マミートラックから脱出し、育児・仕事の両立実現:在宅勤務、フレックス勤務制を会社一丸で

前回は、企業への所属から抜け出し、フリーで働く女性の働き方と生き方、育児
を含む暮らし方について、日経記事から紹介し、考えてみました。
経験・能力の高い女性が、在宅勤務やフリー契約で柔軟に働ける時代・社会に

今回は、企業に籍を置き、働くママとして自分を活かしつつ、仕事と育児を両立さ
せる働き方について、2017/3/13付日経の以下のレポートを紹介します。

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 ママの働き方 会社一丸で改革
 在宅勤務使いフルタイム 望むキャリア誰にでも
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育児中の女性が補助的な仕事ばかり与えられ意欲を失う例は少なくない。
 こうした「マミートラック」が生まれる要因の一つには、長時間労働を是とする
働き方がある。
 それに気づいた企業では、組織全体で働き方改革を進めている。

マミートラック
※記事中の資料を転載させて頂きました。

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周回遅れの日航のショック

「あなたたちの女性活躍推進は3周遅れよ」。
 2012年に社外取締役に就任した岩田喜美枝氏の言葉に、日本航空は虚を突かれた。
 新卒で採用された総合職女性のうち30代で残っているのは3割。
 残り7割は退職していた。
 経営破綻を乗り越えたという特殊な事情はあるが、それでも高水準。
 社員の5割を女性が占めるが管理職女性は15%。
 社員の半数を活用できていない現状に「経営上の危機」との認識が広まった。

 それまで同社が進めてきたのはベビーシッター費用の補助などで、復職後に安心
して職場に戻れるような働き方そのものを整える支援が不十分だった。
 時間のない育児中の女性に対し、上司は気遣いも込めて負担の少ない仕事を回し
がち。
 長時間労働が常態化した職場では、すぐさま連絡がとれない育児中の女性に重要
な仕事は任せられないという判断もあった。
 結果、「30歳前後の重要な時期にキャリアを積めず管理職に昇進できない『マミ
ートラック』に陥りがちだった」(人事部アシスタントマネジャー久芳珠子氏)。

 「多様な人材の活躍推進こそ、競争に打ち勝つための経営戦略」という方針のも
と、同社が進めたのは長時間労働からの脱却だ。
 紙の書類を廃止しすべてクラウド化。
 端末さえあればどこでも仕事ができるようにした。

 14年開始の在宅勤務の利用者の7割が男性で管理職では3割。
 「女性だけでなく誰もが当たり前に制度を利用できることが重要」と語る。
 制度を活用する調達本部の近藤明香さん(35歳)は「育児と仕事の両立には現場
の上司の理解が不可欠。上司も在宅勤務を利用しており、理解が得やすい」という。

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先進の日産

 日本企業の多くでは、育休復帰後にフルタイムに戻れるかどうかは「本人の意識
の問題」とされることが多かった。
 これに対し「女性だけの働き方を変えても意味がない」と語るのは、日産自動車
ダイバーシティディベロップメントオフィス室長の小林千恵さん。

 日産では在宅勤務制度やフレックス勤務制度の拡充を進める。
 育児や介護などの事情がある社員に限定していた在宅勤務制度を10年に全社員に
適用。
 15年に1日8時間労働を意識する「ハッピー8」を全社員に徹底しコアタイム無
しのフレックス制度も導入
 在宅勤務は今年度約5000人が利用し、年休の取得も1人平均18日以上と日本企
業でトップクラスだ。

 「育休復帰後に時短勤務を選択していたら、今の働き方は実現しなかった」。
 こう語るのは、グローバルアフターセールス事業本部の福田りささん(38歳)。
 2歳の子どもを育てながらフレックス制度や在宅勤務制度を活用しフルタイムで
働く。
 夜6時に保育園に子どもを迎えに行き世話を終えた夜9~10時にかけて、豪州や
米国などとやりとりをしながら勤務を続ける。

 福田さんは妊娠中に上司に勧められて受験した昇格試験に合格
 育休からの復帰と同時にアシスタントマネージャーに昇格した。
 産休・育休を控えたタイミングで昇格試験を勧める背景には「会社から期待を伝
える意図がある」(小林室長)。
 福田さんは「妊娠中でもチャンスをもらい、ありがたかった」と語る。

日産自動車の福田さんは働き方に裁量があれば時短勤務せずにすむという
※日産自動車の福田さん

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SCSKの革新

 「時短勤務時代は子どもにも周囲の社員にも負担をかけていると感じた」。
 こう振り返るのはSCSK基盤インテグレーション事業本部の馬場綾さん(36歳)。
 3児の母だ。
 同社は15年から自宅やサテライトオフィスでの勤務を始め、社員1500人を対象に
月3回以上の社外勤務を推奨する。対象を広げ17年度には全社員に適用する。

 15年度の残業時間は平均月18時間。
 ノー残業が当たり前になるにつれ、育休から復帰した社員がフルタイムでの勤務
を希望するようになった
 フルタイム希望者は16年度は25%と、3年前と比べ9ポイント増加。
 残業をしたくないから時短で働く社員もいたが、定時で帰れるようになり必要の
ない時短勤務は無くなった。

 「子どもの病院や、学校の役員会があるときは、在宅勤務や1時間単位でとれる
有休を活用する」。
 会議は部内の全員が自宅や客先などからビデオ通話ソフト「スカイプ」で参加す
ることも珍しくない。今では在宅勤務について「全く引け目は感じない」という。

SCSKの馬場さんは職場の全員の理解があれば在宅勤務もしやすいと話す
※SCSKの馬場さん
双方とも記事中の画像を転載させて頂きました。

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〈取材を終えて〉トップの号令、欠かせず

 働き方改革には何が必要か。
 取材する中で頻繁に聞いたのが「トップのリーダーシップがものをいう」という
言葉だ。
 従来の働き方で成果を出してきた社員からの反対を押し切る力なしには改革は
難しい。
 SCSKも、中井戸信英元会長(現相談役)の旗振りがあってこそ。
「業績が下がっても構わない。社員が健康に働ける環境が第一だ」と語り改革を
断行。2012年から取り組み、残業時間は半減。
 日本航空も「在宅勤務といいながら勤務時間内に遊ぶようになったらどうする」
との反対を押し切ったのは植木社長だ。

 気になるのは業績への影響だ。
 生産性が一定なら社員の労働時間が1時間減れば1時間分の収入は目減りする。
 労働時間減をカバーするには業務効率化など生産性向上の取り組みが欠かせない。
SCSKでは当初、業績下落が懸念されたものの改革後は右肩上がりで業績は伸び
た。懸念は杞憂に終わった。

(山本紗世記者・執筆)

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もう一つは、それを継続して可能にするために、一定の収益や生産性を確保する
こと。
こちらは、個人で働くにせよ、組織で働くにせよ不可欠な要素です。

前者での要件を、企業などの組織に身を置く立場に替えても、それが可能になる。
個人の裁量性と企業の寛容性、顧客との関係の調整可能性。
それらの相互のすり合わせが、支障なく調整され、実行可能にしていくことが、
<働き方改革>の取り組みになるわけです。

労働力人口の減少傾向が続き、現在と将来に必要な人材を少しでも確実に確保し
ておくことが企業の至上命題になりつつある今。
柔軟な働き方を実現していくことは、人材の確保だけでなく、生産性・収益の向
上、コスト削減など、まさに働き方を変えることと直結するプラス効果を具体化す
ることと一体のものと言えます。

育児や介護という個人の生き方・暮らしの事情と働くことの両立。
それは、女性としての生き方と自己実現、企業への貢献、社会貢献などとも重な
りあう、欲張りですが、ワクワクもする目標・目的になってきていることを意味し
ます。

高め合う企業と個人、そして女性。
その望ましい在り方も視野に入ってきていると感じます。
男性は取り残されないようにしなければ・・・。

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