
期待の企業主導保育所に立地ミスマッチ:高コスト都市部への設置困難等どう対応するか
待機児童ゼロ化の切り札のように頼みにされている「企業主導型保育所」。
ところが、現実はそう簡単に運ばないというレポート
2017/4/24付日経で、以下のテーマで伝えられていました。
一部省略・修正して紹介します。
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企業主導保育所 立地ミスマッチ
都市部、賃借料高く進まず 3割が待機児童ゼロ地域
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政府が待機児童対策の柱に据える「企業主導型保育所」の整備が子供の多い
都市部で進まず、待機児童(16年4月2万3553人)が「ゼロ」の地域にできる
ミスマッチがおきている。
設置が決まった約2万人分のうち、待機児童が集中する地域にあるのは約4割。
ほぼ3分の1が待機児童ゼロの自治体にあった。
なぜニーズがあるはずの場所で保育所が増えないのか。
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企業主導型保育所は、企業が主に従業員の福利厚生のために設ける施設。
保育士数や定員などの要件が認可保育所に比べると緩く、設置しやすい。
政府は2016年度に企業主導型に対し整備と運営にかかる費用を認可保育所
並みに補助する制度を設け、企業は整備費の4分の1、運営費の5%程度の負担
で設置可能に。
17年度末までに、企業主導型だけで5万人分の受け皿の確保をめざす。
設置が決まった企業主導型の受け入れ枠のうち4割は待機児童が50人以上い
る地域で、大半は「緊急対策地域」とされる場所。
残りは50人未満。約3割6501人分は、都市部から外れた待機児童ゼロ地域に
立地することがわかった。
このミスマッチ。
企業主導型保育所、実は待機児童が多い都市部でつくりにくい。
理由の一つは都市部の高い賃借料。
東京都23区などの賃借料が高い場所はコストがかかり、国からの補助金だけ
では運営できないことが多い。
人件費も大きい。保育士の賃金(きまって支給する現金給与額)は青森県の
平均が月給約19万円なのに対し東京都は24万円。
企業主導型に独自で運営費を補助する都市部自治体はなく、自己負担は重い。
企業主導型は定員の半数を従業員の子供で満たすというルールも壁。
「満員電車で子どもを抱えて都心を行き来するのは難しい。できるなら地元
で預けたい」保護者も多い。企業が都心のオフィスに近い場所に保育所を設け
ようとしても、子供を連れてくる従業員がある程度見込めなければいけない。
また、数字に表れない「隠れ待機児童」は待機児童数の3倍約6万7千人。
「ゼロ」地域にも新たに企業主導型ができれば、隠れ待機児童や入所を諦め
ていた子どもが通えるようになることもある。
無理をして遠くて不便な場所の保育所に通っている子どもが、より便利な場
所に通えるようになるケースもある。
企業主導型にはそれら隠れた需要に対応している面がある。
が、最も問題が深刻な都市部につくりにくいというのは、大きな問題。
「都市部はコストが高く、企業主導型保育所は国の補助だけでは運営できない。
足が出る分は自治体が補助すれば増えるはずだ」と指摘する声もある。
ただ「民」の力で保育所を増やすというのが企業主導型本来の趣旨。
できるだけ国民負担を増やさずに、いかに工夫して受け皿を増やすか。
難しい課題に直面している。
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公営・公立化するのをさぼって、どんどん民営化を図ること自体が、保育行政
の誤り、怠慢。
企業主導型保育所も、本質的には公営・公立があるべき形。
そもそも、現状の保育行政において、保育士の賃金の一部を国・行政が負担し
ているのですから、準公務員かすべきというのが私の提案。
加えて、保育園義務教育化と無償化を、真剣に議論する状況になりつつあるの
ですから、荒唐無稽の話でもない・・・。
◆小泉進次郎参加特命委提案「こども保険」による幼児教育・保育無償化コストは1.2兆円:内閣府試算
企業主導型保育所の立地ミスマッチは、大都市でのラッシュアワーを考えれば、
子どもの送り迎えに難があり、起こり得ることは想定すべく、想定できたこと。
従い、働く場所と保育施設が同一の場所にあることは、理想ではあってもムリ。
それが不自由・不都合となる場合もある・・・。
その改善・解決法の一つが、最近事例も見られる、駅周辺への保育施設の開設。
もちろんそれに適した場所・物件が少なく、コストも高いことが予想されます。
都市部の私鉄沿線の駅近辺。特定の企業向けでないだけに、幅広く利用者を募
ることができるのですが・・・。
協力してくれる私鉄企業等に対して、法人税・固定資産税などの減免措置を講
じるのもありではないかと・・・。
働き方改革を掲げるなかで、保育所開設と待機児童ゼロ化の制約となる諸条件。
まだまだ知恵を出せば、克服できると思うのですが・・・。