
幼児教育無償化、専門家グループも提言の一本化を:子ども保険制度と保育無償化をめぐる議論(4)
少子化や待機児童問題などの困難な課題の改善・解決に関係する「子どもの保育・
教育の無償化」問題。
今年の3月に発表された「こども保険」制度の導入によるその政策提言が、いよい
よ現実味を帯びてきました。
◆自民党若手議員小委、「こども保険」創設で社会保険制度化提案:義務教育無償化を幼児教育にも拡大して (2017/3/31)
◆小泉進次郎参加特命委提案「こども保険」による幼児教育・保育無償化コストは1.2兆円:内閣府試算 (2017/4/25)
という段階から、2017/5/30付日経掲載の記事をベースに書いたのが
◆骨太方針原案に、子どもの保育・教育費用無償化。子ども保険等年末までに結論指示:子ども保険制度と保育無償化をめぐる議論(1)
同日同紙に掲載された4人の識者の意見は、以下で紹介
◆ 「子ども保険」の性質を考える:子ども保険制度と保育無償化をめぐる議論(2)。
◆ 高齢者・自営業者・専業主婦も負担すべき子ども保険:子ども保険制度と保育無償化をめぐる議論(3)
ここで一旦終わりに、と思ったのですが、
2017/6/6付日経で、同一課題での2人の学者へのインタビューがありましたの
で、付け加えておきたいと思います。
大学教育についての意見も聞いているのですが、ここでは保育についての部分
のみ、抽出しました。
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「こども保険」構想 どう見る(3)
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5.教育無償化、専門家の考えは 奨学金の充実が必要:一橋大教授 小塩隆士氏
家庭環境の影響を受けやすい幼児期は、社会全体で等しく育てていくべきだ。
米国では幼児教育で子供の将来の学力レベルが決まるという研究もある。
『こども保険』は高齢者の負担が生じないため、世代間の不公平感が残る。
まずは現役並みの所得があるにもかかわらず、税優遇を受けている高齢者への
公的年金等控除を縮小して財源をつくるべき。
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高齢者も負担すべきは当然。
そこに求める財源として、子ども保険ではなく、所得税控除の見直しで、とい
うことになると、複数の源泉を持つことになり、煩わしくなる。
高齢者も子ども保険の保険料を負担する方式にするだけです。
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6.こども保険、財源に課題:明治大教授 田中秀明氏
Q1:子ども保険については?
教育・保育の重要性を提起したのは評価できる。
ただ高所得者ほど負担率が低くなる逆進性が強い保険料への依存が高まるのは
問題。
国民年金の保険料は原則、所得にかかわらず毎月1.6万円程度の定額で、年収が
300万円でも1億円でも同じ。
日本の格差や貧困率は経済協力開発機構(OECD)加盟国で、米国に次いで
高い。その原因の一つが保険制度だ。
Q2:格差の解消に幼児教育・保育の無償化は必要ではないか?
親の所得が低いために十分な教育を受けられず、いい仕事につけない『貧困の連鎖』
は深刻。塾通いできない子ども向けの補習や、母子家庭への支援拡充が必要だ。
一律にお金を配るのではなく支援が必要な世帯に優先的に配る必要がある。
財源は医療などの効率化で捻出すべき。
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国民年金の保険制度の方を改革すべきで、ロジックが反対です。
国民年金を企業等の厚生年金保険レベルに持っていく、というか、年金制度の
統一・統合を図るべきなのです。
老後の受給額を引き上げるためにも、です。
負担率の問題は、負担率を引き上げれば済むこと。
皆保険制度と言いながら、年金保険も医療保険も、それぞれ2種類の保険制度を
並立させ、保険料負担・納付に格差がある方式となっていること。
こちらが問題の源泉です。
田中氏もこの内容を読む限りでは、現金給付派。
現金給付では、格差問題は、親の意識の格差が行動に、つまり給付金の使途に
表れ、解消しない、というか、一層問題を深刻にするリスクがあるのです。
そして結局、別財源主義。
それが可能ならば、財政再建問題は、とっくに改善・解決されているはず。
(まあ政治の問題と言ってしまえば、そうなのですが・・・。)
こども保険、子どもの保育無償化については、学者諸氏の足並みも、実際のと
ころバラバラと言えるでしょうか。
世論をできるだけ一つにまとめる上でも、専門家グループの意見は、集約され
るのが望ましいのですが・・・。
再々々掲します。
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総合的国民皆保険制度の中に、新たに「子ども保険」制度を組み入れ、世代間の
受益格差の是正も実現する。
子どもが成人した後、現役世代として、年金保険や介護保険で高齢世代を支える
ロジックを考えるとき、高齢者も子ども時代を支える義務を担うべきでしょう。
子どもが持てなかった世帯の人々も、高齢になれば、その子ども世代が現役世代
になってからの保険料負担で恩恵を受けるのですから。
これに加えて・・・
◆4歳児・5歳児は義務保育・教育化、無償化し、全小学校に附属保育園を設置し、
全員通園。
3歳児・2歳児・1歳児が、現状の保育制度で対応。
0歳児においては、1歳になるまで、親に対して養育費・生活費として子ども保険
から、1年間養育年金を支給。
希望する親が、1年間乳児の養育に専念できるようにする。
早期に職場復帰や就労を望む世帯のためには、0歳児保育システムを再構築する。
是非ともお願いしたいです。