仕事か結婚か、仕事か家事か。作業と憩いが混然とする共働き社会

結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(筒井淳也氏著・2016/6/20刊)
を参考にして、結婚と家族を考えるシリーズです。

「第4章 「男女平等家族」がもたらすもの」

第1回:成人親子未分離社会で、未婚化・非婚化はどこへ向かうか
第2回:ミレニアル世代、ブーメラン・キッズ。欧米と共通するパラサイト世代
第3回:「結婚、出産が当たり前でない」という理由付けが得意な人間の理性・知性
第4回:共働き先にありきではない、同棲・結婚・家族形成という人生の選択肢
第5回:出生率が高くなる共働き会に落とし穴?
第6回:トランプ政権で厳しくなる不法移民のベビーシッターやナニー活用の行方
第7回:ナニー、ベビーシッター活用に見る文化の資質性と問題点
第8回:共働き夫婦に必要な家事・育児等家庭作業の分担決め

今回は第9回です。

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 第2節 家庭が(再び)仕事場に? (2)
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161~164ページの内容の一部を加工整理し、引用しています。

「家庭と仕事の世界の逆転」

共働き社会が進展していった結果、「家庭と仕事の世界の逆転」ともいうべき
現象が見られるようになった、と論じたアメリカの社会学者、アーリー・ホック
シールドの考えを紹介して、こう述べています。

 アメリカの共働きカップルのなかには、家族のための作業が苦痛な仕事になる
が、他方で稼ぐための仕事はむしろ楽しい、という逆転現象を経験
しているケー
スがある

 かつて、家が経済活動の拠点であったときは、そもそも仕事の領域とプライベ
ートの領域のどちらが憩いの場なのか、といった問いが成立しなかった
◆これが明確に分離したのが、「男性稼ぎ手+専業主婦」の時代であったのだが、
現代の共働き社会では、再び「作業」と「憩い」が入り混じってきたのかもしれ
ない。

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※次回は、<いざというときのセイフティ・ネット> です。

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日本でも、労働力の減少が招く労働力不足・人材不足に備えるべく、福利厚生制度
に力を入れる企業が最近増えてきました。
そこに働き方改革というスローガンが加わり、企業と社員との関係の新たなあり方が、
できていくのではと思われます。

そしてそれは、夫婦・家族のあり方の変化にもつながっていくでしょう。
企業や組織で働くことを前提とした、働き方改革や福利厚生制度。
その前提条件における、家庭と仕事の世界の逆転。
やはり、結婚と家族のあり方の変化は、必然になるのでしょうか。

とりわけ、女性が働くことで得る収入と、仕事とその成果に対する達成感、自己実現感、
社会的貢献感等の効能・効果には、実は計り知れないモノ、コトがあります。
加えて、非正規雇用、上がらない賃金などの不安定要因からの夫、男性サイドの結婚や
家庭に対する忌避感・不安感。
それらが、家庭と仕事の関係の不安定化につながっていく・・・。

恋愛や性愛という、人間の根源的な願望や欲望が、強制力と魅力という相反する性質を
もったこれも人間としての根源的な営み。
そうした小さな社会を形成し、時間と空間を共有することで得る、承認・信頼・愛情と
いう精神的な効果・効能。
それらが追いやられてしまう、あるいは、意識の外、価値観の外に追いやってしまう。

自由な選択には違いないのですが、多様な生き方を認識し、さまざまの想定をした上で
の選択なのかどうか・・・。
思い、思うところは、「びみょう~」なのであります。

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文中のホックシールドとは、Arlie Russell Hochschild
1983年出版の『管理される心―感情が商品になるとき』において、「感情労働」
という概念を提唱した社会学者です。

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(参考)
「『フランスはどう少子化を克服したか』から」シリーズ
潜在保育士をベビーシッターに。ネット仲介で活用:ポピンズ、小池都知事保育行政で事業に追い風 (2017/2/8)

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【『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』構成】

はじめに
第1章 家族はどこからきたか
第2章 家族はいまどこにいるか
第3章 「家事分担」はもう古い?
第4章 「男女平等家族」がもたらすもの
第5章 「家族」のみらいのかたち
あとがき

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【筒井淳也氏・プロフィール】
◆1970年生まれ。一橋大学社会学部卒業、同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
 博士(社会学)。現在、立命館大学産業社会学部教授。
 専門は家族社会学・計量社会学。
◆著書:『制度と再帰性の社会学』『親密性の社会学―縮小する家族のゆくえ
仕事と家族 – 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』など。

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(参考)

一昨年投稿の『「婚活」症候群』(白河桃子・山田昌弘氏共著・2013/7/20刊)
を参考に、「結婚」と「婚活」を考えるブログシリーズ。


第1章【「婚活」流行の背景と影響】(山田昌弘)
第1回:「
婚活」ブームがもたらした認識の変化「結婚できない不安
第2回:「婚活」が恥ずかしいことではなくなった時代の幕が開いて
第3回:『「婚活」時代』の誤算、恋愛抜きの結婚願望?
第4回:希望年収600万円以上の適齢期の未婚男性5.7%の狭き門への戦い

第2章【「婚活」の誤解と限界】(白河桃子)
第5回:結婚に対する意識の変化を提案した『「婚活」時代』が生んだ誤解
第6回婚活公認で女性がポジティブに。そして婚活未成就の負のサイクルが?
第7回婚活ブームは「再婚活」「晩婚活」を呼び、婚活格差を招いた?
第8回:「釣り堀婚」「価格.com婚」そして「ロトくじ婚」?
第9回結婚相手を選ぶ意識の変化以前に必要な、結婚への意識・考え方
第10回:強い女子力でも困難になった婚活時代は自活女子をめざす時代
第11回:「自活女子」「自活男子」化で一億総モラトリアム社会から脱却
第12回:社会的不妊と少子化を招く社会的不婚・未婚化改善のための働き方改革
第13回:「婚活」から「妊活」へは自然な流れ?

第4章【限界を突破するには】
第14回:
婚活を成功させるために必要な女性・男性・社会の変化を考える
第15回婚活成功のための女性の変化の条件「自活女子」とカップルのあり方
第16回:妊活・妊娠・出産を起点にして考える婚活・結婚
第17回:婚活もマーケティングと同じ法則。絞り込みで成功する婚活<女性編>
第18回:男性も変わるべき婚活時代・婚活戦線。女性の要望に応えられますか?
第19回:恋愛感情を相互の愛情に育てていけるか、結婚への道?
第20回:どうする異性観・セックス観の違いと草食系男子の面倒観ギャップ
第21回:2013年と変わらない安倍政権下の婚活をめぐる社会事情

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Ameblo から転載し、メモを追記して投稿した「結婚、してみませんか」シリーズもあります。

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